犬夜叉・・・エンドレスなラセン階段
*犬夜叉・・・エンドレスなラセン階段
(4回に渡るマンガ特集。最終回。)
マンガシリーズ その4
高橋留美子の「犬夜叉」。週刊少年サンデーに連載が始まったのが20世紀の世紀末、コミックも46冊を数えるに至った。未だに連載中。登場人物も錯綜を極めるが、私なりに整理してみた。
そもそもこのお話は、戦国時代にタイムスリップした現代の女子中学生(かごめ)が、半妖の少年(犬夜叉)と出合い、宿敵(奈落・ならく:半妖)と、「四魂の玉・しこんのたま」を争奪しあう、という筋書である。キーとなるのは「四魂の玉」である。コミック第10巻で語られる話として、霊力の抜きん出でいた「みこ」・巫女(翠子・みどりこ)に横恋慕した男にあまたの妖怪が憑依し、翠子に戦いを挑む。実力の伯仲した両者は7日7晩この上なく激しく戦い、最期の力を振り絞った翠子が、2人の魂を混合(あるいは融合)させた「四魂の玉」を生み出し、両者力尽きる・・・という凄惨なエピソードが語られる。だから「四魂の玉」は、「象徴的な男女の営み」の結果生まれた子供ということも出来る。もっとも、愛の結晶というにはおどろおどろしすぎる。正と邪、両方の要素を併せ持ったアイテムである。
そして、エピソードは引き継がれる。「四魂の玉」を守る巫女・桔梗(ききょう)は、半妖の少年(犬夜叉)と恋仲になるが、鬼蜘蛛という盗賊に取りついた「奈落」の計略によって、仲を引き裂かれ、桔梗は死に、犬夜叉は桔梗に封印される。なお、鬼蜘蛛も、桔梗に横恋慕していた形跡があり、この点もそのまま引き継がれている。その時代に「かごめ」がタイムスリップしてくるのだ。そして「かごめ」は「桔梗」の生まれ変わりであることが解る・・・そして「四魂の玉」は砕け散り、かけらを求めて犬夜叉と奈落の果てしないパワーゲームが展開されるのである。実際、「犬夜叉」がここまでの長編になったのは、砕けた「四魂の玉」が演出するのか、犬夜叉と奈落が、同じスピードで進化するため、中々決着がつかない状況も一役買っている。(まあ、もう一つは、挿入される、本筋とは関係ないエピソードが多い、ということも挙げられる。高橋留美子はイマジネーションが豊富なのだろうが、それが災いして、引き締まった話にならないということもあると思う。)
「四魂の玉」が生まれたのは、正と邪の拮抗からであった。このアイテムが再び一つになり、そして消滅しない限り、戦いは永遠に続くのだろうな。エンドレスなラセン階段をイメージすればいいだろう。確かに上昇はしているのだろうが、上から見ると、一つの円上を回転しているだけに見えるのだ。翠子と男の戦いに決着をつけるのは至難の業だ。
誤解を恐れずに言えば、「かごめ」は、必ずしも必要のないキャラクターだと思う。あくまで「桔梗」のダミーである。また、「犬夜叉」自身も「桔梗」の代理人と見なすことができよう。ましてや、弥勒、珊瑚、鋼牙、殺生丸などのキャラクターは、お話を長引かせるために登場するのだ、とも思われる。なお、桔梗がある妖怪の妖術によって甦るというエピソードもある。「翠子」と「横恋慕した男」の戦いは、「桔梗」と「奈落」の戦いに置き換えられ、継続中である。
今日のひと言:高橋留美子については、デビュー作の「うる星やつら」の頃から注目していたが、設定のうまさでは抜群のものがある。ただ、その能力を使い「傑作」をうみだすには、イマジネーションの豊かさが邪魔しているように思えてならない。私が「犬夜叉」の作者だったら、コミック5巻分くらいに纏めるのだけどね。同じような欠点を持つのが、荒木飛呂彦だ。「ジョジョの奇妙な冒険」は、第3部くらいまでは傑作だったが、それ以後は設定のうまさにすがり付いてしまい、駄作になってしまったと思う。2巻で完結した「バオー来訪者」は、緊密なストーリー展開の傑作だったのに。
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