虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

サソリについて:「ファーブル昆虫記」を読む

 Jean Henri Fabre:ジャン・アンリ・ファーブル(1823−1915)ほど有名な生きもの作家はいないでしょう。(あ、シートンも有名ですね。)ただ子どもの頃に彼の著作「ファーブル昆虫記」に接さなければ、一生、昆虫とは無縁になるかもしれませんが、その内容はどんなものなのでしょうか?


 私は「サソリ(蠍)」(英語、フランス語でscorpion,ロシア語でскорпион)に縁のある星回りをしていますので、図書館に行き、「少年少女ファーブル昆虫記」(中村浩訳:あかね書房)第8巻をかりてきました。
 驚きました。ファーブルは、昆虫の生態、もちろんサソリの生態も、「自ら考察し、実験し、検証する」という態度で臨んでいます。既存の文献から引用するのではなく、すべて観察から、昆虫の生態を分析しています。ちょっと引用します。
 『わたしは、このパスツールにはげまされて、昆虫の本能についての研究ではいっさい白紙で考えることをおきてとしています。わたしは、本をすこししか読みません。他人にも相談しません。わたしはただ、相手に口をきかすまで、しんぼうづよく昆虫と向き合うだけです。私はなにも知ってはいません。それでいいのです。』(上掲書 128P)


サソリも例外ではなく、ファーブルは観察をし、実験をし、143Pにわたり記録しています。そこで知りえたサソリの秘密とは?(ファーブルの住んでいた南フランスでは、沢山サソリが生息しているので、実験、観察には向いていたのです。)


1) 婚礼期のオス、メスは派手なダンスパーティーを行うが、交尾後、オスはメスに食べられてしまうことが多いこと。メスのほうが大振りになるからか、SEXパートナーにそのまま食べられるのを良しとするからか?←究極のエクスタシー?まあ、元気な仔サソリを産むには必要なことかも知れません。オス丸ごと一匹食べつくすので、精も付くでしょう。(このような昆虫では他にカマキリが有名ですね。あ、サソリは昆虫ではないか。)
2) 3/4年、なにも食べずに生きていける(たとえば、一年間、春だけしか食べなくても死なないということですね。)
3) 殆んど全ての昆虫を毒殺できる。ただし、完全変態の蝶の幼虫にはサソリの毒に免疫があるものがいるらしい。なお、ムカデ、クモなどは昆虫ではないが、これも毒殺できる。だから、ほとんどすべての節足動物を殺せると言ってよい。
4) 住処は、瓦などの下に穴を掘って住む。
5)毒針は、当てずっぽうに刺すが、大体の昆虫にとっては、その一刺しが致命的なのです。



以上のような知識は、ファーブルの自然に対する畏敬の念から生まれているのだと思われます。



今日の詩



  サソリは。
  鳴かず。
  飛ばず。
  でも。
  地上最強の生きもの。
  占星術では。
 「飛ぶ鷲」と称えられる。

 

ジュニア版ファーブル昆虫記 4 サソリの決闘

ジュニア版ファーブル昆虫記 4 サソリの決闘