虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「フィンランド 森と街に出会う旅」:人類学の研究に向く女性

この本は旅行書です。東京書籍:2006年初版。著者は鈴木緑さんで、家具のバイヤーからフリーのデザインコンサルタントを経て、デザインジャーナリスト+カメラマンとなります。自称デザインパパラッチで趣味は旅行。北欧にはまり東京と北欧を長年行き来しています。北欧に関する本が多数。(著者紹介の欄より)


・・・これがおおむね彼女の経歴です。こうみてくると、皮相的な文章かとも思えますが、もしかしたらこの著者は、民俗学とか文化人類学者とかの研究者であってもおかしくないとも考えられます。一過性の旅行記ではなく、滞在型で取材していますので、そう思えるのです。このタイプの取材は、家庭生活を営む能力の高い女性のほうが、男性より優れた記事を書くことも多いと思います。ジャーナリズムの分野でも、学術研究の分野でも。


フィンランドは、むかしはスウェーデンの支配を受けていました。そこで今のフィンランドも2カ国語、2民族。トリノオリンピックのアイスホッケー決勝は、フィンランド選手のなかに、明らかにスウェーデン系の名前を持つ選手がおり、結果、スウェーデンに負けたということがあり、フィンランド人は複雑な感情を味わったとのこと。(P14)それかあらぬか、現在のフィンランドの政治体制は、大統領を国家元首とする共和制で、王国制ではありません。(この本が出版された2006年時点で、大統領は女性がやっていました。)


フィンランド人女性は、愛想よく客を迎えるというより、「とても不機嫌そうに」応対する。特に男性にこびる必要はないからだそうですが、男性に積極的に「付き合わない」と働きかける女性も珍しくないとか。(P32−P33)


@トイレは、森の中へ行って用を足す人が多い。(P37−P38)


@教育・・・これは世界一の水準。大学を卒業するまでは、無料。日本人の子供のように塾通いで詰め込み教育ではないが(むしろ「ゆとり教育」っぽい)、思考力が身につく教育をしている。生徒から「僕は将来、アイスホッケーの選手になりたいので、算数は要らないでしょう?」という質問に対してもたとえば「アイスホッケーの選手になるんだったら、お給料がすごくたくさんになるから、そのお給料を数えられるようにならないといけないね。だから今算数を勉強しなくちゃいけないのよ」というように、将来の必要性にからめて諭すというやり方で接するのですね。


また、進級できない生徒には、あと一年、無料で補習を受けることもできます。日本の「ゆとり教育」が「落ちこぼれ」の生徒を多数出したか出さなかったかは、私はよく知りませんが、フィンランドの場合、いろいろな手段で生徒の学力を維持することに力を入れているようです。


また、フィンランドでは、義務教育の場で、1995年から大学の修士課程修了者からしか人材を取らず、より質の良い教育を志向しているとも言います。 (P60−P63)


フィンランド人は別荘を持ち、そこで夏のナチュラルライフを満喫する。・・・首都ヘルシンキから離れた森と湖のエリアで自給自足的な休日を過ごす。スーパーで食料品、飲料水をまとめて買い、現地で水汲み、木の伐採、薪の調整など、自分で行い、名物の「ザリガニ」を茹でてビールで舌鼓を打ちながら、サウナで汗を流す。(P80−P87)


フィンランドではオーロラが見られる・・・著者の鈴木緑さんは、空を緑に染めるオーロラが大好きだそうですが、この自然現象ほど写真にしにくいものはないそうです。(P100−P105)




今日のひと言:フィンランドといえば、サンタクロースの発祥地で、またムーミンの作者でマルチな才能を発揮したトーベ・ヤンソンの活躍した地でもあります。まさしく森と湖のサンクチャリとして、観光客を惹きつけるものがあるのでしょう。


そういえば、こういった話題もありました。:小泉元首相がフィンランドの核最終処分場を見学して


今年8月にフィンランドを訪れ、高レベル放射性廃棄物を地下に埋めて10万年かけて無毒化する核廃棄物最終処分場「オンカロ」を視察したことに触れて「フィンランドには原発が4基しかないが、日本には50基もある。いますぐ止めないと最終処理が難しくなる」


http://matome.naver.jp/odai/2137808495917242901 より


まさしく、日本でNUMOが検討している最終処分場でも、300mの地中深くに穴を掘り、そこにキャニスターという容器に廃棄物を詰め込んで10万年置くという点、オンカロに似ているのです。なんと言っても、東京タワーの高さほどの穴を掘るのですから、これはキ●ガイ沙汰です。


参考過去ログ http://d.hatena.ne.jp/iirei/20110430#1304174733

       :NUMOのねこばば:原子力行政の今



フィンランド 森と街に出会う旅

フィンランド 森と街に出会う旅

目からウロコの文化人類学入門―人間探検ガイドブック (MINERVA TEXT LIBRARY)

目からウロコの文化人類学入門―人間探検ガイドブック (MINERVA TEXT LIBRARY)

池上彰が読む小泉元首相の「原発ゼロ」宣言

池上彰が読む小泉元首相の「原発ゼロ」宣言





今日の料理


@ウド料理


しょっちゅう取り上げるウド料理。今回は私が作りました。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20150128#1422415389 参照。


 @1:ウドのキンピラ





はねた皮や枝などをトウキビ糖+醤油+カツオ節などで炒めました。これは美味しい廃物利用。

 (2015.04.28)



 @2:ウドのぶつ切り・梅サワー漬け+オイスターソース和え




梅サワー漬けは、青梅:砂糖:穀物酢を1:1:1で漬けたもの。なんとも、荒々しい料理です。(↑自虐的表現)

(2015.04.28)




コシアブラの素揚げ






コシアブラは、ウド、タラとおなじくウコギ科の山菜ですが、最も美味しいと思っています。毎年この時期にのみスーパーに並ぶコシアブラは必ず入手して素揚げにしています。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20140504#1399146810 などを参照してください。


価格は去年が1パック380円から、ことし420円に値上がりしていました・・・

 (2015.04.30)




@オカノリの「辛過ぎないラーユ」和え






オカノリは、わが家の常備菜ですが、今回はS&Bの「乙女たちのおかずラー油」+醤油で和えてみました。なかなか風味絶佳です。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20090604#1244112704 :おかのり・・・超美味しい「岡の海苔」

 (2015.05.01)





今日の二句



雑草と
仲良く生える
麦たちや




敢えて「雑草」という言葉を使いましたが、本意ではありません。麦畑で生える野草は、本来麦を育てる立場からは、邪魔ですから。それにしても、麦の収穫の際、これら「雑草」をどう扱うか、興味があります。

 (2015.04.29)




アマガエル
桶の回りに
三四匹


夕方、飼い犬・タエコの水飲み場にアマガエルが群れていました。

 (2015.05.02)