虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

中庸のメニュー〜究極でも至高でも不味くもなく

むかし、故・「中島らも」さんが面白いことを言っていました。誰がどう、いつ食べても「不味い」味の料理しかださないレストラン・食堂というものが実在し、そんな店はどのような手段、経緯で店が続けられるのか、研究の価値はあるだろうと。このような店を食べ歩く組織として、「全国まずいもの連盟」というのを立ち上げていました。(このお話、どの著作で読んだのかは思い出せませんでした。ただ、ネット上では有名な事実なので、それに追随することにします。出典を知っているかたは、教えてください。もっとも、この話題はwikiでも触れられていますが。)


確かに、もしそんなお店があったら、きわめて興味深いことです。ただ、私の実感では、大抵の店には、「得意」とするメニューがあることは言えると思います。私の近所にある大衆食堂の場合、ラーメン(中華そば)一杯300円、カレーライス一杯350円で、その昔ながらの素朴な味は、豚骨ラーメンや名店カレーに飽きた舌には、心地よく味わえます。そして、何より安い!!


さて、マンガ「美味しんぼ」の核になったのは、陶芸家&美食家の海原雄山と、その息子で、母が雄山の押し付ける無理難題のため早世したと考えている山岡士郎の確執でした。士郎は、伝統ある老舗新聞社・東西新聞(モデルは朝日新聞ぽい)の社員で、未来に渡って伝えられるべき料理を集積する仕事・・・「究極のメニュー」の担当を、新入社員で後に士郎の妻になる栗田ゆう子とともに引き受けさせられます。東西新聞の社運を賭けた企画です。


一方、かなり無理やりに販売部数を伸ばし、東西新聞のライバル新聞社である帝都新聞(モデルは讀賣新聞ぽい)も負けじと食に関する企画を立案して、その企画「至高のメニュー」の編纂者に海原雄山を起用するのです。


ここに、2大新聞社の権勢争いの「代理戦争」として親子の熾烈なグルメ合戦はスタートしました。もっとも、「美味しんぼ」自体は、2人の、妻=母を巡る抗争が、コミック102巻で完結して、最近は福島第一原発事故をめぐる食の問題などを取り上げながら話を展開していたようです。(「ようです」というのは、私は読んでいないから)


ただ、究極のメニューにせよ、至高のメニューにせよ、あまりに高度にソフィスティケートされていて、一般人が調理して楽しむにはとっつきにくい気がするのです。料理に向う姿勢に無理がある、ということです。


ある意味、「中途半端な」メニューのほうがよほど役にたつとも思います。完全さを目指すのではなく、お手軽に、また2、3品食材が欠けてもできる料理。ただ、中途半端と書くとちょっと誤解されそうなので、「中庸(ちゅうよう)のメニュー」としたらどうか、と思います。


――何事もやり過ぎは良くありません。「きわめて美味しい」料理も、「きわめて不味い」料理も、その意味で淘汰されていくのでしょう。「中庸のメニュー」というのは、そんな極端なメニューではなく、安心できる食材の入手・偏らない栄養価などを考慮して決められるものかと思います。要は、食べたい料理を、味の完璧さなどを求めずに作ってもらうか、作るかなどして、大切に食べる、この辺りに話は落ち着きますね。



今日のひと言:それにしれも、「らも」さんが「これは不味い!」と「舌鼓を打った」のはどんな料理だったのでしょうか?もはやこの世の人でない「らも」さんから聞き出すことは無理ですが、是非とも知りたいものです。




美味しんぼに関する過去ログの一例:


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20060115

  :潮風の贈り物 起死回生の食材


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080110

  :フグの白子はタラの白子より美味いか?・・・「美味しんぼ」への挽歌


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20140529#1401301869

  : ツンデレ大王・海原雄山〜「美味しんぼ」における父親像



超老伝―カポエラをする人 (角川文庫)

超老伝―カポエラをする人 (角川文庫)

美味しんぼ (76) (ビッグコミックス)

美味しんぼ (76) (ビッグコミックス)



今日の料理


@ブリのタルタルソース掛け





弟作。ブリの切り身をフライパンで焼き、市販のタルタルソースを掛けました。

 (2015.09.25)



@牛丼




弟作。ジャンクフードとも言われて久しいけど、牛肉と玉ねぎを使って美味しい料理をつくれる一例ではないでしょうか。まず牛肉と玉ねぎを炒めて馴染ませ、醤油+砂糖+ショウガで煮込んで出来上がり。好みで七味唐辛子。

 (2015.09.26)



@豚軟骨の角煮風





生協で、破格の安さで販売されていた豚軟骨。(300gくらいで150円。)これを冷凍保存している角煮のタレで45分くらい茹で(シャトル・シェフ)、以後保温して味をしみこませました。シコシコしていて美味です。

 (2015.09.27)



@里芋と人参のコンソメスープ





芋煮会で料理される里芋は、おおむね味噌仕立てですが、今回私は洋風のコンソメ風にしてみました。人参をゴマ油で炒め、水を加えてあらかじめ茹でこぼした里芋を入れ、塩、コンソメ2個、ローリエで味付け。美味しかったですね。洋風に徹するなら、ゴマ油よりオリーブオイルのほうが適していたかもしれません。ただ、ゴマ油を使いたかったので・・・

 (2015.09.27)




今日の一句




コンビニ屋
職業変えて
ヒエ農家


最近新装オープンしたコンビニ、植え込みに何かの木を「密植して」生やしていましたが、現在稗(ヒエ)がのさばっています。密植するのも後々大変ですが、ヒエがこの木たちを「間引いて」くれるのかも知れないですね。

 (2015.09.29)