親に舐められる教師

- 作者: 伊藤和夫
- 出版社/メーカー: 研究社出版
- 発売日: 1997/06
- メディア: 単行本
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身過ぎ世過ぎの理由から、これまで塾教師、家庭教師をいろいろやってきましたが、親の中には、トンデモな人が結構います。その例を挙げましょう。
中学3年生、男子(スポーツ部所属)の父親。本人は企業のライン要員で、実際子どもに教科を教える技は持っていませんでした。はじめて面接に行ったとき、各教科について、「国語はこのように教えろ、数学はこのように教えろ・・・」とのリクエストを受けました。私が「教える」ことのプロであることを、頭から無視した物言いでした。
普通、子どもの教育には母親が責任を持つものですが、この家庭はユニークで、父親が全権握っているようでした。ただ、困るのは、中学3年生の男子ともなればもともと反抗期であり、母親でさえ扱いが難しいのに、父親が強権的に勉強を強いれば、あまり勉強の効果が期待できないことは目に見えていました。それまでの私の経験では、スポーツ部に所属していた生徒が、夏休みの競技大会を終えると、頭を切り換えて受験勉強に身をいれることがほとんどだったのですが、彼の場合は、そうではありませんでした。宿題はやらない、1ヶ月前に教えたことをすっかり忘れる、という手に余る生徒でした。いろいろ試してみましたが、どうしても、心構えが出来ません。そこで1月半ほど教えたあと、両親に対し、「このままではどこの高校にも入れませんよ」と伝えました。そこで父親はすばやい行動をしました。家庭教師センターに連絡を入れ(このとき私はここから派遣されていました)「家庭教師の契約は打ち切る。競争心を燃え上がらせるために塾に行かせる」として、私との関係は終わりになりました・・・というのは正確ではなく「なにか今後の勉強のためになることを文書で差し出せ」と言ってきたのです。私は生徒の現状分析と今後の指針を書いて送り、それで関係が切れました。
それにしても、この父親、家庭教師、ひいては教師を舐めているとしか思えません。生徒の学力が伸びなかったのは、私が見るに「家庭の問題」が主な要因であり、家庭教師であろうとも、塾であろうとも、生徒の学力は伸びなかったのではないかと推量されます。恐らくは、生徒には私立高校の単願という選択枝しかなかったでしょう。
以上の例のように、学歴的にはどおってことのない(むしろ劣った)父親でさえ教師を舐めているわけですから、なまじ学歴のある親だった場合、教師を舐めてかかる例には枚挙にいとまがないように思います。でも、ちょっと待って欲しい・・・教師は「生徒を導くプロ」なのですよ。勉強することと、勉強を教えることは、まるで別個の営為なのです。その辺を誤解している親の、なんて多いことか。確かに、レベルの低い教師がいることは確かでしょう。でも、その教師と同質な教育を受けてきた親に、レベルが高い親ばかりではないことは、当然のことではないでしょうか。
今日のひと言:ごく最近、上に挙げた例よりもっと酷い親を知りましたが、諸般の事情でここで記述するのは控えます。ああ、ホントは書きたい。