高橋葉介・その華麗なる描線

- 作者: 高橋葉介
- 出版社/メーカー: 朝日ソノラマ
- 発売日: 1977/12/25
- メディア: コミック
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高橋葉介(たかはし・ようすけ)と言っても、今の若者には知っている人はいないでしょう。でも、彼は日本マンガ史上、独自な位置を占めます。
Wikipedia より
毛筆を使った黒く太い線の特徴的な絵柄で知られ、長年そのスタイルを通している。1980年前後には漫画界のニューウェーブの旗手と目され、従来の少年漫画や少女漫画の影響を受けつつ、それらのいずれとも異なる独特な表現で漫画ファンの注目を集めた。作品は、基本的に猟奇要素の強い幻想怪奇漫画が多いが、シニカルなブラックジョーク、コメディ、冒険活劇など多岐にわたる。藤田和日郎も、高橋作品に震えるほど影響を受けたと語っている。
その絵には、無駄な描線がなく、ひとコマひとコマ、精緻に描かれる絵面なのです。
このように、積み立てられた絵は、むしろ「狂気の世界」を体現するに十分なのです。
マンガ少年は、本来手塚治虫の「火の鳥」のうけ皿として、朝日ソノラマが刊行していた月刊誌で、ちょうど、白土三平の「カムイ伝」のうけ皿として創設された「ガロ」のような雑誌です。1976年から1981年まで雑誌は刊行されました。
執筆していたマンガ家は、数多く、高橋葉介を始め、石坂啓(下北なあなあイズム)、いしかわじゅん(かんぱりソーダ:これ、傑作)、ますむらひろし(ますむらひろしのファンタジー・ゾーン)などがいます。なんだか、少女マンガとも少年マンガとも知れない独特のテイストの雑誌でした。
荒木飛呂彦が「魔少年ビーティー」でデビューしたさい、私はこの作品が、高橋葉介の模倣であると直感しました。さらに「ジョジョの奇妙な冒険」では、「ヨウスケの奇妙な世界」から「奇妙」という言葉をパクッたのかと思いましたが、その後荒木の独創的な資質に気付いたので、パクリ扱いは止めることにしたのです。
さて、再び高橋葉介の話に戻りますが、彼の作品は、時代の気を受け、SF作品が多いです。例えば「墓掘りサム」。核戦争の結果、死の放射能が世界を覆い、死んだ人間の墓を掘るために作られたロボット「サム」。今日もある集落を訪ね、苦痛を和らげるための薬を渡し、サムとついさきほど親しくなった男の子も一緒に死の眠りに就きます。
翌朝、集落の人全員が死んだのを確認して、一人一人の墓を掘るサム・・・こう独白します:もしも、もしも世界中の人間がみな死に絶えて・・・そしていつかこの俺も壊れる時が来たら――いったい誰がおれの墓を建ててくれるのだ?
あるいは、「追跡行」というユーモラスな作品もあります。新興宗教の教祖になったある主婦、旦那のもとを飛び出し、世界中を遊説してまわります。そして彼女は、過去に男の征服者・・・アレクサンドロス大王、シーザー、チンギス・ハーン、ナポレオン、ヒトラーもなし得なかった世界統一をなし遂げます。ただ、そこに旦那が出てきて、「平手打ち」一発、彼女を家に連れ帰り、彼女が家事につき、自分の世話をすることが「これでいいのだ」と
澄まして呟くのです。
今日のひと言:高橋葉介の作品は、いまや入手しにくい漫画かも知れません。
私の手元にあるのは
「ヨウスケの奇妙な世界 PART1 腹話術」
「ヨウスケの奇妙な世界 PART2 仮面少年」
です。
無駄な描線がないという意味では「しゃばけ」(新潮文庫:畠中恵)シリーズの挿絵を担当した「柴田ゆう」さんも素晴らしいです。
柴田ゆう・絹の手触り : http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070626

我楽多街奇譚 (高橋葉介セレクション) (あさひコミックス)
- 作者: 高橋葉介
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/12/20
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- 作者: 柴田ゆう
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