虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

私と「ビハインド・ザ・マスク」

iirei2006-07-23

    *私と「Behind The Mask:ビハンド・ザ・マスク」 (散文詩
      CDジャケット「ソリッド・ステイト・サバイバー」(アルファレコード)
(ちょっと色あせ) →
 私はマンガクラブに所属していた。東京大学理科一類の学生だった私は、しかし文学部に転科して、フランス文学を専攻しようと考えていた。
 ある時、学生会館(各サークルの部室のある建物)を出てきた私は、恐らく東大の学生サークルであろうある劇団が、ある音楽をBGMにしてコマーシャルしている場面に遭遇した。なんとも軽妙で心をくすぐる音――妙に心に残った。
 その後イエローマジックオーケストラYMO)というバンドがあるのを知り、学生生協のレコード売り場でアルバム「ソリッド・ステイト・サバイバー:Solid State Survivor」を手にしたとき、「あの曲は必ず入っている。」と確信していた。果たしてその曲はB面の一曲目であり「Behind The Mask」(ビハインド・ザ・マスク:仮面の下には)であると知れた。メンバーは細野晴臣高橋幸宏坂本龍一の3人だった。
 それから私はマンガクラブに加えて某劇団にも所属し、表現手段としてマンガと演劇を手にしたうえでフランス文学科に行こうと思っていた。当時初恋の相手がマンガクラブにおり、私の将来は順風満帆のように思われた。
 だが私は思うところがあり、劇団、マンガクラブ、フランス文学科、そして彼女を全て捨てた。「このままでは何者にもなれない!!」という焦燥感からだ。この決断をしたBGMとして、「Behind The Mask」が間違いなく流れていた。底流のように、しっかりと。私は工学部都市工学科・衛生工学(現・環境科学コース)に進んだのだ。80年代初めのことだ。音が私の進路決定に影響を与えたのだった!!
 この選択で良かったのか、と大いに悩んだ。学生対象のカウンセリングも受けたほどだ。でも今では現実に密着した工学部という選択をして正しかったと思っている。現実を介さぬ字面だけの学問に何の意味があろうか、と逆に思ってしまう。
 「Behind The Mask」は、今でも私のBGMだ。



今日のひと言:「Behind The Mask」とは、「全てを知り、白けてしまったあとの灰色の」
       曲。数学的には「ゼロ」を表す。一種の悟りを歌った曲でもある。