マザー・グース (Mother Goose):ハンプティ・ダンプティの闇(随想録―67)
マザー・グース (Mother Goose):ハンプティ・ダンプティの闇(随想録―67)
マザー・グースは、主にイギリスで歌い継がれてきた童謡集です。「主に」というのは、「砂男」という幾分不気味な歌がマザー・グースにはあり、これがモチーフの怖い同名小説を、ドイツの小説家:E.T.A.ホフマンが書いていて、ヨーロッパ圏での、文化の共有を感じます。マザー・グース、フランス語で「マ・メール・ロア」:モーリス・ラヴェルがバレエ組曲を書いていますが、彼らしく、駄曲です。
私は、大学生時代の初期に、マザー・グースに興味を持ち、楽譜付きの本を買い求め、リコーダーで演奏してみつつ、どんな曲があるか、探ったことがあります。まあ、私には音楽の才能はなく、リコーダーでなぞるのが精一杯でした。それでもあとで実際の曲を音源で聴いてみると、思ったとおりの曲だったのが救いです。
さて、以下に4曲挙げてみます。
@London Bridge Is Falling Down(ロンドン橋)
これは、「メリーさんの羊」と並び、イギリスの童謡で最も有名な曲でしょう。「ロンドン橋が落ちちゃった、さあ、愛しい貴女、どんな材料で橋を掛けようか?」、と問う歌です。粘土と木では流される、鉄では折れ曲る、銀と金では盗まれる・・・結局、有効な工法が見つからずに、歌は終わります。不条理ですね。
@Humpty Dumpty(ハンプティ・ダンプティ)
これぞ、マザー・グースの中のマザー・グース。塀の上に座っていた男―ハンプティ・ダンプティが落ちて壊れてしまい、王さまが何人来ても、馬が何頭来ても元には戻らなかった・・・この男は「卵」だったのです。なんというナンセンスさ!この人物は、「不思議の国のアリス」(ルイス・キャロル)にも登場するので、知っている人も多いでしょう。
@rock-a-bye baby(ロッカ・バイ・ベイビー)
子守唄なのですが、「赤ちゃんを危険に晒したいのではないか、このお母さん?」と聴ける部分がある、なんだか怖い印象を受ける曲でもあります。「木の枝にゆりかごを吊るしたら、枝が折れて、赤ちゃん真っ逆さま」なんて歌うのですから。
@Head Shoulders Knees And Toes (頭・肩・ひざ・つま先)
延々と、体の4か所が歌われる迷歌。まあ、単に子供に体の構造を教える歌かとも思いますが、深読みすれば、いわゆる「お医者さんごっこ」とか、言ってしまえばセックスの歌とも考えられます。メイク・ラブする男女の戯れの歌。「ここは、どーこ?」とか。
4曲ほど挙げましたが、イギリスの童謡は、奥が深いと思います。むかしの少女マンガ「パタリロ!」で、「♪誰が殺した、クック・ロビン」という物騒な歌が出てきますが、これもマザー・グースの一曲です。いろいろ聴いてみると、耳になじんだ曲も多くあります。
(2022.12.06)
今日の7句
詰まらない
家に変わるか
空地かな
(2022.12.03)
麦の子の
生えそろいたる
寒空や
(2022.12.03)
名の通り
くねりたるかな
蛇川や
(2022.12.03)
(2022.12.04)
ビワの花
この時期咲くとは
知らざりき
(2022.12.04)
生きたよう
リスの彫り物
躍動し
(2022.12.04)
狂気の木
狂気の家と
ツーショット
向こうに見えるのは、母が入院していた精神病院。手前は猛毒のキョウチクトウ。
(ただし、12月09日時点で、この木は伐採されていた。だからこの写真は、この木の遺影。)
(2022.12.04)