虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

戦う工学者・熊本一規氏:「電力改革と脱原発」(書評)

私が東大都市工学科の先輩・熊本一規(くまもと・かずき)氏とお会いしてから、かなり長きに渡りましたが、ここ2、3年お互いの著作を贈呈しあい、熊本氏から直近で贈られたのが、今回取り上げる「電力改革と脱原発:2014」です。この本は、氏の前著作である「脱原発の経済学:2011」と「がれき処理・除染はこれでよいのか:2012」の拡充と言う感じで、いずれも緑風出版から上梓されています。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20130613#1371085197
がれき処理・除染はこれでよいのか(書評)


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20131215#1387062389
東大闘争と原発事故(書評)〜みごとな起承転結


さて、この本の冒頭を飾るのは、政府が昨年から言い出した「ベースロード電源」という議論のまやかしです。原発は、出力が安定しているので、他の発電所より基盤的な発電源になりうるということですが、実際には火力発電も「ベースロード電源」になることが可能で、むしろ原発は「ベースロード電源」にしかなりえない、という小回りの利かない技術であるということです。(しかも「ベースロード電源の要件を満たせないから、失格電源である」とも言えるということ。)


この本では、この「ベースロード電源」の出元は「電気事業連合会」であるらしく、この組織を一瞥してみると(wiki


電気事業連合会(でんきじぎょうれんごうかい、英語:The Federation of Electric Power Companies of Japan、電事連、FEPC)は、日本における電気事業の運営の円滑化を図るため設立された、電力会社各社の連合会である。法人格はなく、任意団体として運営されている。


活動内容についてしんぶん赤旗が問い合わせたところ「公式ウェブサイトの記述が全て、それ以上は回答出来ない」とのみ応答があったという。ところが、そのウェブサイトにも肝心の事業内容詳細は書かれていない、と指摘されている。


公式ウェブサイトには、事業内容として「電気事業に関する知識の普及、啓発および広報」「電気事業に関する資料、情報等の収集および頒布」「電気事業に関する調査研究および統計の作成」「電気事業に関する意見の表明」「その他、本会の目的を達成するために必要な事項」と記されている一方、運営費の収支などについては明らかにされていない。


なにやら電力会社の「野合」のような組織で、このような組織が言い出した「ベースロード電源」という概念に、自民党の政治家とか官僚があっさり乗っかっているのにはなにやら薄ら寒さすら感じます。このような異常な状態を見抜き、表現する能力において、法学にも強い熊本氏の鋭さを感じます。(法学についても、自ら求めて学ばれたのでしょう。)そして、氏は、敢然とこの異常な複合組織に戦いを挑むのです。なんとなく聞いていると、丸め込まれて「ベースロード電源、やむなし」かと思ってしまう一般人(私も含め)には、「もっと勉強しなきゃ、ダメじゃん」という声が聞こえて来そうです。


これ以後も、熊本氏の舌鋒鋭い議論が展開されます。「電力システム改革」においては、以下の3つの要諦が上がっています。単独・独占の電力会社の横暴を防ぐために


1)広域系統運用機関の設立
2)小売全面自由化
3)送配電部門の法的分離

     (P89−P90)

などが挙げられています。


また、「原子力損害賠償支援機構」という組織がありますが、この組織も、決して被害住民の助けになるものではありません。問題点を列挙すると



1)原賠法における「無限責任」・「責任の集中」の原則に反している。


2)国から機構への交付国債に関し、機構による国への返済は義務づけられているが、機構からの東電への交付金については返済義務はない。


3)国庫納付金は「一般負担金」および「特別負担金」を元に支払われるが、「一般負担金」は電気料金を通じて国民が負担する。


4)過大な負担金により電気料金が上がりすぎる場合には機構に税金を注げる。いいかえれば、機構による国庫納付金、ひいては負担金を軽減できる。しかし、それは、電気料金軽減の代わりに税金を充てるだけのことで国民負担には変わりない。

