三種の神器の象徴的意味:私は左翼でも右翼でもないです。
日本の戦後の急速な経済成長、その際に、生活に大いに役立つ家電製品などを「三種の神器」といったように形容されたこともあり(冷蔵庫、洗濯機、掃除機など)、この言葉は日本人の慣れ親しんだ言葉なのでしょう。
その「三種の神器」、私は象徴的な意味を考えたことがあります。「鏡、剣、玉」の三種について「鏡」は生物学上の雌(♀)で、この記号は「鏡を持つ者」と言った意味があります。「剣」は生物学上の雄(♂)で、「槍:より広く鋭い武器・・・を持つ者」と言った意味です。そうすると、「♀、♂」の記号は「鏡を持つ雌、槍を持つ雄」と言うことから、それぞれ神器の鏡、神器の剣ということになると思います。そうすると「玉」はその両者の交わりの結果生まれる赤子のことを意味するように思えます。
今回は、その考察がどれほど正しいか、「三種の神器 <玉・鏡・剣>が示す天皇の起源」(戸矢学:河出書房新社・2012年初版)を読んでみました。戸矢さんは1953年、埼玉県生まれ、國學院大学文学部神道学科卒です。まあ、神社や皇室のスペシャリストなのですね。
読んでみると、三種の神器、それぞれ由来にはまがましいものがあるようです。神器が所有者の天皇に祟る(たたる)という事例があり、神器の1つ、本物の八咫鏡(やたのかがみ)は日本神話の主神・アマテラスオオミカミから天孫に与えられた「依り代」で、伊勢神宮に安置させられ、天皇のもとには分身(つまりはレプリカ)が残されます。この決断は崇神天皇が行い、また、草薙剣(くさなぎのつるぎ)も同様に、本物の剣は熱田神宮に安置され、分身が天皇のもとに残されるそうです。この決断は天武天皇が行いました。いずれも、祟りを恐れ、伊勢神宮とか熱田神宮に「里子に出される」わけです。八坂瓊曲玉(やさかにのまがたま)ないし八尺勾玉(やさかのまがたま)のみ、天皇が携行する宝ものだというのですね。あとの2つはレプリカとして携行するのですね。
だから、源平の合戦の終幕で、安徳天皇が乳母とともに海に身を投げ、三種の神器のうち、草薙剣が失われたといっても、皇室は特に困らなかったのですね。なんと言ってもレプリカだから。
以下、皇室とそれに抗して負けた政治勢力の衝突の結果、三種の神器が「増える」という現象が語られます。一つには、天孫。ニニギにさきだち地上に舞い降りたニギハヤヒが、政治権力をニニギに譲るという逸話。現在の皇室は、弟ニニギの血統であること。また権力移譲に際して「十種神宝」も譲られます。
また、草薙の剣はスサノオノミコトのヤマタノオロチ退治にあたり、退治されたオロチの尾部から取り出された刀剣とされていますが、元は天叢雲剣(あまのくさむらのつるぎ)といいました。この銅製の剣は代々、出雲系の勢力の間で保管されていて、いわゆる「オオクニヌシの国譲り」で、出雲系が皇室に完敗したとき、やはり皇室の宝の1つになります。また、スサノオがオロチを退治した時使った刀剣・スサノオの依り代で鉄製の十握剣(とつかのつるぎ)こそ宝に相応しいのではないか、という説も披露しています。同時期にいろいろな刀剣が出現するために、この本の記述も大変複雑になっていますが、私はおおむねのアウトラインを示すに留めます。ただ、草薙の剣と天叢雲剣は、かならずしも同じものではない、という記述もあります。いくつかの刀剣をまとめて宝と言っているようですね。
以上、見てきたように、皇室=天皇が被征服勢力の祟りをなだめるため、おおいに祭るというわけですね。出雲の場合にも、「敗者の剣・草薙の剣」も神器に取り込んでいるのです。このような風習は、その後も続きます・・・菅原道真を祭る天満宮のように。
残った「勾玉:まがたま」ないし「曲玉」について。この宝物は、ちょうど中国の陰陽五行論や易経のマークのように、頭と内側に伸ばされた尻尾で出来る記号です。これは、月を表象されると書かれています。鏡が太陽だとすれば勾玉は月だというのですね。・・・これはこれで解り易い比喩です。
一方、某男性と不義密通をしていると讒言された、伊勢の斎宮、祭っていた八咫鏡を前にして、自殺してしまいますが、あとで彼女の腹を割いたところ、胎児のように勾玉が出てきたそうです。・・・この事例は、私の仮説・・・勾玉は「子」を表わすという見解に有利な事実です。( P125−P129)
今日のひと言:この本の場合、「鏡を♀になぞらえる」といったような象徴的解釈ではなく、古資料を渉猟されているようで、年代ごとに「三種の神器」の変遷を記述することを主眼にしたものでした。
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奪われた「三種の神器」-皇位継承の中世史 (講談社現代新書)
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今日の料理
@フローレンス・フェンネルの香り酢
この春から庭で栽培していた、一年草で茎の根元が膨れるフェンネルの一種、フローレンス・フェンネルが長雨の影響でか、腐り始めてきたので、比較的まともな株を取ってきて、茎を酢に漬けました。当初は、茎も食べるつもりでしたが、ダメなようです。なお、葉は吊るして陰干しにしました。
(2015.07.08)
@ゼンマイとナスタチウムの和え物
大安売りの「ゼンマイ」を買ってきたので、これをゴマ油で炒め、ヤマサ昆布の汁とコチュジャンで味付けし、冷えたところでナスタチウムの葉と花を加え、和え物にしました。(この時期、植物には「ナメクジ」がついていることが多いので、念入りにチェックしました。
(2015.07.08)
@ヤマブシタケをトッピングした鶏むね肉
弟作。変わった姿のヤマブシタケを買ってきたので、茹でた鶏肉のうえに、茹でたヤマブシタケとオイスターソース、マヨネーズを混ぜたものを乗せました。
(2015.07.08)
@明日葉の白和え
弟作。アシタバ(明日葉)伊豆諸島原産で、植物にしては珍しくビタミンB12を含むセリ科植物。それを茹でて、豆腐を主とした調味料で和えました。
(2015.07.09)