虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「野草を食べる・滋味(JIMI)!!」の記述より その2

  野草特集 その2
(5回に渡る野草特集です。なにぶん大方の人には地味なテーマなので、アップの間隔を短くします。3回目。)

耳よりコーナー(9)   私(森下)と野草  (30ページ)

 私は、大学入学時の志望学科は理学部数学科で、現実的な事象を忌み嫌う性向を持っていました。それがなんの因果か、工学部都市工学科に進学して、「環境問題のひとつの水問題」をテーマにするようになりました。専門が決まってからやっと環境問題について考えるという怠慢学生でした。しかし、水問題を研究するにつれ、この問題は「土の問題」と密接に関わることが判ってきました。そこで私は、茨城県にある某農家に援農に行くこととしました。なにはともあれ、農業を体験しなくてはなるまい、と決意したからです。そして、その圃場に着いたとき、「何で、ここにコスモスが植わっているんだろう?」と思いました。―― 実は、その植物は「ニンジン」だったのです。葉に切れ込みがあるという点では、確かに共通点はあるけれど、それだけのことです。なんともおそまつな知識でした。これが、植物と私のファースト・コンタクトです。まだまだ、野草とは出会ってもいませんでした。
 その後、その農家と縁のある八百屋でアルバイトなどをし、買い物をしに来る主婦たちに、レシピを教えられるようにもなりました。1年ほど働いて辞めたあと、私の関心は次第に野菜から野草に向かい、中でも「食べられる野草」に興味の中心が向かいました。あとは実践あるのみです。ガイド・ブックを片手に野草を見て回り、同定できた野草はすぐさま食卓に乗せました。
 もっとも、野菜への関心もなくならず、私が山暮らしをしていた時期も含め、断続的に畑を借りて耕作してきました。「金時草」とか「おかのり」、「エアーポテト」という野菜をご存知ですか?これらのマニアックな野菜も栽培しました。また、ハーブにも関心を持ち、日本で栽培可能なものはほとんど試しました。ほかにも、サボテンなどの多肉植物も多数栽培しています。まあ、「ニンジン」と「コスモス」の区別がつかなかったころとは大違いですね。
 いろいろ植物に関わるにつけ、やはり「野草」こそが植物との付き合いの基本であろう、と思う今日この頃です。「野菜」も「ハーブ」も、もとはと言えば「野草」から選別、特化したものなのですから。これからも、「野草」との付き合いは続くでしょう。楽しみ、です。
  
  注:多肉植物(サキュレント)とは、砂漠や高山など、水分の乏しい環境で発達した植物で、サボテン科が代表的。(マニアの間ではカクタスと呼ぶ。)ただ、丸い植物すべてがサボテン科ではなく、ほかの科の植物にも多肉植物の仲間は多い。だから、サボテン科は多肉植物の一種になる。

**「野草を食べる・滋味(JIMI)!!」は、ともすれば雑草とされて蔑まれ駆除されてしまうが、食用にすると、思いがけなくも美味しい野草を30種ほど取り上げ、特徴と調理法を解説した、私の近著です。2006年7月7日発行。毒草とか無用の草なども取り上げており、適宜「耳よりコーナー」として面白いトピックスも掲載してます。

今日の一言:いろいろ野菜を栽培していると、どうも私は南方系の野菜が好きなようです。金時草(水前寺菜)、エンサイ(空芯菜)、バイアム、シカクマメ、サトウキビ、マコモタケなどなど。なかでも金時草奄美原産で、酢の物が絶品です。ただし、これらの野菜、だいたいは野外では越冬できないんですね。そこいらが悩みの種です。