虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

セザンヌとキュービズム

「自然を円筒と球と円錐体によって処理しなければならない」というセザンヌの言葉は有名であるが,そのセザンヌを手がかりにそれまで互に別々に独自の方法で新しい造形をもとめていたピカソとブラックが出あうことによってキュービズムは急速に進展することになったからである。この年はサロン・ドートンヌでセザンヌの回顧展も開かれている。


 グレーズとメッツァンジェの共著の『キュービズムについて』(l912)が理論書として大きな影響を与えたが,この本では,キュービズムの絵画が非装飾的で自律的なものでなければならないこと,キュービズムでは形体はある理念の表明であることなどが主張された。ブラックやピカソと,それ以外の人びととの間には,それぞれかなりニュアンスの相違が見られるが,各自がそれぞれの方法で,伝統的な視覚から離反し,面の折りたたみ,積み重ね,量塊の多面的な分割などによって,造形的な新秩序をもとめた。

以上はhttp://www.cubism-asada.com/what_cubism_j.html
よりの引用です。



キュービズム震源地となったセザンヌは、どんな人だったのでしょうか。



セザンヌは、印象派ではありますが、そのままの情景を描いていたわけではありません。自然の中に幾何学を見つけ出し、それを表現しようと追求していた画家でした。特にセザンヌが得意とした絵画は静物画で、独特の手法を取り入れています。
長方形の筆づかい
セザンヌの絵画の特徴に筆づかいがあります。色を塗っている部分を良く見ると、ひとつひとつの筆づかいが長方形に近い形で塗られています。その長方形を並べて建物や木が構成されています。この手法は年代がすすむと正方形に近くなっていきます。このように長方形に描くことで、絵画に統一感を出しています。
幾何学的な構成
自然の中に幾何学的配置を見つけ出そうとしたセザンヌの手法は、描かれているものの配置はかなり計算されています。セザンヌが「近代絵画の父」と呼ばれている理由の一つがこの構成方法なのです。描かれているものの配置は、パッと見ただけではわかりにくいのですが、まる、三角、円すい、円柱になるように丁寧に配置されているのです。
この幾何学的構成は、20世紀になりピカソにも強く影響を与えたのです。

この記述はhttp://www.korega-art.com/cezanne/
より。


 セザンヌ本人は、人付き合いが苦手で、交友関係も狭いものでしたが、「自然物」を「円柱、球、円錐などに置きかえる」視線を持っていて、この視点がキュービズムを立ち上げたピカソ、ブラックに引き継がれていったのです。画家冥利に尽きますね。ただし、ピカソについては、キュービズムも含め、色々な画風を試みていますが、私には、「美しい」と思える絵はないのです。ただ、あるブロガーいわく、「不安にさせる」「なにかある」と感じさせる巨大なエネルギーをピカソの絵は持っているので、それなりにピカソの芸術を評価する、とのことです。なるほどな、と思いました。

http://satomi-noanoa.blog.so-net.ne.jp/2009-02-03#comments
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 今日のひと言:試しに、私も絵を描いてみました。「体の各部を円柱、球、円錐」に置き換える視点で、「男女の肉体」を描いてみたのです。出来具合はいかがでしょうか。全体的に女性の方が複雑な造形になっていますね。男性の場合、理想的には「逆三角形ないし逆円錐台」の体躯を持つのが望ましいですが、昨今の男性の体型は「直方体」になり、全体的に直線的なボディーです。一方女性は、体の線が曲線的で、特に乳房が半球、お尻が球状になっています。上半身は三角形ないし円錐台ですね。

 なお、梶井基次郎は、一時ペンネームを「瀬山極:セザンヌ」としていたと言います。
美的感覚の鋭い彼に、セザンヌの絵は響くものがあったのでしょう。


↓その絵。


 参考過去ログ:土建屋的発想の問題点〜〜桑の木の保存
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20090215

過去ログで芸術について触れたもの一覧
宗達の犬:http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070912
菱田春草の猫:http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080325
ミュシャのゾディアック:http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080710
俵屋宗達の視線: http://d.hatena.ne.jp/iirei/20090210
カミーユ・クローデルhttp://d.hatena.ne.jp/iirei/20090406
パウル・クレーhttp://d.hatena.ne.jp/iirei/20090426


セザンヌ物語―吉田秀和コレクション (ちくま文庫)

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