源実朝:しいたげられた鎌倉幕府3代将軍の私歌集
源実朝:しいたげられた鎌倉幕府3代将軍の私歌集
鎌倉幕府3代将軍、源実朝(みなもとのさねとも:1192-1219)は、姻族の北条氏に政治の実権を握られ、不遇でしたが、精神世界では歌人として優れた才能を発揮し、後世に残る歌人ぶりを残しました。私歌集として金槐和歌集(きんかいわかしゅう)が残されています。
@大海の 磯もとどろに よする波
われてくだけて裂けて散るかも
この歌は実朝の作の中では、もっとも有名なものかも知れません。高校の国語の教材になっていた記憶があります。海辺の波の「はかない生」を歌い上げた、細かな観察に基づいた歌なのでしょう。これは金槐和歌集の「雑」の巻に入っています。
また、百人一首では93番目の歌として、実朝の歌が挙げられています。
@世の中は つねにもがもな なぎさこぐ
あまの小舟の つなでかなしも
漁師の営みを目にし、このような平安な世が続けばいいな、との優しい視線が感じられます。この歌は新勅撰集に収録されていました。
金槐和歌集は3部構成で、卷の上(春部、夏部、秋部、冬部)、卷の中(恋の部)、卷の下(雑の部)で出来上がっています。自然に想いを仮託したイメージのある実朝、「恋」に関する歌も結構詠んでいたのも面白いです。
『金槐和歌集』(きんかいわかしゅう)は、鎌倉時代前期の源実朝の家集(歌集)。略称で『金槐集』とも呼ばれる。
成立は藤原定家より相伝の『万葉集』を贈られた建暦3年(1213年)12月18日頃とする説が有力。全一巻、663首(貞亨本では719首)掲載されている。『金槐和歌集』の「金」とは鎌の偏を表し、「槐」は槐門(大臣の唐名)を表しているため、別名鎌倉右大臣家集といわれている。但し、実朝の大納言(亜槐)や大臣(内大臣、右大臣)叙任は建保6年1218年である。
昭和4年(1929年)に佐佐木信綱によって発見された定家所伝本と、貞享4年(1687年)に版行された貞享本の2系統が伝えられている。前者は自撰・他撰(定家による撰)両説あるが未詳。後者も、奥書に「柳営亜槐」による改編とあるが、「柳営亜槐(征夷大将軍と大納言)」が誰であるかは諸説ある。江戸時代の国学者賀茂真淵に称賛されて以来『万葉調』の歌人ということになっている源実朝の家集であるが、実際は万葉調の歌は少ない。所収歌の多くは古今調・新古今調の本歌取りを主としている。
意外にも万葉調の和歌は少ない・・・そうなのでしたか。
恋の歌を二首。
@夜を寒み 鴨の羽がひに おく霜の
たとひ消ぬとも 色に出でめや
*霜の消長に恋のときめきを見ています。*
@葦鴨の 騒ぐ入り江の うき草の
うきてや物を おもひわたらむ
*うき草と恋によって「憂し(うし):ゆううつな」心のさまを描いています。*
鴨がらみの2首を挙げてみました。
今日のひと言:高校生のころは、実朝の「素朴」なテイストの和歌はさほど好きではありませんでしたが、今考えると実にしっくりくる名作が多かったのか、と思います。
参考にした文献は『日本古典文学大系29 山家集 金槐和歌集:岩波書店』
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参考過去ログ
今日の一品
@ターメリック・クミン入りパン
毎週週末に焼くミニパン。10cm×6cmくらい。今回はターメリック、クミンを練りこみ、カレーの色と香りを味わいました。
(2019.03.02)
@サワラの照り焼き
サワラを、醤油、砂糖、ショウガの汁に4時間ほど漬け込み、焼きました。風味は良い。
(2019.03.02)
@フキノトウの味噌和え
庭で30個弱、フキノトウが収穫できました。高いスーパーで買ったら3000円を超えるでしょ
う。草木灰の上澄みで煮込み、放冷して黒い汁を捨てて洗い、みじん切りにして味噌、砂糖、酢(少々)の合わせ調味料と和え、殺菌のためレンジで500w、4分加熱しました。
(2019.03.02)
@キャベツ・カレイの中骨の炒め煮
以前作った「白菜と中骨炒め煮」の発展形。「カレイの中骨」はキョクヨーの缶詰。鍋にごま油を敷き、ざく切りキャベツを炒めて少々水、塩を入れ、クミンシードを加え少々煮て中骨を投入、クコの実、ネギも加えてネギに火を通し、仕上げにハーブのオレガノを振って火から降ろします。
(2019.03.04)
今日の詩
この野草、食用ではなく毒もある。
それで農家には忌み嫌われ除草の対象になる。
だがこの草は美しい
幾何学的な形態をしている。
私はこの草を愛で、絶やしたくないので
昨年数株庭に移植した。
だが夏草が庭を覆うようになると
姿を消した。根付かなかったのか・・・
さて、本日庭を見ると植えたのとは違う場所で
数株、芽生えているではないか!
――おお、同志よ!
私は歓喜した。そして写真を撮った。
(2019.03.02)
今日の三句
主なき
家に紅梅
いまだ咲く
(2019.03.02)
小山なる
古墳の肩に
日の出(いづ)る
私の住む地域は、古墳が多いのです。左肩に日の出の兆し。
(2019.03.02)
カラス2羽
「うちゅう」佇む
電磁力
「うちゅう」は「雨中」と「宇宙」の掛詞。それに引かれて電線が電磁力に。
(2019.03.04)