虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

ジョン・ダンの詩〜機知に富む戯れ歌(ざれうた)

大学の教養課程の英語の授業で、中世イギリスの詩人にジョン・ダンと言う人がいて、「蚤:ノミ」を始めいくつかのユニークな詩が伝わっていると聞いたことがあり、さてさてどんな詩人かと調べてみました。


17 世紀形而上詩を代表する詩人の一人ジョン・ダン(John Donne)に うた 「蚤(The Flea)」と題する小品がある。いわゆる〈口説き詩(persuasion poem)〉と呼ばれる類の詩だが,それにしても何故に蚤なのか。蚤は羨まし い(と詩人は歌う),思うがまま君の血を味わい,腹を膨らませ,腹の中で は君と僕の血が混ざり合って新しい命まで宿している,口説かれもしないの にそこまで許せる君なら,僕を受け入れることだってこの蚤のようなもの, ちっぽけなことではないか,というわけだ。


Mark but this flea, and mark in this,
How little that which thou deny’st me is;
Me it sucked first, and now sucks thee,
And in this flea, our two bloods mingled be;
Confess it, this cannot be said
A sin, or shame, or loss of maidenhead,
Yet this enjoys before it woo,
And pampered swells with one blood made of two,
And this, alas, is more than we would do.

http://kgur.kwansei.ac.jp/dspace/bitstream/10236/10109/1/55-8.PDF  より


・・・蚤(ノミ)を介して僕ら2人は繋がっている、だから一緒に寝ようよ、と女性に語りかけるちょっとHで洒落た詩になっていますね。これこそがジョン・ダン機知に満ちた詩です。私なりに訳してみます。(itの訳が極めて難しい)


蚤(ノミ)


この蚤に注意するな、中のものを注意してご覧
どんなに君が僕を否定しても
蚤は最初に僕に吸い付き次に君に吸い付く


蚤の中で2人の血は混じりあう
言えないことでも告白しろ
罪、恥、処女の喪失


それ(ノミ)が求婚する前に楽しもう
蚤は我々の血をほしいまま吸って
ああ、我々がやろうとしていることを超えている




注:誤訳もあるかも知れません。


次に「イギリス名詩選」(平井正徳 編:岩波文庫)から一編。原文は省略。

@死よ、驕るなかれ


死よ、驕るなかれ、たとえ連中がお前を強大で恐るべき者と
呼んだとしてもだ――お前はそんな者では全然ない。
お前が亡ぼしたと自惚れている相手にしても、
死んでなんかいない。――私だってお前を殺せはしないのだ。


お前とよく似た休息と眠りからでも、喜びが溢れ出ている。
とすれば、お前からはもっと多くの喜びが溢れ出るはずだ。
敬虔な人たちが喜んでお前と共に旅立つのも当然な話だ。
お前が肉体を休めてくれ、魂を解放してくれるからだ。


お前は、運命や偶然や王侯や絶望した人間のしがない奴隷、
そして、毒薬や戦争や病気のしがない同居人にすぎない。
眠るだけなら芥子の実や呪いに頼る手もある、――しかも、
お前の一撃よりも効目がある。だから威張るのはよすがいい。


ほんの束の間の仮眠から覚めれば、永遠の命がやってくる。
つまり死はなくなる。死よ、お前は死んでしまうのだ。

54P−57P


今日のひと言:ジョン・ダン(1572−1631)はシェイクスピア(1564−1616)と同時代人です。機知に富んだ詩を書いていますが、そうとう無頼な生活を送ったのち、イギリス国教会の聖職者となったそうです。それにしても、訳者の平井さんは、14行詩(ソネット)という詩形が4・4・3・3であることを知ってか知らずか、4・4・4・2としています。ちょっとばかり居心地が悪いですね。なお、シェイクスピアは、ソネットを得意とした詩人でもありました。




対訳 ジョン・ダン詩集―イギリス詩人選〈2〉 (岩波文庫)

対訳 ジョン・ダン詩集―イギリス詩人選〈2〉 (岩波文庫)

ジョン・ダンの修辞を読む

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ソネット集 (岩波文庫 赤 205-5)

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62のソネット+36 62 Sonnets+36 (集英社文庫)

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シェイクスピアのソネット (文春文庫)

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詩への架橋 (岩波新書 黄版 12)

詩への架橋 (岩波新書 黄版 12)





今日の一品


イカのゴロ煮



イカを輪切りにし、内臓と混ぜ合わせ、醤油とショウガと共に、水は最小限にしてとろ火で煮ました。イカは生で食べるのがもっとも美味しいと思いますが、鮮度が落ちると、ネチャネチャして急激に不味くなります。でも加熱すると不思議にも歯ごたえが良くなる食材です。

 (2018.01.19)



@モツと貝割れ大根炒め



市販、調理済みの豚のモツを、貝割れ大根、ミカンの皮(陳皮)と炒めました。

 (2018.01.20)



@鶏モモ肉の豆豉醤(とうちじゃん)焼き



弟作。モモ肉をケチャップ、豆豉醤に2、3時間漬け、オーブンレンジに入れて加熱しました。
豆豉は中国の味噌のような調味料。

 (2018、01.20)



@レンコンのマリネ



弟作。切って茹でたレンコンを、秘伝のマリネ液に漬けこみました。味がなじむと美味しい。

 (2018.01.21)



@カスベとルッコラ



通常の食材が思うように入手できなかったので、エイの仲間で軟骨がシコシコした食感のカスベ(これは合鴨パストラミの代わり)、春菊の代わりにハーブのルッコラを使って鍋にしました。その他、牡蠣、スケトウダラ、白菜、シラタキ、豆腐、シイタケなど。やはり鍋、最高!!

 (2018.01.22)





今日の一句


野焼きして
キリリ匂うや
煙舞う




冬の水田の風物詩。稲の切り株に火を放って焼きます。左手に見えるのは赤城山。この煙がこの山に靄(もや)を懸けます。(←嘘です)

 (2018.01.21)