「ビンクスの酒」~「One piece」の挿入歌の楽天性(随想録―62)
「ビンクスの酒」~「One piece」の挿入歌の楽天性(随想録―62)
週刊少年ジャンプ最大のヒット作は、「ワンピース」と言って、間違いないでしょう。出版された単行本は、数億冊は売れているであろうし(正しくは日本国内で4億冊、海外で1億冊)作者の尾田栄一郎は、住民税のお得意様という意味で、地元自治体は、彼に引っ越してもらいたくはないでしょう。
かく言う私は、さほどこの作品は好きではなく、あるブロガーが「絵が嫌い」だと書いていたのを見て、なるほど、と納得したこともあります。確かに、このマンガの絵柄は、鳥山明のそれと違って、万人向きではありません。
ただ、近頃、Adoが歌うアニメの主題歌を聴いて、「これなら、良い」と思いました。ここで描かれるのは、驚くべき楽天性なのでした。「だれでもいつかは骨よ、あてなしあてなし、笑い話」と括るのです。死んで骨を晒すことなど、一向に気にかけていないような、生命力のパワー。「今こそ全て」と言った感じですね。この世界観には共感できます。墓のことなんか、考えてる暇などない。(実際、私も墓に入らぬ算段は出来ています。)なお、この主題歌、作詞は尾田栄一郎本人なのだそうです。
ビンクスの酒(Ado)
ただ、この楽天性は、アホウと紙一重です。以前たまたま読んでみたこのマンガの一節に、こういったお話しがありました。ある島で、2人の巨人が争い続けている場面に遭遇した主人公のルフィ、片方の巨人にインタヴューしたところ、「俺たちは戦い続けている、ずっとな」と答えました。さらにルフィが戦いの理由を訊いたところ、巨人は答えます。「理由など、とうに忘れた」、それを聞いたルフィは「でっけえ~~」と感嘆するのです。
平凡人から見ると、「戦いの原因」を忘れてしまったならば、仲直りして、平和に共存すればよかろうものを、と感じられるかも知れません。そうしない2人の巨人と、その有様に感動するルフィ。
この「ワンピース」という作品、まさしく奔放でありたい青少年の心を鷲つかみにして止まないのでしょう。その意味で、確かに、「ワンピース」は、青少年の支持を長年保ってきた「週刊少年ジャンプ」の申し子なのでしょう。
(2022.11.16)
今日の7句
遅けれど
山装うか
初冬かな
(2022.11.11)
紫・黄
ムラサキシキブの
装いか
(2022.11.11)
二番穂の
金色輝く
実りかな
(2022.11.13)
カラスウリ
真っ赤な実をば
付けにけり
(2022.11.13)
たわわ柿
人は食べずに
鳥食べる
(2022.11.13)
古樹木
ひっつき生えるや
サルノコシカケ
(2022.11.14)
配色の
良きや田んぼに
イチョウ落つ
自然の造形。
(2022.11.16)