虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト:色々な事物を取り上げます。

『詩への架橋』:詩の鑑賞者としての大岡信〜『折々のうた』の原点

大学に入学し、理科一辺倒だった私、その理科系に失望し、代わりになるものを模索していた際、他大学に文科系の友人が出来て、文学青年だった彼に推奨されたのが、『詩への架橋』(大岡信岩波新書)でした。この本は、編者の大岡信(おおおか・まこと:1931−2017)さんが、古今東西の詩を選りすぐり、読者に呈示する入門書で、読み応えがあります。なかでも、彼に直接推薦されたのが次のリルケの詩:「静かな友よ」でした。


静かな友よ  片山敏彦訳


数々の遥かさに生きている静かな友よ、感じたまえ
君の呼吸が さらに拡がりを増しているのを。
真暗な鐘楼の中全体に
音となって轟きたまえ。君を食いほろぼすものが


一つの力となるのだ――糧である君の上方で。
出で入りたまえ、転身の道程を。
君のもっともつらい経験も 何ほどのことぞ?
飲むことが君に苦いなら 葡萄酒に化したまえ。


この夜 君のあらゆる官能の十字路で
みなぎり溢れる不思議な力を
化したまえ―それらの官能の稀有な出合いの意と化したまえ。


そして君が現世のものに忘却されたら
静かな大地に言いたまえ――「僕はほとばしる」と。
急流に向かって言いたまえ――「僕は在る」と。


 (オルフォイスへのソネットより)

132P−133P


素晴らしく首尾の整った、上質のワインのような詩です。形式は4・4・3・3の14行詩=ソネットです。とくに最後の連が泣かせます。大地はじっと存在するもの、急流はほとばしるもの・・・言葉を投げかける対象が入れ違っているようですが、詩の上ではこの言い換えが独特な効果を生むようです。この詩の完成度の高さは、間違えなく私を詩の世界に誘ってくれたのです。


この入門書において、大岡さんは、とくにフランス詩を多く紹介しています。ドイツ語圏ではリルケは入りますが、ゲーテ、ハイネと言った大物は紹介されていません。英語圏ではシェイクスピア(この劇作家はソネットの名手でもありました)くらいで、ブレイクキーツは黙殺、ロシア語圏ではたぶん皆無だったような・・・ちなみに日本語圏では当然のように多くの詩人、歌人たちが取り上げられています。なかでも中原中也の扱いは大きいです。中原は、フランスのランボーに大きく影響を受け、「日本のランボーたらん」という意識が感じられます。そしてフランス語を学び、ランボー詩を訳しています。


そんなわけで、中原中也の詩の断章を一つ。


羊の歌 安原喜弘に
(1)祈り
 死の時には私が仰向かんことを!
 この小さな顎が、小さい上にも小さくならんことを!
 それよ、私は私が感じ得なかったことのために、
 罰されて、死は来るものと思うゆえ。
 ああ、その時私の仰向かんことを!
 せめてその時、私も、すべてを感ずる者であらんことを!

99P−100P


痛々しいほどの「自己鍛錬」です。鈍感な者にはそれに相応しい死が待っている・・・でも、死の間際こそ、自分が森羅万象に敏感であることをこいねがう絶唱です。私もこの詩には大きく影響を受け、大学でマンガクラブにいた際、この詩をBGMにしたようなマンガ作品を描きました。



今日のひと言:大岡信さん、この本にも「恥ずかしながらも」と自作の詩を何篇か挙げておられますが、どうも詩としては習作というイメージが強く感じられ、さほどの詩とは思えませんでした。詩人と言うより詩の鑑賞者&解説者と言うのが妥当な評価かと思います。だからこそ、朝日新聞での30年近くの長期連載『折々のうた』の選者を見事に務めあげられたのでしょう。



折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)

ルナアル詞華集

ルナアル詞華集




今日の一品


バイアムエゴマよごし



バイアムジャワホウレンソウとも別名のある栄養野菜。庭から摘んできて、湯がき、15分ほど水に晒し(シュウ酸除去のため)、すりエゴマ、醤油と和えました。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20160612#1465701611

 :私がこれまで作った、変わった野菜:イロイロあるぞ。

 (2018.07.28)



@明太子のマヨネーズ和え



久しぶりに買ってきた辛子明太子をマヨネーズで和えました。ちょっと味がくすむか。

 (2018.07.31)



@キャベツと高野豆腐のケチャップ煮



食材としての在庫がキャベツだけで、急ごしらえで作った料理。切ったキャベツを塩ひとつまみ、ローレル1枚、水から煮て、ケチャップ、塩麹を適量加え、最後に戻して水を切った高野豆腐を投入。・・・20分くらいの調理時間。肝腎のお味は、満足できるものでした。

 (2018.08.01)



@チンジャオ・ラム



弟作。ピーマンの細切りと、薄切りラム肉をショウガ、醤油、本だし、七味唐辛子で炒めました。

 (2018.08.02)






今日の詩


@蒲(がま、かば)の穂


昨年まで太田市
親水公園(八瀬川公園)の
3つある池の一つに
生えていたのは蓮の花。
(2つは睡蓮が変わらず。)


今日見ると水が干上がり
蒲の園となっている。
これは何故だろう?
人為?自然の計らい?
・・・解らない。


もはや口に入らぬウナギたちの
思い出にさせるため?
ウナギの蒲焼きとは
仕上がりが蒲のように
見えるのでその名がついたのだ。



 (2018.08.01)




今日の一句


恐ろしき
生命力や
ヤブガラシ




今日は庭のツル草を駆除しました。ツルドクダミスイカズラヘクソカズラヤブガラシ。これらが絡み合って日を遮り、木を枯らすのです。特にヤブガラシが対象。これはブドウ科の植物なるも、1本1本が強く、種も大変多くまき散らします。私はこの植物が食用になるので庭に導入したのですが、駆除しか出来ません。対植物、私の最大のミステイクでした。ヤブガラシ、またの名をビンボウカズラ。画像は拙著『野草を食べる・滋味(JIMI)!!』より。
 
 (2018.08.02)