「心なき身」の色気:西行法師の『山家集』
「心なき身」の色気:西行法師の『山家集』
@心なき 身にもあはれは 知られけり
鴫(しぎ)立つ沢の 秋の夕暮れ
この歌は西行(1118-1190)の代表作の一つである歌で、新古今和歌集に収録されています(秋)。そして表題の『山家集』は主に西行の歌を収録した私歌集です。
『山家集』(さんかしゅう)は、平安末期の歌僧西行法師の歌集。成立年は不詳、治承・寿永の乱(源平合戦)の最中か直後だと思われる。俊成・良経・慈円・定家・家隆ら5人の家集とともに六家集の一に数えられ、『山家和歌集』、『西行法師歌集』の別名がある。西行生前の撰を後人が増補したと見られ、西行の自撰なる『山家心中集』や、『西行上人集』との関連が注目される。自然と人生を詠い無常の世をいかに生きるかを問いかけている。
構成
上巻には四季の歌を、中巻は恋と雑、下巻には恋百十首・雪月花などの十題百首や、離別・羇旅・哀傷・釈教・神祇などの雑の歌を収める。歌数は約1560首だが、増補本ではそのほかに300首余を持つ。諸国を漂泊した隠遁者なる西行らしく、抒情性の高い花鳥風月の歌や、闊達な人生観に基づく述懐が多い。恋歌にも秀作はあるものの、題詠で作歌背景の判然とせぬものがほとんどである。
@なげけとて 月やは物を 思はする
かこち顔なる わが涙かな
この歌は百人一首86首目の採録歌です。(千載集にもみえる:恋)
こんなのもあります。
@つらくとも 逢はずばなにの 習(ならい)にか
身の程しらず 人を恨みん
恋の歌。もうひとつ
@五月雨(さみだれ)に 干すひまなくて もしほ草
煙もたてぬ 浦のあま人
これは夏の歌。塩を作るために海藻にたっぷり海水を含ませ、乾燥・焼きを行う海辺の人が雨続きで困っている様子を歌ったものです。(西行は「雨」についても詠むことが多いようです。)なお、「願わくば 花のしたにて 春死なむ その如月の 望月のころ」と詠んだ西行、願いは叶ったのですね。彼は72年の生涯を享受し、希望通りにこの世を辞したのです。
今日のひと言:西行は恋、および自然の風景、人の営みに一角ならぬ関心を持ち続けた出家僧だったと思います。ただ、西行の場合、「美」の狩人でありすぎ、魔境に迷う一人の旅人であったという感を持ちます。これは、宗教家というより芸術家と呼ぶことが妥当であると思えます。永遠の彷徨は終わらず・・・このような境地は、自由律俳句の種田山頭火にも見て取れます。
参考過去ログ http://d.hatena.ne.jp/iirei/20090804#1249366858
なお、今回は参考文献として『日本古典文学大系29 山家集 金槐和歌集:岩波書店』を参照しました。
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今日の一品
@レンコンの挟み焼き
弟作。小エビ、小麦粉、擂りレンコン、香辛料を混ぜあわせ、5㎜位に輪切りにしたレンコンで挟み、オリーブオイルで炒め、仕上げに塩少々。レンコンを2通りに使いました。
(2018.11.09)
@キクラゲの和え物
戻した乾燥キクラゲ(木耳)を茹でて冷やし、ポン酢、ゴマ油、ネギ、ユズで和えました。海藻のような風味。
(2018.11.10)
@赤貝(サルボウガイ)とキャベツのスープ
サルボウガイは赤貝と近縁な貝。今回は赤貝(実はサルボウガイ)の缶詰をタレもそのまま、茎を薄く輪切りにしたものとキャベツの葉ともども煮込みました。クコの実も加え、ローレル、オレガノで香りの調整。赤穂の甘塩で味付け。出来はまあまあかな。
(2018.11.12)
@金目鯛の頭の醤油味スープ
鯛で美味しいスープが出来るなら、と金目鯛の干物の頭で、スープにしました。干しシイタケ一個と頭をことこと煮て、臭い消しのため、ショウガを加え、醤油を投入。椀ではネギとユズの刻みものを足しました。鯛のスープ並みでした。
(2018.11.13)
今日の二句
冬来たり
スポーツ刈りの
河原かな
ほとんど河原・丸裸。
(2018.11.10)
菊花たち
寄り添い咲くや
集団美
(2018.11.10)