虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

地方移住の若者たち:今こそその好機。(随想録―68)

地方移住の若者たち:今こそその好機。(随想録―68)



会社のテレワークの昼休み、NHKを見ていたら「いいいじゅー!!」という帯番組を放送していた。私は、この番組自体は知っていたが、放送されるまま、ほとんど注意して見たことはなかった。だが、2022年11月28日、この日の放送は、マジに視聴した。


この日の主人公は、高給取りである外資経営コンサルタントをやっていた男性で、魚、漁業への思いを募らせ、漁村に一家ともども移住した。ただ、この人、その漁村に係累があったわけではない。コンサルらしく、日本の各漁港の漁獲量、漁師の年収などを丹念に調べ、それだけでなく漁港の航空写真まで参照したという。それはどうしてか、というと、漁港の防潮堤の良否、石油の貯留施設の有無、などを検討したのだと言う。貯留施設がないと、燃料を確保するために、いちいちタンクローリーのお世話にならなくてはならないので、不便だというわけだ。なるほど。


それらの調査の末、落下傘部隊のように選んだのが、鹿児島県の江口漁港になったということだ。見ず知らずの土地に、いきなり一家で移住するというのは、なかなかの決断力と言えよう。そして、肝腎の漁であるが、この人はもちろん年々漁獲量を上げているが、魚種と捕獲法などについて、統計学の「相関係数」を応用して、分析をする。これもコンサル時代の経験を生かしたものだ。


そして、私がぶっ飛んだのは、「新規の養殖」を漁協に提案したこと。それは「月日貝」・・・なにやらロマンティックなネーミングだが、その通り、実際貝殻は美しく、表と裏で日と月のように色が違う。むかしのアニメ「忍風カムイ外伝」で、漁村の娘が、主人公の抜忍・カムイに無邪気で可愛い愛の告白をした小道具が、この月日貝だった。(貝殻は、たとえ離れ離れになっても必ず一つになる、という・・・娘の願いは叶わなかったが。娘が一家ともども毒殺されて。)食べても美味しい、という。


月日貝



彼は、この貝の稚貝が、岸からどのくらいの距離、またどのくらいの深度でもっとも採取できるか調べ、一応の成果を得た。これをもって、漁協と事業を起こすか、と談話するあたりで放送は終わる。うん、頼もしい若者だ。受け身ではなく、主体的に状況に働きかけている。


私は20代の後半、群馬の山奥で暮らし、紙漉きの専門技術などを学んだが、人間関係に躓き、山を降りた。それにあの頃は、都会の者を受け入れる姿勢が、ホスト方の田舎に欠けていたと言える。残念。いまでは「バイトル」などでも田舎暮らしを推奨し、また実際に受け入れられやすい現状だ。先のない都会にうじうじ、しがみつかずに、山暮らし、海暮らしを敢行する好機だろう。

 (2022.12.07)






今日の7句


この寒さ
ナスタチウム
日当たりし



 (2022.12.04)



ルピナス
幼苗すでに
親の風



 (2022.12.05)



河原にて
実る黒い実
親はだれ



ワルナスビ?

 (2022.12.05)



マロウなり
ティーにする花
待ちどおし



マロウは、ハーブ。ティーの酸度で色が変わります。

 (2022.12.05)



ナズナ
時期は早くも
咲きにけり



 (2022.12.05)



霜なぶり
枯れる運命
ジャガイモか



 (2022.12.07)



名も知れぬ
草を彩る
降霜か



 (2022.12.07)