   P120


・・・どう転んでも、東電には有利、一般国民は出費を強いられる・・・こんな世界に変革を迫りたいものです。



今日のひと言:今回読んだ本の場合、内容が盛りだくさんで(短い本なのに付箋でいっぱい)、私のブログの容量の関係で、全てのトピックには触れられなかったのが残念です。最終章にあった「クリアランス制度」も看過できない、核廃棄物の「とてもいい加減な」扱いを許容するもので、一般国民には有害・無益なものなので、阻止していくべきなのでしょう。


放射能が一定のレベル以下は放射性廃棄物として扱わない(P160)」制度で、実際、環境省の官僚も、高濃度の廃棄物と低濃度の廃棄物を意図的に混合して「問題なし」としているようなのです。なお、最終章(4章)は、さすがに工学者である熊本氏が廃棄物処分施設の問題点を突くあたり、見事です。このブログをご覧の方、怒りを内に抱きつつ、行動は理性的に、という見本が熊本氏に見出せると思います。




電力改革と脱原発

電力改革と脱原発

脱原発の経済学

脱原発の経済学

がれき処理・除染はこれでよいのか

がれき処理・除染はこれでよいのか

動かすな、原発。――大飯原発地裁判決からの出発 (岩波ブックレット)

動かすな、原発。――大飯原発地裁判決からの出発 (岩波ブックレット)




今日の料理


@カレー風味うどん





掲載はしなかった料理で、弟が作った複合調味料で、カレー風味のラム肉料理がありましたが、その残り汁を使ってカレーうどんを食べていました。その複合調味料とは・・・クミン(香り)、ターメリック(色)、ショウガ、カイエンペパー(味)の4品で大体の味になるのです。

 (2015.02.01)




@金盞花(キンセンカ)の混ぜご飯





ハーブの世界では、マリーゴールドと呼ばれる植物には3つあり、フレンチ・マリーゴールドアフリカン・マリーゴールドポット・マリーゴールドです。アフリカンには畑に住む線虫を殺す働きがありますが、フレンチ、アフリカンともに食用にはしません。ポット・マリーゴールド金盞花)は、花が食べられます。いわゆるエディブル・フラワーです。炊き上がりのご飯に混ぜて食べました。味はともかく、見た目にきれいでした。

 (2015.02.02)




アサイーの飲み物






近所のディスカウント・ショップでたまたま売っていたジュース、「ああ、これがアサイー配合のドリンクなのだな」と買ってみました。この品は「アサイーバナナ」で、バナナジュースとアサイージュースを混ぜたものでした。色は小豆色で、もしバナナを混ぜていなければもっと綺麗な色だったかも、と思いました。「アサイー」は健康に良い果物とされていますね。ヤシ科です。


ただ、成分表を後で見てみると、多い順にブドウ、リンゴ、バナナ、アサイーピューレ、アローニャレモンバーム抽出物、レシチン(大豆由来)となっていて、成分比では少な目の配合になっていました。「アローニャ」というのも、果物です。

 (2015.02.02)




@ヒバの煮つけ・梅サワー風味





過去にも取り上げた「ヒバ」(小松菜の乾燥品)で煮込みを作りました。梅サワー漬けとは、「梅:砂糖:米酢=1:1:1」に混ぜた複合調味料。煮始めたときにこれを加え、ちょっとして醤油・昆布だしも加えます。他の具としてはクコの実、油揚げを加えました。

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20140612#1402568560

 (2015.02.05)





今日の詩



@タエコはベジタリアン


散歩中、タエコ(犬)は
なんでも口にする。


最近は畑ではねられた
白菜の切れっぱしが
大のお好み。


ティッシュ・ペーパーも食べる
カリントウのような
他の犬の糞も食べるようだ。


一回口にすると、決して離さない
頑固さ。


でもネギ類だけは
絶対食べちゃダメだよ!

 (2015.02.05)