虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

陶芸と紙漉き(かみすき):ここまで違う両技術~親子の喩え

陶芸と紙漉き(かみすき):ここまで違う両技術~親子の喩え


@以下は、私が2004年に、某さんに書いた手紙のうち、「紙漉き」に関連した部分を抜き出したものです。@


 さて、前回メールで触れた本題、「紙漉き」と「陶芸」の比較論に入りたいと思います。私がはじめてプロの紙漉き屋さん(埼玉県小川町の田中昭作氏)を訪れた時、たまたまそれまで伸ばしていたヒゲを剃って行きました。何となく剃りたくなったからです。私を一目見た田中氏いわく、「紙漉きには、ヒゲを伸ばした奴はいないな。」その後、何人かの紙漉き屋さんと会いましたが、確かにヒゲを伸ばした人はいませんでした。(もっとも、のちに、和紙に関する季刊誌『季刊・和紙』(わがみ堂・現在は休刊中)で、徳島県に、ヒゲを伸ばした紙漉き屋さんがいるのを知りましたが。)そのような例外は確かにいますが、「紙漉き屋さんには、ヒゲを伸ばしたひとはほとんどいない」とは言えると思います。


一方、「陶芸家」といえば、逆に「ヒゲ面」を思い浮かべることが多くないですか?また、私が吉祥寺にあった近鉄百貨店の「全国和紙展」を見に行って(ここで名人:丹下哲夫さんの存在を知ったのですが)某哲学者のお宅に帰りがけに寄った時、彼は「僕なら紙漉きより陶芸をやるな。自分の
中にあるドロドロしたものを表現したいから。」と言っていました。


以上の2つのエピソードから言えること――「陶芸」は、自己表現のメディアであり、「紙漉き」は、自己表現はせず、逆に自己表現の場を提供するメディアである、ということです。「ヒゲを伸ばす」という行為は、男性の自己表現のひとつです。でも、その種の自己表現は、往々にして他者を不愉快にします。それをも辞さずヒゲ面で通す「我」の強さが、ある意味「陶芸家」の存在理由かも知れません。また、「何ごとか心の中にあるものを具体化する」営為であるとも言えると思います。


そこへ行くと、「紙」というのは、それ自体完成品ではなく、誰かが文字を書いたり絵を描いたりしてはじめて完成するものです。だから、「紙」が自己主張をやりすぎると、それは表現の場を提供するメディアとはなり得ません。そのような経緯もあり、「紙漉き屋」さんの外見自体が自己主張をしないのかも知れません。



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スカーレット(NHK出版)


もう少し、表現を変えてみます。誤解を怖れずに言うと、「陶芸」は「子供のやる技術」、「紙漉き」は「親のやる技術」だと思います。この場合、「子供」「親」という表現は特に悪意とか含めておらず、人間の役割そのまま使っています。「自分の中にあるものを思いっきり表現したい――子供」、「子供の自己表現を見守る、その場所を提供する――親」と言った相違です。このような観点からR女史の仕事を見ると、彼女の仕事はより「陶芸」に近いように思います。


もっとも、「自己表現しない紙」とは言いましたが、そんな紙であってもしっかり自己表現しているのが解ります。「紙漉き屋」さんごとに、紙は表情が違います。ある紙は繊細、ある紙は豪放、あるいは粗野というように。


私は、変な感性があって、私がなにか文章を書いたり、絵を描いたりする前の「白紙」の方が、なにか書いたり描いたりした後より、価値が高いのではないか、と往々にして思うのです。メディアとしての紙そのものの方が私の自己表現より価値が高いのではないか、と思ってしまうのです。これは私の成長過程において、両親(特に母親)から疎まれていたことがあり、自己卑下する感性なのかも知れませんが、「表現の場」としての紙に対する畏敬の念だ、と言えるかも知れません。



今日のひと言:「紙漉き」と「陶芸」、とくに陶芸については、今回のブログ以外にも、問題点を取り上げて論評しています。(今回とは違い、ちょっと辛口です。)


iirei.hatenablog.com

 :陶芸なんて碌なものではない!:その根拠を示そう。


追記:2019年秋~2020年春にかけて、NHK朝ドラで放映されていた「スカーレット」、女性陶芸家のお話でしたが、私はこの番組を見ていて、「陶芸は、なんと土と木、火を無駄遣いするのか」、と感嘆しながら思いました。中国文明は、そのような営為のため、国土の砂漠化を招いたわけですね。




ミズハノメが村人に紙漉を教える

ミズハノメが村人に紙漉を教える

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今日の一品


@大豆モヤシの炒めもの


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弟作。大豆モヤシは、ほかのモヤシと違い、大豆の栄養分を有効にするため、あらかじめ茹でなければなりません。5、6分は茹でます。(ゆで汁も美味しいスープになります)それをコチュジャン、ハム、塩、卵、胡椒で炒めました。

 (2020.08.21)



ミョウガの天ぷら


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多めのミョウガを食べるのに最適な天ぷら。いつもどおり、少な目の油で素揚げ。塩を振って完成。乙なものです。

 (2020.08.22)



@豚バラ肉塩焼きヒソップ風味


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これまで、ヒソップというハーブは、もっぱらティーにしていましたが、今回は香辛料として使ってみました。ヒソップは硬質なのに甘さも感じるという風味でした。

 (2020.08.24)


iirei.hatenablog.com



@シイタケ・ステーキ


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大ぶりのシイタケ4個をバターで炒め、醤油・胡椒して供しました。焼く途中で水を足し、フタして蒸らしながら、焼く時間を短縮しました。

 (2020.08.25)







今日の二句


正面に
ロズマリ並ぶ
家なるや


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ローズマリーのこと。

 (2020.08.24)



水の声
吾を慰む
仲間なり


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 (2020.08.26)




バンクシー小劇場


風葬


ネズミの子
死して集まる
小アリたち


鳥葬なりと
言うも可なるか


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 (2020.08.27)