『小さい農業で稼ぐコツ』(書評):スモールメリットはあるか
私には抜きがたく農家になりたいと言う欲求がありますが、その願望を一つの類型において実現した人の作品です。西田栄喜さん、農文協:2016初版です。
この方は、バーテンダーを皮切りに、ホテルマンを勤めたあと起農し、30aの狭い農地を耕し、一年で租収入1200万円、実質600万円の収入を得て、農業はうまく行っているという、なかなかのコスト・パフォーマンスを実現しています。その際の工夫の数々が惜しみもなく開陳されています。(現場は石川県風来地区)
多様なコツが開陳されていますが、そのどれもがこれから起農しようとする人に、どのコツでも使えるとは思いませんが、比較的出来うるコツをいくつかピックアップしてみようと思います。
@作物の「待遇」。通常の農家は、たとえばキャベツを収穫したあとには見向きもせず、耕すでしょうが、西田さんは、ヒコバエ(幹を切り取ったあと生える新たな幹)を伸ばしてもう一度収穫します。
@野菜はセットで売る。6、7種類の野菜を季節ごとに選び、スタンド、通販などで販売。案外この売り方は、消費者の評判も良い。
@漬物・お菓子などの加工品を積極的に作る。田畑で収穫する農産物を無駄に腐らせないメリットと、手間を掛けた漬物の付加価値で儲けるというメリットがある。なお、こういった業務に支障を来たさぬため、保健所でレクチャーを受けて免許を取っておくとよい。
@インターネットを積極的に活用する。顧客が増えて、経営に大きなメリットがある。特に「クラウドファンディング」という機能は役に立つとのこと。
不特定多数の人がインターネット経由などで「志」ある事業や組織に共感した場合に財源の提供を行なうことを指し、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語です。
本書 113P
なお、ホームページ、ブログ、SNSにはそれぞれの特徴があるので、うまく使い分けることを提唱しています。
@スモールメリットについて。日本の下水道の分野では、古くから、大きな施設を作ったほうが割安になるという「信仰」(スケールメリット)がありましたが、これは環境リスク論の中西準子さんが東大の助手の時代に否定されています。農業の分野でも、たぶんスケールメリットはなく、むしろ西田さんの言われるスモールメリット(小規模である農家が享受する利益)はあると思います。
以後はしょうしょう気になった点。
@野菜の栽培法、とくに肥料・農薬の使い方などには触れられていません。狭い耕作面積で、土を常に酷使することになるでしょうから、土に大きすぎる負荷が掛からないかどうか。
@一日のスケジュールが公開されていますが、たとえ小規模の農家であっても、遊ぶ時間はあまりないように思えます。この辺、生きていくのは誰しも辛いことです。
@30aという農地の規模について。1a=10×10=100m^2
だから30a=3000m^2。昔から5反百姓といって、5反もあればやっていけるとされていて、1反=10aであり、5反=50a。こう見ると、西田さんの田畑はさほど狭くない。
今日のひと言:言葉の使い方に変遷というか変化があるのだな、と思いました。私が若い頃は農業に人生経験を積んだ末に農業者になることを「帰農」と言いましたが、最近では起業」という言葉の乗りで「起農」と西田さんが書いていたのが新鮮でした。
小さい農業で稼ぐコツ 加工・直売・幸せ家族農業で30a1200万円
- 作者: 西田栄喜
- 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
- 発売日: 2016/02/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (4件) を見る
農業で成功する人 うまくいかない人――8つの秘訣で未経験者でも安定経営ができる
- 作者: 澤浦彰治
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2015/05/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 作者: 中西準子
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 1979/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る
今日の一品
@エンツァイのクミン炒め
フライパンにごま油を敷き、クミン(ホール)を入れ、しょうしょう炒め、切ったエンツァイ、クコの実、キクラゲ、メンマを入れ、醤油しょうしょう、エンツァイがしんなりしたら火から降ろす。
エンツァイは、エンサイ、アサガオ菜、空芯菜と、別名の多いヒルガオ科の野菜です。加熱によって色は褪せますが、味は一級品です。
(2018.08.17)
@揚げ出し豆腐
スーパーの豆腐コーナーで見つけた一品。角切りにした豆腐に衣をつけ揚げたもの。表面はぱりぱり、中クリーミーで、美味。江戸時代の『豆腐百珍』にも登場する料理。
(2018.08.17)
@わらびたまり漬け
この漬物は完璧な味付けで、加えるもののない商品。ロシア産のわらびを加工しています。製造所は青和食品(青森県弘前市:http://www.seiwa-foods.co.jp/)。
(2018.08.21)
今日の詩(2編)
@折り込み広告の舞(風の唄その1)
本日朝、風が強く、
近所の家から新聞折り込み広告が
飛ばされてきた。
風の吹くまま
予想外に舞を舞っていた。
その踊り方が
奇想天外!
ビデオに撮りたくもあったが
動きが速すぎるので
写真1枚でフォローしたのみ。
(2018.08.17)
@秋の足音(風の唄その2)
梶の木林
強風で葉が裏返り、
白い色して
揺れている。
ああ、ここに
秋の足音が聞えてくる。
(2018.08.17)
今日の四句
一晩で
赤茎見ゆる
ホウキグサ
このまえ取り上げたホウキグサ(コキア)、早速秋の気配です。
(2018.08.18)
繁りけり
イネの親分
マコモタケ
マコモタケはイネ科の植物で、秋に菌の作用で茎が白く膨れ、炒め物などにつかいます。大振りなイネといった感じです。
(2018.08.19)
カーポート
破れてケヤキ
放埓に
数年前雪で一部破れたカーポート、その隙間を埋めるように育ったケヤキ。この高木はなかなか駆除できません。
(2018.08.20)
庭掃除
巨大カボチャの
育ちけり
草むらで1.5kg程度のカボチャが実っていました。同時に取れたナスと「仲良きことは美しき哉」(武者小路実篤)
(2018.08.20)