虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

乳と蜜の流れる地



これは、エジプトから脱出してきたユダヤ人に、エホバの神(ヤハウェの神)が肥沃な大地を約束したという故事から取られた言葉ですが、素直に読んで見ますと、これはとんでもない場所です。


 貴重な食品である「乳」と「蜂蜜」が川を無駄に流れてゆく・・・これは古代中国の、暴虐な王、桀王(けつおう)、紂王(ちゅうおう)がやったという「酒池肉林」を彷彿させるものがあります。お酒を池になみなみと湛え、林では肉を木の枝に吊るし、飲めや歌えやの宴会を延々と行う・・・酒も肉も当時でも貴重品だったのに・・・


思えば、ユダヤ民族は大事な子種(こだね)である精液を大地に無駄にたらす「オナニー」を禁止してきましたが、この「乳と蜜の流れる地」というキャッチ・フレーズでは、食品については、大事にしないような気もして、首尾一貫していない民族だなあ、と思います。


 現代でも、乳が流れる状況は起き得ます。なんでも、酪農で牛乳の生産調整のため、せっかく搾った原乳を垂れ流しにして、川を汚染する・・・こんなことがあったという番組をついこの前見ました。日本でよく起きるこんなトンデモない状況がユダヤ人の憧れなのでしょうか?

 
 もちろん、この「乳と蜜の流れる地」というのは、喩え話(たとえばなし)でしょう。でも喩えが悪すぎます。今のイスラエルは、かなりの農業生産もあり(たしか)、まわりのアラブ国家からみれば裕福でしょう。でも、パレスチナの民はむしろ血が流れる環境(血の流れる地)に置かれ、パレスチナの民には「乳も蜜も」保証してくれません。



今日のひと言:パレスチナの民とは、旧約聖書にでてくるペリシテ人が前身でしょう。あのミケランジェロの彫刻「ダビデ像」、ダビデが対峙しているのは、ペリシテ人ゴリアテという巨人で、見事にダビデは「石を投げ・ゴリアテを倒します」。これが紀元前10世紀頃のお話。
 そして今も、ユダヤ人対パレスチナ人の反目は続いています。そもそも、旧約聖書では、ユダヤ人の祖・アブラハムのメカケの子孫がパレスチナ人を含むアラブ人であり、正統なアブラハムの子孫がユダヤ人だと謳っています。


参考過去ログ:旧約聖書・創世記の問題記述
    http://d.hatena.ne.jp/iirei/20061231


書経 上 新釈漢文大系 (25)

書経 上 新釈漢文大系 (25)

旧約聖書を知っていますか (新潮文庫)

旧約聖書を知っていますか (新潮文庫)