虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

自転車で浄水する

iirei2006-12-03

  *自転車で浄水する
 災害時の水の確保は極めて大変です。そしてその時手にせざるを得ない汚れた水を飲むには浄水器が不可欠です。そんなわけで今回のブログは「浄水器」がテーマです。「危機管理」を標榜するこのブログでは本流のお話です。まずは、私が失敗した例を挙げます。
 **愚言社製浄水器性能チェック 情報書**
 川の水を飲めるようにする簡易浄水器を作成した。容器はキャンプなどで使用するハンディ・ジャグを使用。(直径20cm、材料充填高さ約20cm。)
 4層構造。最上の第1層:市販の石(4cm)
      第2層:市販の砂(11cm)
      第3層:砕いた竹炭(5cm)
      第4層:加熱して砕いた貝殻(1.5cm)
 以上の装備でCODMBAS大腸菌などの除去効率を調べる。あわせてPH緩衝能力とアルミ製のやかんでの煮沸によるAlイオン、Caイオンの変化を追う。ろ過速度は1時間につき300cc程度。
 採水は7月13日14時20分F地内N川、室内温度22度とする。

A1・・・・ N川原水
A2・・・・ 浄水器処理水
A3・・・・ A2を煮沸後湯冷ましして採水
B1・・・・ N川原水に酢を加えPHを4.5程度に調整
B2・・・・ B1の浄水器処理水
B3・・・・ B2を煮沸後湯冷ましして採水

     以上    2003.07.18
      愚言社(ぐげんしゃ)代表  森下礼
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以上は、数年前試作した簡易浄水器の情報です。とてもプリミティヴな構造のものです。以前のアニメ「サスケ」(忍者物:白土三平作)に出てきた浄水器のイメージが頭にあったのですが・・・1データあたり5000円の検査費で、15万円ほど掛けて某民間化学分析会社に分析をやってもらいました。その結果あまり浄水能力がなく、また浄水の過程で大腸菌が非常に多くなるという結果を得ました。「筒の形をしていて、排水口が底にある容器」(カラム)ではなく、レジャー用のハンディ・ジャグを使ったため、(これは排水口が容器の横にある)浄水が滞留して大腸菌が多くなったのだと思われます。N川とは、私の家の近くを流れている小河川です。このときのデータからは、煮沸さえして飲めば、まあ安心な水であることが解りました・・・浄水器は要らない、という結果です(トホホ・・・)なお、愚言社というのは、森下の個人出版社です。

ところで2005年の春ころ、NHKのニュースで、「自転車を使った浄水器」を報じていたのに釘付けになりました。ただ当時はググッても、ヒットせず、そのままにしていたのですが、最近改めて検索して見たらヒットしたので連絡を取って資料を取り寄せてみました。その会社は

日本ベーシック株式会社
  〒211−0005
川崎市中原区丸子町767 氏橋ビル2階
  TEL:044−738−2215
  FAX:044−738−2216
  Mail:nipponbasic@ceres.ocn.ne.jp
自転車を漕ぐ力をポンプにして、1時間で150人分の浄水が作れるそうです。(1分間で5リットル)使用しているフィルターは「中空糸膜(ちゅうくうしまく)」で、ストロー状の細い管が多数あり、その外部に超微細なミゾが多数ついていて、これを原水が通過する際に大腸菌などの細菌もトラップして浄化され、膜の中空部に浄水が行くのです。この装置には中空糸膜フィルターを装着したものも含めて、4つのフィルターが装着されています。この会社から送られてきたこの製品を取り上げたニュース番組(複数)をまとめたDVDでは、トマト・ジュースも透明な水に変えられていました。水質汚染が日常的な発展途上国が現在大きい市場のようですが、大地震などの災害時、日本でもかならず役にたつように思います。だって、そんな時には必ず電気はストップしますから。上水は来ないのです。こんな時こそ、人間の力をうまく運動とエネルギーに転換できる自転車の出番になるのです。具体的にはペダルを踏むことが揚水ポンプの駆動になるのです。ただ現在の価格は(自転車とコミで)塩素処理装置つきで75万円、塩素処理装置なしで65万円とかなり値がはりますが、普及すればもっと安くなるでしょうね。安全性は高いと思います。自転車は移動手段にももちろん使えますが、浄水するときは固定して使うようです。なお、1分間で5リットルという浄水量はかなり優秀で、人1人2.5リットルあれば1日の飲み水になりますので、1分で2人分の浄水を得られる勘定です。(日本ベーシック株式会社の計算では1人1日飲料用として2リットルとしているようです。)交代で24時間自転車をこぎ続ければ、約4000人分の浄水が、1台の自転車で作れる勘定になるわけです。こんな時(災害時、緊急時)、お風呂に入れるくらいの水が欲しいというのは贅沢ですよね。飲み水の確保が最優先課題です。なお、以上述べたシステムはCycloCleanと名づけられ、日本、アメリカ、中国、台湾の特許を取得しているそうです。(まあ、これほどのレベルの発明なら、当然国際特許になるでしょう。)なお、このシステムのイメージ画の掲載は、特許権者の許諾を受けています。


今日のひと言:自転車は人類が発明した乗りものの中で、もっともエネルギー効率がいい乗り物です。これを浄水に使うというアイディアには脱帽です。