私は、現在のJ-POPとか演歌とかを聴くにつけ、なんとラブ・ソングが多いのか、感心してしまいます。J-POPの7割、演歌の8割がラブ・ソングであるように見積ります。たとえば松田聖子、浜崎あゆみの曲はほぼすべてラブ・ソングです。また、よく「北へ向かう」シチュエイションをもつ演歌の曲は大体失恋の歌だし・・・それが良い、悪いというわけではありませんが、ここに、ラブ・ソングを拒否するバンド、キリング・ジョークのリーダー、ジャズ・コールマンの発言があります。:
ライナーノーツからコールマンの発言を引用してみます。:「俺たちキリング・ジョークは11枚アルバムを出しているが、1曲たりともラヴ・ソングを書いたことがない。単なるラヴ・ソングや、歌詞に意味のない歌に本当に人の心を動かす力があるとは俺には思えない。でも俺は音楽が何らかの変化をもたらすことができると信じている。世の中で起きていることに対する人々の認識を変えることができるはずなんだ、絶対に。たとえば“War dance”のような、何かすごく爆発的でヘヴィなものを聞くと、自分たちが不吉な時代に生きていることを人は知る。つまり、音楽は俺も含め、多くの人の怒りを反映しているものでもあるんだ」(2003年)
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070301
War Dance
・・・なるほど、力強いメッセージです。言い切ってしまっています。この発言を読んだ私は、なるほど、と唸りました。ラブ・ソングは無意味か・・・なお、ジャズ・コールマンはクラシックの作曲も手がけているそうですが。
そこで、これまで聴いた曲から、ラブ・ソングではない曲を拾い上げてみましょう。
1) ギャグ・ソング・・・無責任一代男(植木等とクレージーキャッツ)など
2)自虐の歌・・・泣いてたまるか(渥美清)、眩暈(めまい)(鬼束ちひろ)など
3)鎮魂歌(レクイエム)・・・襟裳岬(森進一)、千の風になって(秋川雅史)、誰もいない海(トア・エ・モア)など
無責任一代男
誰もいない海
ここに挙げた歌はどれも個性的で聴き応えがあります。(面倒であるか、既知の方はスルーしてください)
ただ、例外的に、4)のご当地ソングは、ただ単におおまかでいい加減な悲恋の設定のもとに、旅をするという曲群であり、このジャンルの曲は掛け値なしに無意味な曲です。
過去ログ:世界観とは設定だ:演歌を例として
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20110111
女演歌の存在理由
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080424#1208991059
特に3)の分類の曲は、人生の極限の姿を見せてくれるという意味で、プレッシャスな(価値ある)曲と言えるでしょう。
5)のタイプの曲はNHK「みんなのうた」に多いです。特にこの「テトペッテンソン」は、歌詞がどんな言語によってでもなく、適当にでっち上げた歌詞であり、そのあまりのバカバカしさに唖然としますよ。もともと、「みんなのうた」は低年齢の児童に対応した曲なので、ラブ・ソングは少ないです。(これにも例外はあり、小泉今日子が歌った「は・じ・め・て」は、幼いながら、恋の芽生えを垣間見せてくれるような曲です。)
なお、「泣いてたまるか」は、「男はつらいよフーテンの寅」のプロトタイプであったTVドラマ「泣いてたまるか」のテーマソングです。このドラマは一話完結型でいろいろな社会的地位の男性を渥美清が熱演していた、優れたドラマでした。そのうちの一話に「男はつらい」というのがあり、この回の脚本を担当した山田洋次がシリーズものの「フーテンの寅」にしたというわけです。ただ多様な才能を持つ渥美清の演技を限定してしまい、私はこのシリーズ「フーテンの寅」は好きではありません。
数年前、デアゴスティーニが「泣いてたまるか」を復刻して販売したので、いくつか、飽きるまで買ったことがあります。
今日のひと言:私はコールマンのような断定は出来ませんが、ラブ・ソングの世界は玉石混交かと思います。ほんと、どうしょうもない曲もあり、珠玉のような曲もあるかと思います。
今日の二句
点々と
喀血のごと
ヒナゲシや
この時期、コボレだねから育つ「ヒナゲシ(雛罌粟)」の赤い花には圧倒されます。でも、やはり病的な感じがするので、結核による喀血(肺から出る血液)に擬えました。
(2012.05.17)
これまで、近くにあっても見過ごしていた民家の屋根、ちょうどパウル・クレーの絵のように美しい諧調(グラデーション)をしていたのに興を持ち、書いた一句です。
(2012.05.19)
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