虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

マハトマ・ガンジーとチャンドラ・ボース/インド独立の立役者


 私は、昔から、ガンジーの「非暴力」「不服従」(「無抵抗」ではない)という眼目で、どうしてあの狡猾なイギリスから独立できたのか、不思議でした。このたび少々調べて、まあ、こんなものかと落ち着いたので、ここに記します。



参考過去ログ:http://d.hatena.ne.jp/iirei/20100615#1276553757
:(イギリスはどれほどの人数でインドを支配したか?)


 マハトマ・ガンジー(1869−1948)、「マハトマ」とはインドのノーベル賞詩人タゴールに捧げられたものですが、「偉大なる魂」との意味だそうです。(別の説もある)


スバス・チャンドラ・ボース(1897−1945)は、しばらくガンディーと歩調を揃える運動をしていましたが、「独立のためには、外国の武力が必要」と考え、武装闘争を指向します。


 ガンジーロースクールボースケンブリッジ大学と、ふたりともイギリスに留学していて、イギリスがどんなものかよく知っていたのでしょうね。二人とも裕福な家に生まれたのでしょうね。なお、ガンジーは弁護士を開業し、ボースは町長などを歴任しました。


 そしてボースははじめナチス・ドイツにイギリスに対す軍を動かして欲しいと望みますが、それは叶わず、今度は日本にインド侵攻を頼みます。東條英機首相、および南方軍の司令官河辺正三中将、および牟田口廉也中将に気にいられ、インドを攻めるという無謀な作戦・・・インパール作戦を企てますが、投入した日本兵10万人ほとんどが死ぬか、半病人で帰ってくるという惨劇になりました。


ただ一人の外国人のためにこれまでの出血をするというのが、極めて異例であり、おかしな恩情です。そして日本の敗戦が濃厚となると、「イギリスの敵だから」とソ連に身を寄せることにしたのですが、飛び立とうとした台湾で、飛行機が炎上し、体中火傷をした彼は、帰らぬひとになります。彼は、インドの独立さえできれば、組む国はどこでも良かったのですね。


 一方のガンジー一筋縄では人格の全体像がつかめない人です。


こんなことを言っています:
ヒトラーは500万人のユダヤ人を殺した。これは我々の時代において最大の犯罪だ。しかしユダヤ人は、自らを屠殺人のナイフの下に差しだしたのだ。かれらは崖から海に身投げすべきだった。英雄的な行為となっただろうに。・・・・?(私の感想)
また、インドのガンである、カースト制度はおおむね肯定しています。



さて、「非暴力」「不服従」でなんでイギリスが撤退したのか、については、やはりいまひとつ解りません。インド独立については、チャンドラ・ボースのような武断派の存在も大きかったと言えますが、ガンジーの試みの効果については、以下の文が参考になります。

 マハトマ・ガンジーの時代のインドはイギリス植民地で、当時のイギリスにも植民地支配を正当化する論理があったようです。これがオリエンタリズムにみられる東洋人蔑視で、東洋人は野蛮であるため我々西洋人が植民地支配して教え導き文明化して彼らを救わねばならない、と考えることにしていたようです。


 この考え方は、”愚民を教え導かねばならない”、と自分に言い聞かせて余計なことばかりやり、国民の足を引っ張るどこかの国の官僚の考え方に酷似しています。


 人間の行為を支えている論理の矛盾を指摘するには、暴力ではなく、論理でなければなりません。論理には論理で対抗すれば、自らが野蛮では無いことを示すことになります。こうした動きをイギリス軍が武力で抑えれば、イギリスの方が野蛮であることを証明することとなり、オリエンタリズムはその根拠を失うことになります。


 第一次世界大戦においてインドはイギリスに協力していますが、この後イギリスはインドの独立を認めるどころか弾圧を強めようとします。そこでガンジーはイギリスに対抗するためにハルタルと呼ばれる断食や祈りによるストライキをインド全土に呼びかけ、その試みは成功します。



 ところがここで起こったのがイギリス軍による無差別虐殺でした。このあたりからも、イギリス人がインド人を”野蛮人”と呼ぶ根拠を失っていくことが分かります。



http://www.xsunx.org/columns/2bb_tetsugaku/Hibouryoku_Chikara.html

――明確な説明です。論理(logic)なら、ロースクールで鍛えていましたからね、ガンジー



今日のひと言:ガンジーは暗殺されてその生涯を閉じますが、犯人は狂信的なヒンズー教徒であったということです。その際にもガンジーは「お前は許される」とのサインを出していたとのこと。まあ、聖人的な最期ですね。


 なお、アメリカの公民権運動の指導者、マーチン・ルーサー・キング牧師ガンジーに、武闘派マルコムXはボースにあたるような気もします。どちらのケースでも、この両陣営があったからこそ、インドは独立でき、黒人は公民権を獲得したのでしょうね。


それにしても、同じ「非暴力」を掲げたチベット中共人民解放軍に制圧されたのは何故か?・・・というブログが目に入りましたが、それは、人民解放軍が「論理」というものを弁えない殺人者集団だったからかと思えます。まだしも、イギリス人のほうが恥を知っていた、という感想です。

過去ログ
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20061215:中国人も侵略する





今日の一句

 ↑ニラの花

 ↑ペチュニアの白花


「貴方の好きな
色に染めて」と
白い花

  (2011.09.06)


同趣旨の詩:


白い花は
キャンバスだ
思いどうりの
色に染む

  (2011.09.07)

ガンジー自伝 (中公文庫BIBLIO20世紀)

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マハトマ・ガンディー (対訳マンガ偉人伝)

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キング牧師とマルコムX (講談社現代新書)

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グルカ兵