虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト:色々な事物を取り上げます。

『肉体の悪魔』(ラディゲ):不倫のゆくえ(悪魔とは何か?)

肉体の悪魔』は、第一次世界大戦中のフランスが舞台の小説で、わずか20歳で腸チフスのため夭折したレイモン・ラディゲのデビュー作で、ベストセラーになった小説です。ラディゲ自身も人妻との恋愛を経験しているので、その経緯をこの小説に叩き込んでいるのでしょう。


この作品は、15歳(当時)の「僕」と19歳のマルト(人妻)が出会い、愛し合い、遂には子供も設けますが、大人たちによって二人は引き離されます。そのときの2人の苦悩は如何ばかりだったか?


この小説のなかでは主人公は「僕」と名乗りますが、この小説を、ジェラール・フィリップ主演で映画化した際、「フランソワ」とされていましたので、以下の記述はフランソワであると表記します。


2人の出合いも鮮烈でした。ひょんなことから知り合った二人、フランソワは、マルトの主人がこれからマルトと過ごす寝室の家具選びをマルトと二人でします。これはどうもおかしな話で、マルトは、愛の生活のパートナーを、夫ではなくフランソワに決めたとしか思えません。現に、この買い物の数ヶ月あと、マルトはフランソワに、「せっかく二人で選んだ家具のある私の処に、どうして来てくれないの?」と詰(なじ)る手紙を送ってきます。


フランソワがマルトを評するに、貞淑(?)、聡明とありますが、私が思うにこの評価は必ずしも当たっていないかも知れません。とくに「貞淑」というのには大いに疑問符がつくのでは?現に本来の夫を平気で裏切るのですから。むしろ、フランソワは、私が評価するに早熟計算高い人物だと見なせます。むしろいけすかない奴という感じで・・・


さて、「肉体の悪魔」というものが、どんな物かというと、私の答えは「それは性欲だ」ということになります。男でも女でも多かれ少なかれ持ち合わせているこの本能。それはしばしば理性を圧倒し、恋する男女を性の深淵に引きずりこむのだと思います。戦後彗星のように現れ消えた、奇跡の性愛歌人湯浅真沙子さんの一首に


君われを 離さじといふ この吾の 肉体こそは 魔ものなりける


・・・と言うのがあります。(『秘帳』:北溟社)女性の体の魔性が表明されていると思います。


フランソワとマルト、お互いお互いの肉体に強く依存したことと思いますが、やはり体の複雑さから言って、フランソワがよりマルトに惹き付けられたのだと思います。これを以って「魔もの」なのでしょう。


マルトは、フランソワの計算高さから学んだことをその若すぎる晩年、実践します。もはやフランソワに逢うことが不可能な今、生まれてくるフランソワの子にフランソワと名づけたのですね。彼女は出産後死出の旅に出ますが、「フランソワ!フランソワ!!」と叫びながら事切れます。最愛の男性の名を咎めなく叫んでの臨終。また夫にとってこの赤ちゃんは大事に育てなければならないと思わせるのに充分な演出になりました。マルト本人の独白はないので、彼女がなにを思っていたかは正確には解りませんが。


レイモン(レモン)・ラディゲ(Raymond Radiguet, 1903年6月18日 - 1923年12月12日)は、フランスで生まれた小説家、詩人。代表作は、処女小説『肉体の悪魔』と、次作で遺作となった『ドルジェル伯の舞踏会』である。


ラディゲのフランス文学史全体における位置づけは、作家としての活動期間が短く、作品の本数も少ないせいもあってか決して高くはない。しかし処女小説『肉体の悪魔』は、題材のセンセーショナルさに淫することなく、年上の既婚者との不倫に溺れる自らの心の推移を冷徹無比の観察眼でとらえ、虚飾を排した簡潔な表現で書きつづったことで、今日もなお批評に耐えうる完成度に達している。


ドルジェル伯の舞踏会』に至っては、ラディゲ自らが参考にしたとしているラファイエット夫人の『クレーヴの奥方』を、高度に文学的な手腕で換骨奪胎し、別の次元の「フランス心理小説の傑作」に仕立て上げていることから、「夭折の天才」の名にふさわしい文学的実力の持ち主であったと評されている。

以上wikiより、ラディゲ



今日のひと言:フランソワみたいな男は日本では「間男」とか「つばめ」といいますね。フランス語では「女を寝取られた男」をコキュ(cocu)と呼ぶので「帝国ホテル」は「チュ・エ・コキュ:Tu est cocu.」(お前は寝取られ男だ)と読め、フランス人には不評らしいです。


今回読んだ本  『肉体の悪魔』(中条省平:訳)光文社古典新訳文庫


“Le diable au corps” が原題。diableが悪魔です。corps は、精神抜きの物理的、生物的な体を指すと思われます。魂の抜けた死体も指します。英語のflesh とほぼ同義か。



肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫)

肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫)

肉体の悪魔 (新潮文庫)

肉体の悪魔 (新潮文庫)

ドルジェル伯の舞踏会 (新潮文庫)

ドルジェル伯の舞踏会 (新潮文庫)

ラディゲの死 (新潮文庫 (み-3-29))

ラディゲの死 (新潮文庫 (み-3-29))

ラディゲ詩集 (双書・20世紀の詩人 16)

ラディゲ詩集 (双書・20世紀の詩人 16)




今日の一品



タンドリーチキン



弟作。といっても私が買ってきた調味済商品をオーブントースターで焼いただけ。クミンの香りが強くエスニック。

 (2018.01.30)



@味噌ラーメン風うどん



市販の生麺のラーメンの場合、うまく茹でるのが至難の業で、満足のいくラーメンはなかなか作れません。そこでうどんの細麺と、ばら売りのラーメンスープを組み合わせて表題のうどんを作りました。これが中々良く、下手なラーメンの麺を使うより美味しいです。

 (2018.01.31)



@牛細切れ肉の牛皿エゴマ



ニンニク、タマネギをゴマ油で炒め、肉を投入してさらに炒め、焼肉タレを加えたあと、最後に擂りエゴマを入れ、火から降ろします。

 (2018.02.01)



@黒白赤煮



http://d.hatena.ne.jp/iirei/20171226#1514231501


で挙げた白菜の炒め物、ゴマ油で炒めるのではなく、コンソメと白菜(白)、クコの実(赤)、キクラゲ(黒)を煮て、仕上げにナンプラーパクチーを投入しました。タイ風料理。

 (2018.02.02)



@アスパラの豚薄切り巻



弟作。とくに目新しい料理ではありませんが、基本に忠実なのも大事なのかと。

 (2018.02.03)






今日の一句


東電が
墓地を削って
駐車場



空地に資材置き場を作った東電(東京電力)が隣接する墓地の一部も使って駐車場。個人的にはさもしいと思います。墓場にも手を出すなんて。

 (2018.02.01)