虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

ホリエモンと星新一(SF作家):現代を見る目の深浅



ホリエモン星新一(SF作家):現代を見る目の深浅


AI特集その2


この2人、2つ共通点があります。1つ目は、両者とも東京大学に籍を置いたことがあること、もう1つは、現代のAI事情に一定の見解を持っている(た)ことです。(AI:Artificial Intelligence)


ホリエモン堀江貴文氏)は、現在でも知っている人は多いでしょう。東京大学文科3類中退。騒がれたのが14年まえ位(2005年)で、フジ産経グループと血みどろの日本放送争奪劇を演じてライブドアの名を有名にしたり、衆議院選挙に出馬して、広島の選挙区で亀井静香氏の牙城を脅かしたりと、大活躍でした。最後はライブドア粉飾決算が露呈し、逮捕、起訴の後、有罪判決を下され、塀の中に落ちました。こういう人を、世は「詐欺師」と言います。現在は出所して、「実業家」と名乗っていますね。なお、彼はこう言っていました:「東大は卒業することより入ることに意味がある。」


一方、星新一氏については『マイ国家』(新潮文庫)という文庫本の著者紹介に、以下のようにあります。

1926-1997

東京生れ。東京大学農学部卒。1957(昭和32)年、日本最初のSF同人誌「宇宙塵」の創刊に参画し、ショート・ショートという分野を開拓した。1001編を超す作品を生み出したSF作家の第一人者。SF以外にも父・星一や祖父・小金井良精とその時代を描いた伝記文学などを執筆している。著書に『ボッコちゃん』『悪魔のいる天国』『マイ国家』『ノックの音が』など多数。

星さんの場合は、農学部農芸化学科で、大学院まで進み、研究者の道を志向していましたが、父の死去に伴い、家業の星製薬の舵取りを担い、負債の返済のため辛酸を舐めた苦労人です。


さて、この2人の特性を比較するのに、打ってつけのショート・ショートが『マイ国家』に収録された『調整』です。ある男性、声を掛ければ、すぐ反応し、「プリンを作れ」と言えばすぐ作ってくるようなAI搭載ロボットを愛用していましたが(もちろん星さんの頃にはAIという表現はありませんでしたが、ロボットの行動をみる限り、立派なAI搭載のものです。)、あるとき当局から、このロボットの「調整」をやるから、一旦預かるとされました。


帰ってきたロボットには、異常がありました。命令を繰りかえさなければ、反応しなくなったのです。これはとんでもなく酷い調整だと思ったこの男、当局に連絡を取ります・・・帰ってきた回答は、ロボットは貴方に最適なようにされている、これ以上の調整はできない、なんだったら、貴方をロボットに合わせることもできますよ・・・と、人間の側を調整するという「空恐ろしい」事実
が明かされ、この小説は終わります。


さて、ホリエモンの論では、AI化が進むと会社の99%は要らなくなり、人は自由な活動ができるようになる、という超能天気な未来が待っていることになります。工場をAI搭載ロボットに明け渡したら、労働者がどうやってお金を稼げばよいか、についての考慮もされてないようです。駄文を綴って稼げる人は少数派でしょう。ホリエモンはこの小説でいえば、ロボットを愛用していた
頃のこの男と同じ意識レベルに留まっているのだと思います。現代を見る目は浅いです。一方、星さんの場合はAI化がもたらす恐怖を、AIが騒がれる数十年前から、見抜いていたと思われます。だからこんな小説も書けるのです。さすがのSF作家です。現代を見る目は深いです。



今日のひと言:もちろん、大学に入ることより大学を出ることのほうが重要です。ひと昔前なら、卒業は楽に出来るので遊んで暮らした大学生も多かったでしょうが、今の世の中ではどうなっているのでしょう。ホリエモン、最終学歴は「高卒」です。自分で大学を辞めたのですから、本来高卒扱いされても文句は言えないですね。このような人物のツイッターのフォロワーが200万人からいるというのは驚異的です。彼は「学問」というものを一片も理解していないし、その気もないのだろうと思われるのです。本物の学問は、ホリエモンが考えているほど甘くはないのです。



なお、宇宙大好き少年のホリエモンにふさわしい過去ログもあります。

https://iirei.hatenablog.com/entry/20180218/1518880753

 :宇宙旅行は出来るか?:それは無理。栗原康氏の視点




マイ国家 (新潮文庫)

マイ国家 (新潮文庫)

有限の生態学 (同時代ライブラリー)

有限の生態学 (同時代ライブラリー)





今日の一品


@蕎麦(そば)のゴマしゃぶたれ


f:id:iirei:20190302031005j:plain


蕎麦を茹でて蕎麦湯ごと丼に盛り、お椀に入れたごましゃぶ(エバラ製)にくぐらせ食べました。少々蕎麦の風味は削がれますが、まあまあの出来でした。なお、類似のたれには人工甘味料スクラロースが含まれていたので買いませんでした。

 (2019.02.28)



タラゴンさんま


f:id:iirei:20190302031042j:plain


サンマの塩焼き+アルファ:ハーブのタラゴン。キク科植物で、その独特な風味に比べられる香りはありません。焼く前にパラパラ振りました。

 (2019.02.28)



@在庫一掃・すぐき菜のマヨネーズ和え


f:id:iirei:20190302031122j:plain


生育不良だったプランター育ちの「すぐき菜」。茹でてとくに根に塩を振ったあと、全体をマヨネーズで和えました。筋っぽいが食べられます。

 (2019.03.01)





今日の一首


ジンチョウゲ
老舗和菓子屋
軒に咲く


香り・美味そう
周りに放つ



ただ、ジンチョウゲは毒草ですが・・・

 (2019.03.01)





今日の三句



半枯れの
梅に花咲く
徐か(しずか)なり


f:id:iirei:20190302031207j:plain


10年ほど前の大雪で、幹が折れた梅。

 (2019.02.24)



キリリとぞ
肌に食い込む
浅き春


凛とした空気。

 (2019.02.27)



ホトケノザ
ラベンダーのごと
咲き誇る


f:id:iirei:20190302031246j:plain


いずれもシソ科の植物。なお、このホトケノザ春の七草ホトケノザではなく、キク科のコオニタビラコが正式な七草です。

 (2019.02.28)