メルマガ「軍事情報」の定理（Theorem）

【軍事理解のための「３つの土台」】

１．せめてこれくらいは国民として把握しておきたい軍事の常識

→軍事は政治の延長線上にあるもので、決して特別なものではない。
だから、軍事を忌み嫌う人は、政治を正しく理解することが出来ない。
一方で、軍事を必要以上に神聖なものと捉える人も、全体を見誤まる。

２．国民の軍事理解でイチバン欠けている部分

→国際政治がバランスオブパワー（パワーバランス：筆者注）の関係で成り立っているということを知らな
い。一方で、そのようなことを知らないお人好しが、あたかも善良な人である
かのように捉えられる傾向にある。残念ながら、現実の国際社会は単なる仲良
しクラブにあらず。

３．ナゼ国民は、軍事理解に乏しいのか？

→自国への帰属意識が希薄であるため。守るべき対象（日本）を感じることが
出来ないのだから、軍事を理解することなど到底不可能。国家観に対する教育
を怠ってきたことのツケ。

私はmag２のメルマガ「軍事情報」を、これまで５年ほど購読していますが、最近のメルマガには上述の命題（定理）が掲げられています。ここに挙げられている視点は、私も共有できます。

３．については、もはや天皇制が日本をまとめる求心力がない点で、克服は難しいと思います。まあ、明治・大正・昭和時代の天皇は「現人神：あらひとがみ」・・・神と仰がれていて、その信仰の中心になった国家神道は、大平洋戦争の結果、反故（ほご：紙くず）になり、昭和天皇も人間宣言なされました。「神は人間になった」のです。そして日本は無宗教状態になった・・・これでは、国防意識は生まれないでしょう。確かに、日本人は、日本への帰属意識が薄弱です。ただ、私について言えば、私が単純に戦前の「天皇制」を信奉していないのも事実です。

１．について、反戦派の人の関わった芸術には、「戦争＝悪」であるとの認識をしたものが多い。２つ例を挙げると、「NHKみんなのうた」の「さとうきび畑」の場合、平安な農作業の最中に「♪いくさがやってきた」「♪あの日鉄の雨に打たれて父は死んでいった」という一節が出てきますし（鉄の雨とはアメリカ軍による無差別銃撃のことでしょう）、アニメ映画「クロがいた夏」（中沢啓治・原案）の場合、原爆を落としたアメリカを憎むのではなく、「戦争のバカヤロウ！」となってしまいます。日本人は、「被害者意識」が強く、本来善でも悪でもない戦争を極度に嫌うようになったと言うことなのですね。（もっとも、この２例は、ナンセンスではなく、完成度の高い優れた作品ではありますが。）なお、プロイセン（今のドイツの前身）の軍人・軍事思想家であるクラウゼヴィッツは、彼の「戦争論」のなかで「戦争は政治の延長である」と述べています。「軍事情報」の一節にも反映されている言葉です。

２．について、民主党の面々は、アメリカが日本から撤退したら、中国はかならず軍事行動を日本に対して起すだろうということを、知ってか知らずか、中国に秋波を送っている。現に、中国は、アメリカが引き上げた後、ベトナムに侵攻して、撃退されています。（アメリカに勝った国が当時の中国に負けるはずはない）フィリピンに対しても、同様に侵攻しているのです。その意味で、鳩山由紀夫総理大臣は「ただのお人好しです。」

中国人の発案した陰陽五行論では、世の中を動かす５つの働き（＝機能）として、
木（防御）、火（伝達）、土（引力）、金（攻撃）、水（習得）

を挙げています。ここには、攻撃⇔防御　の対が見られるのです。戦争とはいつでも平和と隣り合わせにあるものなのです。

今日のひと言：３年ほどまえ、「軍事情報」の著者エンリケ航海王子さんが、「ロシア政治経済ジャーナル」（北野幸伯氏主宰）を称して、「読むに足りるネット上のメディアはこれしかない」と断言していました。これを読んで・・・エンリケさんはえらく狭量な人なのかな、と思いました。そうだとすると、「ロシア政治経済ジャーナル」以外のメディアは無価値なことになり、「軍事情報」も無価値なメディアであるということになりますからね。別の分野で頑張っているメディアは価値無きに等しい・・・と言っておられたように感じます。・・・それとも筆が滑った？

まあ、それでも軍事にまつわる豊富で貴重な内容のメルマガなので今も購読しています。
http://archive.mag2.com/0000049253/index.html（配信開始・配信停止）

関連過去ログ：高山正之の視点　　http://d.hatena.ne.jp/iirei/20061211

地政学―アメリカの世界戦略地図

軍事学入門 (ちくま文庫)