虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

アンパンマン=キリスト:漫画として観る『幸せになれる宗教画』


この場違いっぽいセンテンス(等式)は、決してたわごとではありません。「最後の晩餐」の際、イエス・キリストが「このパンは私の肉、このワインは私の血」、と言いましたが、彼は自分の身体を食物であるとし、彼の血肉を頂く食事を通して弟子たちを導こうとしていたのです。一方「アンパンマン」における重要な設定として、アンパンマンが人を救おうとした場合、顔面のアンパンをちぎってその人に食べさせるのです。これは、人を救うには、救助者本人もその身を切るような覚悟が必要なのだ、という論調の文章を読んだことがあります。


『幸せになれる宗教画』(関谷義樹:講談社:2013.1.24初版)は、しょっぱなからこのイエス・キリストアンパンマンの類似性を挙げています。私の場合、アンパンマンの深層のお話は既知でしたが、両者の関連性・類似性をはっきり認めた記述を読んだのは、この『幸せになれる宗教画』が初めてです。作者の関谷さんは、上智大学神学科を卒業し、カトリックサレジオ修道院司祭をなさっています。1969年生まれとありますから、現在49歳、マンガ世代だと思われます。


最後の晩餐 (wiki)


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その事実は、この本の特徴である、名画にためらわずマンガの「吹き出し」を貼り付けることに如実に現れます。それはレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」も、ミケランジェロの「ピエタ:彫刻」でも、同じスタンスです。「敬虔」な、それは得てして「頭の固い」人たちからは「不謹慎」「汚らわしい」との評価を受ける危険性がありますが、筆者(私)は大学時代マンガクラブに所属していたことがあり、そのような立場の筆者から見れば、関谷さんのスタンスは了解できます。若い人が「高尚な」絵画を避けるくらいなら、マンガという敷居の低いメディアを使うのも考え方です。


ピエタ」という、十字架刑を喰らい、苦しんで死んだイエス・キリストのなきがらをしっかり受け止めて胸に抱く聖母マリアの彫刻ですが、この作品はダヴィデ像と並んでミケランジェロの代表作とされているものです。極めて劇的な場面ですが、こんな吹き出しがついています。(95P)


マリア:なぜ、なぜ、私の子が、なぜ、なぜ、なぜ・・・・

エス:人間のためだよ、お母さん


この吹き出しで、わが子を失ったマリアは、その理不尽なわが子への仕打ちを激しく憎み、途方にくれますが、イエスの「この世に生まれたわけ」を理解し、正しくこの世の中で生きていようと誓うのです。


やがてマリアは気付きます。この世の苦しみはすべて意味がある。どんなに不条理なことがあったとしても、そこにはきっと神からのメッセージがあるのだと。


そしてマリアは悲劇を受け入れる。ミケランジェロがつくったマリアは、号泣していません。静かに運命を受け入れている顔をしている。けっして絶望なんかしていない。

98P

ピエタ (wiki)



・・・とまあ、この文章によってちゃんとした解説を関谷さんはしていますから、マンガ的であっても、軽い本ではないようです。



今日のひと言:釈迦の死の場合も、なにやらイエス・キリストと似た話があります。釈迦が入滅した際、(悟りのレベルで)下位の弟子達は号泣しますが、上位の弟子達は無言だったというのですね。これも、世の真理を希求する割合が多い人ほど運命を静観できるという寓話なのでしょう。



幸せになれる宗教画

幸せになれる宗教画

バッハ:マタイ受難曲 BWV244

バッハ:マタイ受難曲 BWV244

アンパンマン 天才脳つみかさねカップ

アンパンマン 天才脳つみかさねカップ



今日の一品


@ブリの味噌・すりエゴマ焼き



弟作。ブリをマンゴーを食べる時のように、皮を残して賽の目に切り、味噌・すりエゴマを塗り付けてレンジでチン。

 (2018.07.07)



ハナマメの煮豆



たまに作る料理。一昼夜水に漬けて吸水させ、砂糖少々、塩1にぎりを加え、圧力鍋で8分。甘味は抑えます。容器に入れてからシナモンを2振り。ハナマメ(花豆)はたぶん日本で最も粒の大きなインゲンマメ

 (2018.07.07)



@シラス干しの大根和え



小魚を湯通しして乾燥させたシラス。大根おろしで和えるのは定番ですが、小魚の優秀なタンパク質を摂れ、またご飯とたべると、おろしの持つ消化酵素でデンプンの吸収も良くなる、抜群の料理。

 (2018.07.09)



@モロヘイヤのお浸し



弟作。私が作るときには茎を除いていましたが、今回はそれも入れて、美味しく出来あがりました。いわゆる「一物全体食」です。

 (2018.07.09)



深川めし深川丼



弟作。剥き身のアサリを昆布だしと加熱し、ネギ、ショウガを加え、最後に醤油を加えて少々煮、火から降ろしました。美味しい。



深川めし(ふかがわめし)、深川丼(ふかがわどん)は、アサリ、ハマグリ、アオヤギなどの貝類とネギなどの野菜などを煮込んだ汁物を米飯に掛けたものや、炊き込んだもの。アサリ飯と呼ぶこともある。


貝の産地ではポピュラーな調理法だが、東京の深川が代表格であるため、このように呼ばれている。2000年前後から増え始めた深川めし屋の多くは炊き込みタイプである。

(wiki )

 (2018.07.10)






今日の詩(2編)


@みずうみ


サトイモの畝(うね)を
切り立った山脈だとすれば
サトイモはその頂上に立つ
だがサトイモは水分を求める。


だから頂上の一部を陥没させ
火山湖(みずうみ)を作る――
これでサトイモは安らかに
秋を迎えることが出来る。



(これは良いアイディアかも。)

 (2018.07.07)





@空き缶(水理学


用水路べりを歩いていると
だれかの飲んだ空き缶が落ちた。


さて、この缶、どんな末路を辿るかと
追跡してみた。


二転、三転缶は流れに翻弄され
時に水流が閉じて


滝壺のように物が
トラップされることもある。


最後に用水の取り込み口に吸い込まれ
動かなくなった。


これは取り出す人が来るまで
このままだろうね。



 (2018.07.08)





今日の二句


スパニエル
囲んで園児
はしゃぎけり


コッカー・スパニエルというイヌのこと。散歩中。

 (2018.07.08)




さるすべり
驚愕桃の
兆発や



この時期、さるすべり百日紅)のショッキング・ピンクの花が咲きます。このローマ字に漢字を割り振ってみました。

 (2018.07.11)