「シェルブールの雨傘」と「ひまわり」(映画比較論)
*「シェルブールの雨傘」と「ひまわり」(映画比較論)
西欧名映画特集 その1
この、フランスとイタリアの名映画を代表する2作品を比較して行こうと思います。「シェルブールの雨傘:1963年監督ジャック・ドゥミ」は、愛し合う男(ギイ:ニーノ・カステルヌオーボ)と女(ジュヌビエーヴ:カトリーヌ・ドヌーヴ)。彼女が子供を妊娠した際、「この子の名前はどうしようか」と相談して、男の子ならフランソア、女の子ならフランソワーズにしようとしたところで、ギイはアルジェリア戦争に駆り出され、仕方なく出征しますが、ギイの留守中、ジュヌビエーヴは、宝石商の男に執拗にプロポーズされ、胎児のことはともかく、なんと結婚してしまいます。
一方、「ひまわり:1970年監督デ・シーカ」では、結婚式を挙げた男女・・・男(アントニオ:マルチェロ・マストロヤンニ)と女(ジョバンナ:ソフィア・ローレン)。式後14日でアントニオには召集令状が来て、「狂人」を装いますが、そんなの知ったことかと、出征の道を歩かされます。行く先はソ連。極寒のなか、隊列を落伍して遭難したアントニオは、ロシア婦人に救出され、彼女と暮らすことになります。子供も設けます。ジョバンナは、ソ連まで出向き、新しい家族と幸せそうにくらすアントニオを探し出しますが、そのやるせなさ、と言ったらない。
以上は大まかな粗筋ですが、幾つかの共通点があります。
1)夫となるべき男が戦場に出征する
2)カップルのうち、一方が他方を裏切る
3)お詫びの仕方が似ている
まあ、どちらかというと「シェルブールの雨傘」のヒロイン(ジュヌビエーヴ)のほうが「ひまわり」のアントニオより罪が重いと思います。実家は傘家(かさや)だったのだから、彼を待ち続けることも可能だったのでは?
お詫びの仕方としては、アントニオの場合、ジョバンナが欲しがっていた「ミンクの襟巻き」を最後に手渡します。おもわずジョバンナは、彼を熱く抱擁します。ジュヌビエーヴの場合、ギイに「こどもの名前はフランソワーズにしたの」と告白します。
今日のひと言:悲恋物語に、戦争というファクターは非常に大きな設定になりますね。今回とり上げた2作品は、いずれも、戦争によって仲を引き裂かれた愛する男女が数奇な生き様をするということをハイライトにしているようです。この2作品は音楽も良く、「シェルブールの雨傘」は音楽がミシェル・ルグラン、ミュージカル形式の映画なので、会話も歌うように進められます。「ひまわり」はヘンリー・マンシーニ音楽です。ただ、「シェルブールの雨傘」というように、雨のなか見晴らしが悪い状態で、テーマソングを選んだように、ヒロインの「見晴らしの悪い」対男性態度が伺えます。一方「ひまわり」の場合、音楽はいかにも明晰で、ヒロインの「確かな視線」を感じるという点で、「ひまわり」の悲しさがより一層、伝わってきます。
テーマソングも込みで、「シェルブールの雨傘」より「ひまわり」のほうが、優れた作品だと思います。
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