虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「Do Nothing」(都市工学用語)は文明批判の証し

原発、ダムなど、国家的な建設プロジェクトを実施する場合、「環境アセスメント」などを行うのが普通ですが、これまでその国家的プロジェクトを「所与」の物とすることで、開発者の側から、見直しをすることはほとんどありませんでした。当該地域の住民の意見はほとんど聞かずに推し進められてきたわけです。


ところで、私が学んだ都市工学科、とくに計画コースの用語に「Do Nothing:ドゥーナッシング」というのがあります。これは、都市計画上、いろいろなプランを俎上に載せ、検討することを目的としますが、その中で「何もしない」というプランも検討します。これがDo Nothingの意味内容です。漢字に直せば「無為:むい」ということになるでしょうか。


さて、私の場合、授業でこのDo Nothingという言葉を聞いたとき、これから開発をしようとする者が「何もしない」という選択をするはずはなく、「詰まらぬ概念だな」と思ったものです。でも、Do Nothingの本当の意味を、森村道美助教授(当時)に教えて頂き、大変な感銘を受けました。一種の「悟り」です。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20051223 (都市工学の核心)


にそのときの記憶を書き留めています。


さて、Do Nothingという言葉は、漢字に直すと「無為」であると、上に書きましたが、この言葉からすぐに連想されるのは、「老子の無為」です。老子はもちろん古代中国の文明批判論者ですが、その彼の言とDo Nothingは類似性があると思います。


何か文明上の大きな施設を作るとき、作る側は、「この施設は、国、国民に(あるいは一部の国民に)大変有益だ」と考えてやらなければ出来ない営為を行うことになるのですね。でも、その意識は、自分の属する集団の「狭い」了見で行っているかも知れません。開発を前提に作られたプランは、それがどのプランであれ、多かれ少なかれ問題を惹起します。


一方、Do Nothingという視点でこれら開発計画を見直すと、「巨視的にはこの開発はしないほうが善い」、という結論が導けることもあると思います。Do Nothing、あるいは無為という視点は、文明批判をも考え合わせている点が重要だと思います。現実に、日本で行なわれたいろいろな開発・・・原発、ダム、3本の本四架橋(多くても1本で充分)、湖の干拓八郎潟など)、湾の干拓諫早湾干拓など)、その他色々・・・ほとんど全ての開発事業は「ナンセンスで無意味、いや、むしろ有害」と断言できると思います。


Do Nothingという都市計画用語は、本来むだな開発を抑えるように働くべきに、実際は「無意味な」選択肢だとして軽視されたものだと思います。でも、そのようにDo Nothingを考える立場は、自分の立ち位置がほんとのところ解らず、後世の文明批判には耐えられないものであると考えるのです。Do Nothingこそ、文明批判の証しなのです。この選択肢を選ぶということは、後世の批判に耐えうるベスト・チョイスなのかも知れません。



今日のひと言:Do Nothing=無為であるとすれば、古代中国の老子が行っていた、当時の中国文明批判について、現代人も耳を傾ける必要も生まれそうです。


なお、何かの政策を実行したい自民党は、野党(あるいは対抗勢力)に対し、「対案を出せ」と迫ることが多いですが、自民党案はおおむね間違った政策だと思います。(最近の話題なら、JA全中に対して自民党政調会長である稲田朋美が「だったら対案を出せ」と嘯いた事例があります。)政策が実現されたら、国民の一部のみ潤う政策なのです。こんな時、野党は自民党の挑発的な論理に巻き込まれず「無為=Do Nothing」を主張すればいいのです。




無為の共同体―哲学を問い直す分有の思考

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無為のクレオール (現代人類学の射程)

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コミュニティの計画技法

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今日の料理


クサギの「辛過ぎないラー油」炒め





新緑のクサギが食べられる季節になってきました。この植物の料理は複数回取り上げていますが、今回は「乙女たちのおかずラー油」(S&B食品)と醤油、とうきび糖を使って炒めて見ました。クコの実もアクセントに加え。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20130524#1369369540  ←クサギのアウトライン

 (2015.05.03)




@牛肉薄切り+クコ+豆腐のソース炒め




わが家の飼い犬・タエコはグルメなので、普通のドッグフードは食べません。そこでわが家兄弟の食料である肉や魚を混ぜてあげています。そうなると特に最近高騰気味の肉の場合、人間の食べる分は増量しなければならないので大変です。この料理はその線で作ったものです。

 (2015.05.04)




@ヒジキのポン酢和え




海草のヒジキをたまに食卓に乗せます。今回は長ヒジキを材料に、戻して切りそろえたあと、ゴマ油とトウキビ糖で軽く炒め、ポン酢を適量加えて、甘酸っぱくしました。赤いのはクコの実。

 (2015.05.06)




@ゆかり掛け豆腐




冷奴の食べ方として、もっとも有名なのが、「ショウガおろし+カツオ節+醤油」、また有名なのが「オリーブオイル+クレイジーソルト」というのがありますが、今回は「ゆかり」を掛けてみました。まあ美味しい。(ゆかりは赤シソと塩の複合調味料です。)

 (2015.05.07)






今日の一句


群れ遊ぶ
綿毛タンポポ
目を奪う





タンポポのある意味神秘的な綿毛に酔いました。一集落で遊んでいる感じですね。

 (2015.05.04)