虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

忘れてはイケナイ物語り・戦争童話集by野坂昭如

図書館から、このDVDを借りて視聴してみました。何組かあるシリーズ物ですが、私が借りてきたのは第2巻。野坂昭如(のさか・あきゆき)さんには、スタジオ・ジブリ高畑勲さんがアニメ化した「火垂るの墓」という衝撃作がありますが、このアニメ・・・いや、正確にいうと動画ではないので紙芝居ですが・・・も、そういったテイストが満載です。なお、絵を担当したのは黒田征太郎さんで、この種の作品には適任かと思われます。


「考えてみれば、戦後なんて一度もあったことがない。この地球の上はいつも戦中ではないでしょうか。このお話は今は昔の昭和20年8月15日のことですが、今もどこかで戦争がおこなわれている限り永遠に今のできごとでもあるのです。」このナレーションを基調にして、お話が展開されます。一巻につき3話のオムニバス形式の作品集で、それぞれ有名な方がナレーションを担当しています。発売元はNHKエンタープライズ21。


一話目は「青いオウムと痩せた男の子の話」(ナレーション:薬師丸ひろ子)。戦死した父親が、南方土産にもらってきた一羽のオウムと男の子の交流を描いた物語。空襲に備え、防空壕で暮らす男の子」とオウム。性別は解らないから「せっちゃん」と名付けられたオウム。戦争で、ひまわりの種まで、軍事用物資として供出を迫られた男の子、途方に暮れ、供出された種を盗むこともありました。でも、男の子本人も栄養失調で死んでいくのですが、オウムは「ダイジョウブ?」と男の子に語りかけ続けます。男の子の死後、オウムも餓死していきます・・・


二話目は「干からびた象と象使いの話」(ナレーション:藤村志保)。戦争で苦しくなり、動物園の動物たちを殺すという方針が決まり、猛獣から手始めに、その行為が実践されていきます。象も例外ではありませんでした。殺処分する前、「最後の晩餐」として、動物たちにたらふく食べさせてやり、(しかし餌のなかに睡眠薬を混ぜ)あとで絞首するという殺戮方針が採られましたが、一人の象使いだけは、その方針に異を唱え、彼は象とともに動物園をエスケープして、山中の元牧草地に、象使いの生活必需物資(食糧・調理器具などを含む)を持って「移住」します。象使いの地位を投げ捨てて。でも、そうした暮らしも1年持たず、象と象使いは、死んでいきます。


三話目は「赤とんぼと、あぶら虫」(ナレーション:寺尾聰)。少年の身で、特攻隊で死ぬことが運命つけられた男性、特攻に失敗して帰ってくることが多く、上官からは睨まれていますが、彼には「国を守る」という言葉の意味がよく腑に落ちないのですね。そこでこのコトバを「母を守る」と置き換えれば、解る気がするというのですね。・・・でも、このレトリックは詐術のような言葉です。さて、少年は、あぶら虫(より正確に、全国レベルで通用する言い回しで言うと:ゴキブリ)と親しくなり、特攻をやめて、南方の海で海水浴をするという選択をするに至ります。


どのお話も人間と生き物の共生関係の重要さを認識させてくれると共に、そのようなちょっとした接点も、問答無用に、政府・軍などの横槍によって壊されるというアンバランスさがスゴイと思いますね。痩せた少年とオウムのお話、いかに相互依存がつよい人間と動物でも、容赦しない社会が問題で、それは象と象使いのお話にも通底します。



今日のひと言:以前ビデオを買って観たアニメ「クロがいた夏」(中沢啓治:販売元:ジャパンホームビデオ株式会社)も、戦争中の悲しくも美しい物語でした。主人公の女の子は、カラスに襲われ殺されそうだった子猫を助け、家で飼うことになるのですが、クロ(毛皮がシロ・クロだったのでクロと名付けた)との楽しい交流の日々がしばし続きます・・・しかしそれは広島への原爆投下によってずたずたにされますが、クロは一命を賭して、主人である女の子を守るのですね。涙なしには見られません。なお、野坂さんは2015年末、逝去されました。故人のご冥福をお祈りします。今回のブログは、それ以前に書きあげていたものです。




忘れてはイケナイ物語り (光文社知恵の森文庫)

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クロがいた夏 [DVD]

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今日の料理



@鶏モモ肉のピリ辛炒め




弟作。入魂の一品です。切りそろえたモモ肉に塩、カイエンペパー、片栗粉をまぶしフライパン。一方別に犬の分け前としてとりわけ肉を茹でた汁を少々取り、ケチャップ、コチュジャン、輪切り唐辛子を加えて混ぜて加熱し、先ほどの肉に掛けました。

 (2016.01.04)



ガンモドキのホットドッグ風





お気に入りのガンモドキに、辛子やケチャップをかけて食べてみました。(だからホットドッグ風。)簡単だけど、美味しかったです。

 (2016.01.04)



@大根葉とかつお節の醤油炒め




むかし、東京で有機農法作物を扱う八百屋で働いていたとき、同僚の女性に教えてもらった大根葉の美味しい炒め物です。昨年に続き聖護院大根を栽培しているので、今回は全草採って来て、まずは葉の料理を作ったわけです。

 (2016.01.05)



@カレイの2乗ムニエル




弟作。以前メカジキでやったやり方で調理しました。カラスカレイにカレー粉と塩を振り、カタクリ粉をまぶしてオリーブオイルで焼きました。カレイとカレーでカレイの2乗。

 (2016.01.06)