以下の長文は群馬県太田市市長・清水聖義(しみず・まさよし)氏がその著「地方の一分」で展開していたもので、彼の運営するブログからコピペしたものです。
http://blog.goo.ne.jp/shimizu_ota/m/200711/1
法人2税の再配分はいらない。地方交付税の復元が急務
2007年11月15日 | Weblog
「ヨラッセ」第三セクターでつくった、太田ブランド店である。だが、黒字だ。
昨日から3日間、「おおたローカルアカデミー」という市や町の職員が集まって研修を行っている。研修後の懇親会があった。北海道から熊本まで30の自治体を超える中堅職員が集まった。こんなに集まってディスカッションする研修というのはめずらしいのではないか。7回目になる。
同じ日に「全国知事会」が開かれたようだ。
そこで「法人2税、法人事業税と法人市民税」とを国税にして消費税の1%を地方に分配することが話題になったようだ。別に、知事会の話を聞いてしゃべったわけではないがこの税シフトが地方の財源を豊かにするわけではない」とみんなに話をした。
テレビで見る限り、東京都や愛知県など法人事業税を多額にもらっている自治体は猛反対のようで、東国原宮崎県知事は賛成のようだ。
私は21世紀臨調の決議「法人2税の再配分は(税の)国の吸い上げ。地方交付税の復元こそ地方復活の道」という話をした。
三位一体改革が改革ではなかった。猫だましのようなものだった。結果として残ったのは地方への大幅な地方交付税削減、1兆7千億円の削減だったという説もある。この法人2税の再配分は東国原知事だって錯覚する。国に集中する財源を再配分して宮崎など三位一体で減らされた財源を元に戻すという、自民党の「地方思いやり政策」という錯覚である。
格差是正規模を1兆円と仮定する。実際にはもっと多くなるようだ。
財務省案では再配分した結果、地方には8,651億円、国に吸い上げられるのは1,349億円。国がもうかるシステムである。
総務省も案をだしている。地方に消費税を割り増しする案だ。これも地方に8,953億円、国に1,047億円という配分で国がもうかることになる。
東京や愛知など富裕団体からお金の引き剥がしをすることに、程度の差はあれ貧乏な団体は賛成する。しかし、その再配分の段階で国がお金を抜き取るという行為を白日のなかでやってしまう。地方から吸い上げる税の1割を超える額になる。
これは国の横暴としか言いようがない。
三位一体改革で地方は懲りている。良くなると思ったら地方交付税を大幅に削減された。「もうこの手には乗らない」というのが21世紀臨調の仲間の総意である。
地方交付税というのは地方の固有の財源である。ここに手を突っ込まれ、頼りにしている税源を抜き出されていくことはもうごめんだ。
「法人2税の再配分は国への再配分であり、地方への再配分ではない」のである。
臨時財政対策債という赤字地方債を発行している。地方の借金だ。太田市でも積もり積もって200億円になってしまった。この借金はもともと地方交付税として国が太田市にしはらうべきものだ。「国が借金するかわりに、地方で借金しておいてくれ」といわれて借金せざるをえなかった。
道路をつくるわけでもない、学校をつくるわけでもない。なのに借金させられてきた。
元に戻して欲しい。赤字地方債を返済するだけでも地方はたいへんだ。市民にも言い訳ができない。
小手先のやり方で地方を黙らせる「法人2税の再配分」はまやかしである。
地方交付税の復元を早期にして、赤字地方債を発行させないことが地方分権の推進につながる。
地方はだまされてはいけない。
小泉純一郎=竹中平蔵コンビが推進した「三位一体の改革」には、清水氏のように怨嗟(えんさ:恨みの声)を挙げる地方自治体の現状があるのでしょう。「地方分権」と鳴りもの入りでぶち上げた構想も、実は地方からお金を収奪する仕組みであったわけですね。・・・
>「三位一体改革が改革ではなかった。猫だましのようなものだった。結果として残ったのは地方への大幅な地方交付税削減、1兆7千億円の削減だったという説もある。」
何ともやりきれない、小泉=竹中の詐術ではないでしょうか。サイテーのコンビだったのですね。
>「格差是正規模を1兆円と仮定する。実際にはもっと多くなるようだ。
財務省案では再配分した結果、地方には8,651億円、国に吸い上げられるのは1,349億円。国がもうかるシステムである。」
なにをかいわんや。
小泉が衆議院を解散してまで成立を図った「郵政民営化法案」も、実際のところ、日本国民のピュアーな資産を、アメリカの保険会社や銀行に渡すということでしかないと思われます。利益を受けるのは、決して国民ではなく、竹中や、彼を使嗾(しそう:駆使する)するアメリカの企業なのです。
今日のひと言:今回のブログは、清水氏のご意見を引用し、ちょっとコメントをいれる程度のものでしたが、実際現職の自治体首長の「叫び」として、読まれる価値があるかと思い、全文引用したわけです。特に、「三位一体の改革」の虚妄を鋭く突いているかと思います。なお、清水聖義氏は慶応大学商学部でマーケティング論を学び、それを市政に生かしている点、よく「アイディア市長」と呼ばれます。また、全授業を英語で行う「ぐんま国際アカデミー:GKA」の設立でも顕著な業績を残しています・・・(もっとも、私は英語の早期教育には懐疑的ですが)
過去ログ:なぜ英語を学ぶの?早期英語教育http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070301
清水氏は、県議を務めた後、当時の太田市長が過大な庁舎建築プランを持っていたのに噛みつき、市長を破り、庁舎の規模も小さくして数十億円を浮かせたとのことです。その前市長は「21世紀に臨むため」、21階建の庁舎を構想していたとか・・・なにを考えていたのやら。それから清水氏は通算5期、太田市長を務めています。(うち一回は市町村合併による新市の長を決める選挙の当選によります。
今日の一句
群狼の
うずくまるかや
木の根っこ
近くの畑で、木の根を掘り起しそのまま置いてあるのを見て。その恰好を群れる狼に例えました。家人の意見ではダチョウに見えるとのこと。(2011.03.01)
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