虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

日本のマンガはなぜ発達したのか?:日本人がチャランポランだから。

以下はブログ友のcenecioさんと私(iirei)の漫画に関するやり取りです。


cenecio:森下さん、お伺いしたいのですが、日本で漫画という分野が発達したのはなぜでしょうか。
ギアさまと私からの質問です。よろしくお願いいたします。お時間のあるとき、明日でかまいませんので。


iirei:これは超・難しい質問です。私の過去ログでいえば、鳥獣戯画を取り上げたものがあり、
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20130703#1372822508
この絵巻は日本最古のマンガの一つ、と認知しています。このブログを書く際、高畑勲さんが「信貴山縁起絵巻」について「コマ割り」がはっきり見られ、この絵巻もマンガの先駆であるといわれた「日本のアニメーション」(だったか)という本も参考にしました。


鳥獣戯画に戻り、カエルとウサギの相撲のように有名なシーンとして、カエルの御本尊を拝む生臭サル坊主の絵でとくに顕著なのですが、ほかの国において宗教上の主神をまさかカエルに例える例はありますまい。


その辺はいまでも宗教がほんとに根付いていなくて日本的なのですが、ここで注目すべきはパロディの発想です。カエルとサルの組合せは、見事にパロディになっています。これらの絵巻が作られたのは、平安末期から鎌倉初期、「浄土思想」が日本を覆っていた宗教的背景があるのですが、日本人はチャランポランなのですね。浄土に憧れつつもおちゃらけをする。もちろん、西欧諸国にもラブレーがやったようなパロディはありましたが、日本ほどの無宗教的なチャランポランさはなかったのでしょうね。


このコメントだけでは今回の難しい質問には十全には答えられていないかと思います。またなにか思いついたら書きますね。


注:高畑氏の本、正式名称「十二世紀のアニメーション――国宝絵巻物に見る映画的、アニメ的なるもの」(徳間書店:1999)です。



cenecio:森下さん、おはようございます。
ゆうべのうちにお返事くださって、恐縮です。
高畑勲さんが「信貴山縁起絵巻」について「コマ割り」がはっきり見られ、この絵巻もマンガの先駆である
ここはおもしろいです。どうコマを割るかはマンガとBDでは大きな違いで、議論が熱中するテーマのひとつだそうです。
漫画のルーツについて自分でも調べてみようと思います。
ありがとうございました。


以上は、↓ で行ったやり取りです。

http://cenecio.hatenablog.com/entry/2016/10/19/152623



漫画の濫觴(らんしょう:源流の時期)をどこに取るのかで事情は変りますね。手塚治虫さんからだとするのが一般的な気もしますが、田河水泡さんの「のらくろ」からだという立場もあるでしょう。私の場合、平安期の鳥獣戯画信貴山縁起絵巻を源流にして論を立てたということです。


今日のひと言:なお、ストーリー漫画の代表格が手塚治虫さんだったのに対応し、ギャグ漫画の代表格が赤塚不二夫さんでした。(手塚賞赤塚賞という若手マンガ家の登竜門集英社により行われています。)この赤塚さん、極めて面白い作品、とくに「天才バカボン」について、マンガ家がチャランポランだったのではなく、読者がチャランポランだったのだと思います。ギャグ漫画の作者は、血の滲むような努力をして作品を描く者で、ストーリー漫画にはそれほどの緊張は必要ありません。実際、ギャグ漫画家の作者としての寿命は、ストーリー漫画家より短いですね。


赤塚さんは、天才バカボンの連載終了後は「B.C.アダム」という、聖書を「茶化す」漫画を連載していました。この作品はさほど人気はなかったと記憶していますが、むしろ赤塚さん自身のチャランポランさを示した作品かと思っています。




絵巻物に見る日本庶民生活誌 (中公新書 (605))

絵巻物に見る日本庶民生活誌 (中公新書 (605))

これでいいのだ―赤塚不二夫自叙伝 (文春文庫)

これでいいのだ―赤塚不二夫自叙伝 (文春文庫)




今日の一品


@鶏ムネ肉のアゴ出汁(だし)煮



弟作。アゴとはトビウオのこと。アゴの粉末スティックを使って、醤油とともに鶏ムネ肉を10分ほど煮込みました。なかなか良い味。

 (2017.03.25)



アゴ出汁汁(だしじる)



弟作。↑の煮汁を使ってすまし汁にしました。鶏の脂も出て、なかなかの味。

 (2017.03.25)



@ナスの味噌漬け



これは市販品です。「きんちゃく 美ーなす 味噌漬け」。新潟県新発田市の佐久間食品の製品です。一口、まるでウリのような食味。ナスという野菜の無限の可能性を見た思いです。美味。

 (2017.03.26)



@ゆかりモヤシ



弟作。一袋18円のモヤシと一袋100円のゆかり。茹でたモヤシにゆかりを適量振りかけ、一品。原価30円というところでしょうか。

 (2017.03.27)




今日の二句


明治期の
熱気伝える
電気ブラン



電気ブランは明治15年に、浅草の神谷バーが作った、ブランデーをベースにしたリキュールです。友人の浅草土産にもらいました。さほど甘くなく、大人の味です。

 (2017.03.27)



葉ボタンの
辛かるべき花
味わうか




散歩中、即興で詠もうとしましたが、なかなか難しく、机に向かって書き上げました。葉ボタンもアブラナ科の植物なので花にはピリッとした風味があるはずです。

 (2017.03.28)