虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

有毒なハーブとの付き合いかた


→「ラムズイヤー・シーズ」の種袋

 貴方は、ハーブが好きですか?それなら、タンジーヘンルーダルー)などはご存知ですか?これらは、毒性が近代医学によって証明され、今はあまり使われなくなったハーブです。


 また、緑色の「魔酒」アプサンに配合されていたワームウッド(にがよもぎ:ロシア語で「チェルノブイリ」)も、その口です。それにはツジョン(ツヨン)という毒成分が含まれていました。そして、そのツジョンはハーブの王様「セージ」にも含まれていて、薬用にティーを飲む際にも、2週間飲んだら2週間は飲むな、と言われます。


 このセージも、いずれは毒入りと言う宣言を近代医学からもらうかも知れません。でも、私は栽培し続けるでしょうね。


そしてタンジーはキク科の植物で、ヘンルーダはミカン科の植物です。それぞれの毒成分の内容をみてみましょう。


 「タンジー」の場合の毒成分はピロリジジンアルカロイドで、
植物毒の主成分といわれるアルカロイドは、植物が動物から身を守るために働く物質といわれています。
ピロリジジンアルカロイドは分子構造では含窒素五員環に分類されます。
5000種以上が存在するといわれるアルカロイドの中でも、ピロリジジン環をもつアルカロイドは、数百種類を越える植物から分離されているありふれたアルカロイドです。特にムラサキ科(Boraginaceae)、キク科(Compositae)、マメ科(Leguminosae )の植物に多く存在します。
ピロリジジンアルカロイドは路傍や原野で、繁殖力の強い雑草として一般的な、キク科のタンジー(common tansy)(Tanacetum vulgare)と、ラグワート(tansy ragwort)(Senecio jacobaea)に含有されていることが著名です。羊や牛など家畜の食中毒で、最も多い原因が、タンジーとラグワートの摂食です。

http://www.botanical.jp/lib_id1-040614133806.phpより。
(「ピロリジジンアルカロイド」に仮名遣いを統一しました。)


フキタンポポ、ワラビ、コンフリーなどにも含まれます。私はコンフリーは春先に収穫して旬のものとして年2回ほど食べます。


一方のヘンルーダについては
http://www.naoru.com/kousennkabin.htm

を見てみると、フロクマリンという物質が

*以下の植物に含有。
1.イチジク Ficus carica
2.ヘンルーダ Ruta gravelens
3.セイヨウノコギリソウ Achillea millefolium
4.セリ科シシウド(Andelaca属)
5.Ammi属。
*[プソラレン]や[ベルガプテン][キサントトキシン]などのフロクマリンは皮膚表面に塗布し、光を照射すると、皮膚表面に紅斑を生じ、色素の沈着を生ぜしめる作用がある。実際にヒツジなどがフロクマリンを含有する牧草によって中毒し皮膚炎、かゆみ、湿疹、腫瘍、壊疽などを伴う症状を示した例がある。(光過敏症)


どうですか、怖くなりましたか?でも、このハーブたち、薬効もまた大きいのです。
タンジーの場合、打撲傷、リューマチ、捻挫の対し、浸出液で洗浄する、虫よけ(果樹のちかくに植えれば害虫がよりつかない)また、葉をいろいろな料理に使った(シチュー、ソーセージ、ミートパイ、オムレツの香り付けにも用いた。妊婦には禁忌。


ヘンルーダの場合、ティーは通経、食欲増進、発汗、胆汁分泌作用があり、湿布にくわえると傷、潰瘍に利く。料理としては、クリームチーズ、卵、魚料理の際、一風変わったジャコウの風味を楽しめる。スモモやワインと一緒にミートソースに混ぜることもある。ただ、これも妊婦の使用は禁忌。


↑「ハーブ図鑑110」(レスリー・ブレンネス:日本ヴォーグ社)2300円より(タンジーヘンルーダの写真も)。


今日のひと言:ある植物が有毒だと解ったとして、ムゲに避けるのはいかがなものか。ホメオパシー的な見方からすると、毒にも使い道があるのですがね。たとえばタバコ、これもホメオパシーの使用アイテムなのです。ちなみに、私は過去タンジーヘンルーダも栽培していて、食べていました。(今は栽培していませんが、この春からまたヘンルーダは栽培しようと考え、ハーブの種専門店・「ラムズ・イヤー・シーズ」から種を購入しました。)なお、私の友人は、特にハーブに詳しくないのに、ヘンルーダを知っていました。それは、彼の幼年期、昆虫マニアであったので、アゲハ蝶のエサになるミカン科のヘンルーダを教えてもらったからだそうです。


関係過去ログ: ホメオパシーはほんとに効くか?
  http://d.hatena.ne.jp/iirei/20101013


ハーブを取り上げた過去ログ

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20051215 ナスタチウム

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20051227  セージ

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20060110  タイム

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080506 グッド・キング・ヘンリー

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080928 ホアハウンド

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20090219 ネトル




今日の一句


虫歯だけ
四本並ぶ
原発



もちろん、「福島第一原発」について詠んだ句です。この際、与謝蕪村の句「さみだれや 大河を前に 家二軒」という句を連想しました。なお、ウラは取れていませんが、「ヒマワリには土壌中の放射性物質を吸着する能力がある」とのこと。(2011.03.24)


広田セイ子のNewハーブブック―栽培・利用法・ハーブ図鑑

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