ケータイ小説を読む〜〜「恋空」と「クリアネス」
まず、私は、「恋空」(美嘉・スターツ出版)の最初の50Pくらいを読んだところで、「Love 涙色」を歌っていたころの松浦亜弥(あやや)を思いうかべた。ここには、将来の進路を決める勉学にではなく、異性との交遊を前面に押し出しているスタンスがある。松浦のCD「First Kiss」の中には、図書館に男の子目当てでいく女の子が描かれている。「絶対解ける問題X = ♡」という曲。はっきり言って私は、高校生がこのようにお互いに性的に触れ合うのは、どうかな、と思う。
私は、高校生時代には男女別学という方針の県の県立高校の卒業生だ。伝統的な見地からすると「高校時代に別学のほうが、のちのち男女の結合がより深くなる」とのことである。
「恋空」が描く世界は、松浦亜弥の音世界を出ていないというのが私の見解。なお、カレシが不治の病に冒され、ヒロインとの接触を避けるという設定は有り触れているね。少女マンガでは使わないくらい陳腐な設定。
一方の「クリアネス」(十和・スターツ出版)、これはより大人の世界を描いた作品であり、結構読み応えがあった。表題は「透明人間」という意味で、ヒロインの憧れの対象だったホストの男性が、「売春婦の息子として生まれ、自分の存在自体が受け入れられなくて」いる地点から、一緒に旅立つというお話で、ヒロインも大学生・売春婦だった。
さて、ここでケータイ小説について分析してみよう。
ケータイ小説は?会話体が多い ?センテンス(文)が短い
などと巷間言われるが、どうだろうか。
そこで、「恋空・下巻」「クリアネス」「しゃばけ:時代小説・畠中恵・新潮文庫」「おんみつ蜜姫:時代小説・米村圭吾・新潮社」の4つから、乱数的に任意の3桁以内のページを3つ選び、会話体の行数、一行以内に収まるセンテンスの数をとりあげる。(時代小説を取り上げるのは、通常私が小説を読まず、たまたま挿絵画家である柴田ゆうの担当したバツグンの挿絵付きの小説が手元にあったから。以下参照あれ。)
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070626 :柴田ゆう・絹の手触り
恋空 57P 1(会話体) 18(センテンス)
281P 8 17
61P 5 19
クリアネス 90P 5 17
61P 2 13
143P 13 18
しゃばけ 159P 12 6
281P 12 6
249P 11 9
おんみつ蜜姫 71P 7 8
103P 2 4
109P 4 7
ここで、両ケータイ小説は、横書き26行からなっていて、行を単位に考え、上のデータを割り算して、「会話体」「短いセンテンス」の2つの統計データを取る。なお、しゃばけは、縦書き16行であり、おんみつ蜜姫は縦書き21行とする。「おんみつ蜜姫」に顕著な、内心の考えをしめす括弧部分も「会話体」にふくめた。
まず「会話体の頻度」
「恋空」 0.18(平均) 0.11(標準偏差)
「クリアネス」0.26(平均)0.18(標準偏差)
「しゃばけ」0.73(平均)0.05(標準偏差)
「おんみつ蜜姫」0.29(平均)0.098(標準偏差)
意外にも、「ケータイ小説」は、会話体が少ない!!(平均値)比較的会話体の少なそうな「おんみつ蜜姫」より、わずかに少なく、その部分はモノローグなどになっているのだろうと思われる。なお、ケータイ小説における会話体の出現頻度のばらつきは、相当大きい。(標準偏差)これに比べると、「しゃばけ」は会話体が非常に多い。これは突出していると言ってよいだろう。
次に「センテンスの短さ」
「恋空」0.68(平均) 0.03(標準偏差)
「クリアネス」0.62(平均)0.14(標準偏差)
「しゃばけ」0.44(平均) 0.09(標準偏差)
「おんみつ蜜姫」0.30(平均)0.08(標準偏差)
この数字(平均値)が大きいほど短いセンテンスが多いことになる。
短いセンテンスは、旧来の小説よりも多いことがわかる。
(以上の統計データは百分率で示してもよい。)
今日のひと言:ケータイ小説というのは、イマドキの女子中高生が生み出したものといえるのだろうね。ただ私的に言えば、これらを読んで性的な興奮は得られなかったのが残念である。「恋空」の「みかんキャラメル」くらいかな、グッと来たのは。ちょっと、グッとね。また、登場人物の呼び名が2文字から5文字くらいのカタカナで表記されるのも面白い点だね。本人は漢字やひらがなであったりする。なお、現在の「ケータイ小説」とは規格は同じでも、意味するところが違うような作品も生まれる可能性もあるので、今後もチェックしておきたい。
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