虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

『九十歳。何がめでたい』(佐藤愛子):抱腹絶倒ではなく

1973年に、ポーラテレビドラマの一作として放映された『愛子』。当時中学1年生だった私は、たまにチャンネルをあわせて観てもよく内容が解らなかったですが、なんとなく軽快でユーモラスだったな、という印象を持ちました。このドラマは作者:佐藤愛子の自伝であったと言います。


さて、時は流れ、作者の佐藤さんも90歳の大台に乗り、今回の表題にあるエッセイ集を上梓したのですね。この表題は秀逸で、「どんなことが書いてあるか、面白そう」と本好きの人の好奇心を惹起するようで、私も図書館に借りに行ったとき、評判だから何人か分待つだろうな、と覚悟はしていったところ、「50人待ち」でした!・・・これはスゴイ、私は運よく順当に順番が回ってきましたが、私の後にも70人からの人が待っています。本は5冊あるとは言え、なかなか回ってこないほどの大人気。(2017.08.05時点)この本の大ヒットの理由はもちろんネーミングにあり、出版社編集部と佐藤さんの共同作業が効を奏したということですね。


経歴、人物をwikiより。

佐藤 愛子(さとう あいこ、1923年11月5日- )は大阪市生まれ・西宮市育ちの小説家。
小説家・佐藤紅緑と女優・三笠万里子の次女として出生。異母兄に詩人・サトウハチローと脚本家・劇作家の大垣肇。甲南高等女学校(現・甲南女子高等学校)卒業。
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人物
借金返済のためテレビ出演・全国講演を遂行して戦後の世相の乱れ等を厳しく批判するので父同様「憤怒の作家」と言われ「男性評論家」と呼ばれていた時期もある。小説のほかにも、身の回りの人物や事件をユーモラスに描いたエッセイを多数執筆。「娘と私」シリーズ等が知られている。
父紅緑をルーツに、自身も含めハチローら異母兄弟および子孫たちに伝わる「佐藤家の荒ぶる血」を纏めた大河小説『血脈』を十数年かけて執筆し話題になる。
近年は自身の心霊体験に基づく著作も多い。

いかにも才走り、この本も抱腹絶倒であるように思えますが、これも高齢の影響か、さほど目を見張るほどの仕上がりでないのが残念です。この本は短めのエッセイ29編が収められています。エッセイの題名と要約をいくつか書きます。


@「来るか?日本人総アホ時代」。文明の進歩についていけず、むしろ進歩が必要なのは人間のほうだと結ぶ。・・・月並み。


@「老いの夢」。友人と、夢は「ぽっくり」死ぬことと語り合う。


@「妄想作家」。直木賞を取ったときに見た月が満月だったと覚えていた、出版社の人が当日は三日月だったと論証したが、信じられない。


@「蜂のキモチ」。危険だと巣ごと駆除されるスズメ蜂のキモチを察する。


@「グチャグチャ飯」。飼うともなく迷い犬を飼い始め、「ご飯に味噌汁飯」ばかりイヌに食わせていたが、その死後、霊媒の人にそのイヌの死後の姿を見てもらったところ、あの飯がまた食いたいといっているのを知り、号泣。しんみりさせられる。


@「悔恨の記」。はやりの「断捨離」の真反対、物がすてられないおばあさんが、物品引き取り会社のバイヤーとコミュニケーションして、古本、万年筆などを買い上げてもらう。かれらが本当は金(きん)がお目当てだと知りつつ。


@「おしまいの言葉」。ほんとは作家生活を引退したはずなのに「女性セブン」から飛び込んできた仕事・・・この本のことですが、もう一度と、力を振り絞って書いたのがこの本であった。『九十歳。何がめでたい』:小学館  (2016年8月6日初版)




今日のひと言:佐藤さんの人生を見ると、日本の重大事の起こる年に縁がある人みたいです。誕生日が関東大震災直後、『九十歳。何がめでたい』出版が広島への原爆投下日。ただ、この本には、抱腹絶倒の油ぎった香りはありませんが、人をしんみりさせる要素があって、女性を中心に読まれているのも解る気がします。



九十歳。何がめでたい

九十歳。何がめでたい

ああ面白かったと言って死にたい―佐藤愛子の箴言集

ああ面白かったと言って死にたい―佐藤愛子の箴言集

サトウハチロー詩集 (ハルキ文庫)

サトウハチロー詩集 (ハルキ文庫)




今日の一品


@カスベ(カスペ)の煮付け


これまでも紹介してきたエイの仲間の魚。軟骨がコリコリの食感を持ちます。東北や北海道が主産地で、地元出身の人は「あれは下魚」と言っていましたが、美味しいのは美味しい。ショウガ薄切り、醤油、砂糖を鍋に入れ、カスベを適度に煮付けて、最後に山椒の粉を振りました。

 (2018.04.08)



@クコの新芽の卵とじ


春の野草料理でも、一際美味しい料理。ツクシの卵とじと味が良く似ています。実も含め、これまでも取り上げたことが何回かあるものです。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20170430#1493520916


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20150925#1443132745


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20091104


など。



コンフリー・クワの炒め物



庭のフレッシュなコンフリーとクワを取ってきて、仲よく炒め物。オリーブオイル、塩で簡素な味付け。私に取って美味しい「4K」植物があり、それは、クコ(kuko)、コンフリー(konfurii)、クワ(kuwa)、クズ(kuzu)です。なお、コンフリーについては有毒なピロリジジン・アルカロイドが含まれ、年中食べるべきではないですが、春のひと時食べるなら、大丈夫だと思います。

 (2018.04.09)



@ズッキーニしりしり



弟作。沖縄の人参しりしりをズッキーニでやってみました。マヨネーズ、香味ペースト(アジノモト・クックドゥ)、胡椒で味付け。繊細な味です。

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20180212#1518372923


 (2018.04.11)



ヤマトイモのマンゴードレッシング掛け



いまいち使い道のなかったマンゴードレッシング、短冊切りにして塩を振ったイモに掛け、案外美味しくできました。このドレッシングはキューピーの製品。

 (2018.04.12)





 
今日の詩


@腰痛と散歩


仕事の最中
起きた腰痛。
今日は休日
散歩さえ出来ぬ。


目に浮かぶは
道道の可愛い
被写体の植物たち。
私の生き甲斐なのだ。


早く治って欲しい!
来週こそは
散歩に行きたい。
野草フリークの私だから。


 (2018.04.08)





今日の二句


サクラ花
跡を継ぐなり
ハナミズキ




この場合は「アメリハナミズキ」のことです。サクラが散った直後、ピンクまじりの白花や赤い花を咲かせます。(もっともこの花は、色づいた顎です。)

 (2018.04.09)





吉か凶
飛行機雲の
筮竹



筮竹(ぜいちく)は、易占いの道具です。50本一組で占いますが、今回見たのは3本の飛行機雲で、これを筮竹に喩えました。

 (2018.04.10)