虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

SFマンガ家・あさりよしとお

 私がマンガクラブにいた1981年、週刊少年サンデーに「超大型」新人現る!!・・・との触れ込みで掲載されていたのが、「あさりよしとお」の「木星ピケットライン」。


 宇宙の小惑星が地球に接近し、あと1年で地球にぶつかるという設定で、まるで「タモリ」のようなひょうきんでクールなノリのクルー・山本五十六(やまもといそろく)が、木星の水素の大気を使って、原爆を起爆剤として弾き飛ばす・・・といういかにもSFといった作品で、この小惑星木星の12倍の質量を持っている厄介者とされていました。ピケットラインとは英語で「picket line」(前哨戦、警戒線)という意味です。まさに木星をピケットラインにしたのです。


 その後、10数年して、「あの作品はなんと言ったかなあ?」と考えたとき、この「木星ピケットライン」という作品名は覚えていましたので、ググると、「あさりよしとお」という作家名とともに「木星ピケットライン」がヒットしました。そこで、「ほんだらけ」に行って探してみると、「あさりよしとお短編集」という本がありました。徳間書店:1994年初版


 今、手元にその「あさりよしとお短編集」がありますが、勿論「木星ピケットライン」も掲載されています。なにやら、あさり氏、高校生のとき、大学受験を控えてこの作品を仕上げてサンデーに投稿し、採用されたとのこと。一種、天才なのでしょう。ほかにも、特別天然記念物人間国宝に同時に指定され、素手で戦車も航空機も破壊するという、戦闘のプロ「ミスター自衛官」・桜木団三郎がアフリカ(リビア)のカダフィ大佐が放ったテロリスト、「魚男」と戦う、という噴飯物の傑作もあります。:「たたかう自衛官」。


せりふひとくさり


デビッドボーマン船長:破壊したいが力が足りない木星の引力にしても・・・
              奴には屁のつっぱりにもならん
山本:船長!成功する自信はありませんが
             私にすべてをまかせてはもらえませんか
ボーマン:はーっはっはっ    ぐわはは  ひぇええ  うほうほ
      すごい!おまえの真顔は一番の冗談だ!!

      正気か?
山本:この場合本気か?といってほしかった
ボーマン:いやだめだ  この一発には数億の人命がかかっている
      おまえは信用できん

ジム:山本よ
山本:ジム?
ジム:ほら始動キーだまかせたぞ


この様に、スムーズに会話が進行します。
(ボーマンの名は、ロック歌手・デヴィッド・ボウイのもじりでしょう。)
また、あさり氏は「新世紀エヴァンゲリオン」の製作スタッフとして、クレジットされていました。SFマンガ家としての面目躍如です。彼には、SF作家に必要な「センス・オブ・ワンダー」が満ち溢れているようですね。
  

彼のプロフィール:Wikipediaより


北海道上砂川町中空知)生まれ。少年時代の多くを美唄市で過ごす。本格的に漫画を描き始めたのは高校に入ってから。道立滝川高等学校卒業後、東京国税局大蔵事務官を経て漫画家となる。

1981年“浅利義遠”名義の「木星ピケットライン」(『週刊少年サンデー』)でデビュー。その後『レモンピープル』『宇宙船』等の各誌に数篇の短編を発表したのち、1984年『プチアップルパイ』で「元祖宇宙家族カールビンソン」、翌年に『少年キャプテン』で「宇宙家族カールビンソン』の連載を開始した。2008年現在、『アフタヌーン』にて「るくるく」、『コミックガム』にて「荒野の蒸気娘」を連載中。スキンヘッドに髭という絵からは想像し難い風貌で、スラッシュメタルバンド、スレイヤーのギタリストケリー・キングに似ている。また、『えの素トリビュート』の寄稿漫画では榎本俊二に「郷介(「えの素」の主人公)だ!郷介だ!」と言われている。
宇宙作家クラブの会員で、無類のロケット好き。作家の笹本祐一らと共に『宇宙へのパスポート ロケット打ち上げ取材日記1999‐2001』に参加している。またロフトプラスワンのイベント「ロケットまつり」にも出演。
映画やアニメ、ファミコンソフトの評論家としても活躍。小説の挿絵に藤井青銅の『死人にシナチク』や、富永浩史『俺の足には鰓がある』がある。

新世紀エヴァンゲリオン』では制作側の人間であったのだが、SF雑誌編集者にしてトレッキーでもある岸川靖と組んで「EVANGELION補完委員会」なるものを立ち上げ、パロディー4コマ漫画集を上梓すると言った1ファン的な付き合いもしていた。
1988年2月号からアニメージュ誌上のOVAクロスレビューの審査に参加し、辛口なコメントを披露している。


今日のひと言:それにしても、インターネット(特にグーグル)の検索機能というのはスゴイものだと思います。片言隻句からでも、見つけたい言葉に行き着けるのですから。
エイ科の魚で、以前に食べたことのあるものの名前が解らず「魚 エイ 北海道」で調べたところ、そのものズバリ「カスベ」という名に行き着いたのです。これは大変美味しい食材です。




過去ログより、マンガ、アニメに触れた記事(抜粋)
ギャラクシー銀座
    http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080117
いじめ――ひとりぼっちの戦い――
    http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080317
 神社のススメ、フェティッシュ田中ユキ
    http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080401
もやしもん
    http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080421
静かなるドン
    http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080605
忍風カムイ外伝
   http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080913
MW
   http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080918
デスノート
   http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080923
バビル2世
     http://d.hatena.ne.jp/iirei./20090116
デビルマン
     http://d.hatena.ne.jp/iirei/20090121


宇宙家族カールビンソン (1) (講談社漫画文庫)

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小惑星に挑む

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