虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

自画像は自己愛(ナルシシズム)の産物か?:私の場合。

自画像は自己愛(ナルシシズム)の産物か?:私の場合。



表題の疑問、確かにそうかも知れません。一般的に人は画家ではないために、その自己愛の表現として画家に肖像画を依頼するのではないでしょうか。


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私の自画像1


ここに、画家が自画像を描く場合、必須なのが「鏡:mirror」です。必ずこの道具を使って、絵を描きますね。(追憶上の自分を辿り、外部に関係なく描く場合は別ですが)ところで鏡を持つ象徴的な存在は女性(♀)です。この♀という記号は、「鏡を持つ者」という意味で、そのことから言えるのは、画家は自画像を描く間は、女性化(♀化)するのだと思うのです。


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私の自画像2


鏡を持つ存在についての記述、それは神話の世界でも存在して、私がすぐ思いだせるのはギリシャ神話で、「自分しか愛せなかった」ナルキッソスが、水面に映った自分の姿に「恋をして」、フリーズしてしまい、神に他の者たちの求愛を無視した罰として、水仙(すいせん)の姿に変えられて、いつも水面の自分の影を見つめることになったのですね。また「自己愛」=「ナルシシズム」という言葉もこの青年から採られているのです。


さて、私の場合、やはりナルシスティックな自画像を数枚描いています。高校時代の美術の時間、油絵での最初の作品が自画像でした。クラスメートには「まあ、森下はなんともナルシスティックな絵を描いているなあ」、と揶揄されました。


もう一枚は大学時代初期に描いた「自画像」です。これはクレヨン画でした。なんども色を塗り重ねられる点、油絵と似ているのがクレヨン画ですね。この絵の出来は、高校時代の作品より、ズッと、真に迫った出来で、私は気に入っていました。


でも、私に「自己愛」を卒業する時期がやってきて、この種の絵は大部分破棄してしまい、ついでにそういった傾向のない作品までそうしてしまったのは若気の至りです。もっとも、作品を破棄した有名画家も案外多いように思います。


そういった人たちにとっての絵画はたとえその絵画が自画像でなくても、自画像に準じる意味内容が込められているように思います。自分の人格を投影した絵画・・・自分の否定「自己否定」の対象となってしまったわけです。これは後世の鑑賞者にはもったいない話ですが、画家本人がそうしたかったのなら、まあ、仕方のないことでしょう。


「私の自画像1」は1983年に描いた作品で、ナルシシズムの要素の乏しい絵です。3、4分で描きあげました。「私の自画像2」は、1978年、鏡という道具を前面に出して描いたもので、鏡像というのか、光の反射というものを意識した作品です。どっちらも捨てずに残っていました。例のクレヨン画ほどは私本人が嫌ってはいなかったということですね。



今日のひと言:坂本龍一さんには“self-portrait”(自画像)という傑作があり、よく聴いたものですが、この曲について彼を直接知っている方と話をしていて、私が「このことば、auto-portraitの誤りなのではないか」、と話したところ、その人は「坂本くんは、ボブ・ディランに義理を立てて題名をつけたのではないかな」と語っていました。(ディランにもそんな題名の曲がある、ということですかね。)もっとも、というか、ありうるというか、坂本さんのアルバムに“beauty”という題名のこれぞ坂本さんのナルシシズムの表出、というのがありました。私は手に取りませんでしたが。


https://youtu.be/xxL0F5xyx9M

   : self-portrait (ユーチューブ)


参考過去ログ

iirei.hatenablog.com



自画像の美術史

自画像の美術史

  • メディア: 単行本




今日の一品


メカブのバジル酢・醤油和え



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メカブは、ワカメの根っ子の部分。黒っぽいですが、熱湯をくぐらせると、綺麗な翡翠色になります。これを、バジルを漬けて作った酢と、醤油、刻みネギで和えます。和えたあとは、色は褪せます。三陸の名産です。原発事故以降、買っていませんでしたが、たまには・・・ということで購入しました。

 (2020.03.01)



@茹でキクイモ


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弟作。スライスしたキクイモを茹で、マヨネーズと辛子のディップで食べます。

 (2020.03.02)



@自家製白菜漬け


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この冬、何回か白菜の漬物を作っていますが、今回がベスト。葉の切り方と塩の振り方が上手になったのです。葉1枚を、まず縦に2分割し、横に4分割。白く厚い根本の部分に塩を振り、その上に薄い葉を敷き詰め、塩は振らない・・・これを4、5回繰り返し、少々前回できたつけ汁を入れます。唐辛子は適宜葉の間に挟みます。漬けこんで10日くらいで食卓に。今回の食材の白菜は、丸ごと一個で50円(無人販売所)、塩も安いものですから、この一品は原価10円以下でしょう。同時期、地元のスーパーでは4分の1カットの白菜を350円で売っていました。一個で1400円!・・・高いですね。

 (2020.03.05)





今日の四句


空気澄み
くっきり立つや
赤城山


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前日の雨後の朝。

 (2020.03.03)



毒草の
庭に生えたり
今年また


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一昨年、絶滅しそうだったトウダイグサを庭に植えたのです。種が飛び散り、2年連続で発芽したわけです。

 (2020.03.03)



雨の前
里山ばかり
見えにけり


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 (2020.03.04)



薹立ち(とうだち)す
河原のカキナ
命もなく


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誰かに命じられることなく、一斉に薹立ちするのです。

 (2020.03.06)