NHK朝ドラ(NHK朝のテレビ小説)史上、最大の視聴率をあげたのが「おしん」。辛酸を舐め続けたありさまのエピソードとしては「ダイコン飯」がもっとも有名だろうと思います。確か、すりおろしてか、短冊切りにするかしてからダイコンでご飯を増量するお話だったと思います。脚本の橋田壽賀子は、貧しさを前面に押し出す小道具として、ダイコンを使っていますね。
ところで、そんなにダイコンとは価値のないものなのでしょうか?
この春私は、ある農家の畑で捨てられていた「聖護院ダイコン」を拾ってきました。まずはドロ洗いしたあと、葉っぱを切らずに部屋のなかに持っていきました。
それを見ていて思ったのですが「このまま乾燥させたらどうなるか」・・・ダイコンの根は水分貯蔵庫だから、葉っぱが必要とする水は根から吸い上げ、葉の部分で光合成が行われるのではないかと。そこで「魚干網(さかなぼしあみ)」にいれて徹底的に光合成をさせました。そして一ヶ月。ダイコンがカブトムシの位の大きさになったとき、(まだ葉の一部は緑色でしたが)取り込み、ふやかして煮付けにしてみました。甘い美味しい「たくあん」になっていました。光合成をするということは、デンプンができる・・・すなわち「主食」になりうることを発見しました。なお、正式のたくあん漬けでも葉を付けたまま干すようですから、私の実験にも意味があることを査証します。くれぐれも葉っぱをお忘れなく。「葉っぱつき」ダイコンにこそ大きな価値があるのですね。
こうなってくると、貯蔵根が発達した野菜なら、その水分をデンプンに変えられるでしょうから、カブ、ニンジン、ビーツでもOKということになるでしょう。カブでも試してみました。生のままでは味わえないワサビ風の辛さを味わえました。そのようにダイコンとかカブを使うのならば、イネはそれほど栽培しなくてもいいことになりますね。水分含有量の多い植物体には、主食になりうる能力があるのです。それを保証するのが植物の光合成能力です。水分を保持しているだけで、十分な価値があるのです。そして、しなびればしなびるほど、デンプンの生成量が多いことになります。植物は、畑から収穫しても、それ以後に変化するものがあり、その一つがダイコンです。土から切り離されることによって、自らの体の水分を使い、デンプン(炭水化物)を生成するようになるのです。
そこで、詩をひとつ。
たくあん
ダイコンを引き抜き 葉っぱつきで 日にあてる
そうするとダイコンの根の本体から 葉に水が供給され
空気中の二酸化炭素とで光合成が行われる。
それだけでデンプンができエネルギー源になる
「おしん」のダイコン飯も故なきことではい。
今日のひと言:「おしん」の「しん」は「おしんこ」の「しん」。
故・水上勉氏は彼の食に関するエッセイ集・「土を喰う日々」(新潮文庫)のなかで、「いつでもどこでもあるものほど貴重なものはない」と書いていますが、この言葉は「ダイコン」に捧げられています。
「土を喰う日々」については以下を参照してください。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20060113