虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

タトゥー(Tattoo)とは何か?:それは「美しい」か?(随想録―60)

タトゥー(Tattoo)とは何か?:それは「美しい」か?(随想録―60)



私は、大学でマンガクラブにいたことがあり、4編のマンガを描いたが、処女作は「キャンバス:Cand-vas」と言い、刺青(入れ墨:Tattoo)を主題にした作品だった。(以後、刺青、入れ墨、Tattooは、Tと略記する。)なにごとにも天才性を発揮した「布袋和尚:七福神の一人」は、ただ一つ、自分が太っていることに、大きな劣等感を持っていた。それを解消するべく、彼はその便々たる腹をキャンバスにして、「桜吹雪」のTを彫ったのだ。さて、どうなるか・・・と言ったマンガだったが、おおむねクラブ員に好評だった。


(この作品は、他の3作品とは違い、現在手許にない。練習用のマンガを掲載する部誌は保存されないので。3作品は学園祭に合わせて発行する、保存用の部誌に掲載された。)




それはさておき、普通Tは、顔や腕に、その人が「罪人」であることを、満天下に明らかにするために彫られるものだった。中国なら、黥布(げいふ)という将軍が有名だったし、日本でも、八丈島あたりに島流しにされた者たちが、腕に彫られていたわけだ。(「黥」という言葉自体、Tを意味する。黥布というのは、つまり本名ではない。)


さて、タンブラーを9か月続けていて、記憶に残ったことの一つに、白人女性には、Tをしている者が非常に多いということがある。青のみの地味なもの、極彩色の派手なもの、いろいろだが、とにかく目に付く。(男性の場合は、もっと多いかも知れない。ボクシングの選手なら、過半数がTをしているように思う。)


例えば、恋人への変わらぬ愛の証として、「純子命」「達夫命」とか、相手の名前を彫ることはありそうだ。でも、白人女性の場合は事情が異なるようだ。ただ単に、「化粧」「魅力のグレードアップのためにTをしているように思えてならない。一回Tを彫りこむと、それは一生消えない。(消そうとすると、彫ったとき以上の手間と忍耐が必要になる。)たった一つの意匠(デザイン)を見せ続けることになるわけで、それに一生付き合うのは、苦痛になるのではあるまいか。一時期の「決意」で、残りの全人生を振り回されるとすれば、私ならごめんだ。(私のマンガ作品にも、どんでん返しを用意していた。)私は、決してTを美しいと思わない。


PS.その後、アマゾンでTについて調べてみたら、シールを張り付けるとか、付けても1週間で消えるという商品が主流で、「痛い思いをせずに」、「気軽に」Tを楽しむ、という乗りであるらしいね。白人女性たち。決してアホではないね。そこへ行くと、男性のボクサーたちは、マジで汚いTを彫りこんでいるように思える。我が道を行ってくれ。

 (2022.12.31)






今日の7句


百日紅さるすべり
見事な紅葉
サプライズ



 (2022.11.04)



コケシたち
道に並ぶや
無縁仏



コケシは、東北地方で、飢饉の際、家族の人数を減らすために子供を殺した、という痛々しい風習があり、その子供を供養するために作ったのがコケシ(子消し)であると言われます。

 (2022.11.05)



流木の
作る造形
比類なし



 (2022.11.05)



珍しや
橋に吊るさる
葛の葉や



 (2022.11.06)




(以下、「日本の家」3句)

「家は、性能」
100年前の
スローガン



むかし、フランスの建築家:ル・コルビジュエは「家は住むための機械である」と言いましたが、ほとんどその発想のままですね。

 (2022.11.05)



段差あり
バリアフリー
考慮せず



この家の施主は、若い男女でしょうから、先のことは考えていないようです。

 (2022.11.06)



玄関か
じつは縁側
半端なり



玄関は北にあり、この段は、単にひなたぼっこをするためのパーツでしょうね。

 (2022.11.06)