どちらも、仏教上の用語で、一見無関係な2つの事象をつなぐ見方と、関係ありありと思われる2つの事象を分かつ見方です。好対照ですので、今日は、この2つについて書いてみようと思います。
まず、「因果倶時:いんがぐじ」、これは法華経系の仏教(日蓮宗)の一派・日蓮正宗(ないし創価学会)の教義に出て来る概念で、「なにかの行動を行う(因:作為)場合、その報い(果:果実)は、その行為がやられたその時点ですでに確定している」、という見方で、あるとき私が創価学会の会員の人にもらった「教学の基礎」という本の中に出て来る、その本のなかで唯一まともな命題だと思ったものです。
自分自身の体験からも、そのようなことはあると思います。ある男性と初対面のとき、なんのテーマにおいてかは忘れてしまったのですが、彼と論争になりました。この論争は、私が一方的に仕掛けたものであり、以後は仲良く交友していましたが、2人で「新しいタイプの高校教科書を作ろう」として、実際その作業の私の分担パートの途中経過を彼に送ったとき、彼はある箇所について「共通の約束事を貴方はなんだと思っているのか」と怒り(設問の形式の齟齬がありました)、この企画がぽしゃるとともに、友人関係も消滅してしまいました。出会いの時の、彼が私に対して抱いた悪感情(因)は、20数年の時を経て、爆発したのです(果)。
このような実例は結構あると思います。それは、我々を縛る因果の法則(因果律)なのですね。
つぎに、「時節到来:じせつとうらい」について。大学生教養課程時代、評論家の唐木順三さんの著作に出ているのを読んだのですが、「風が吹くから・木の葉が落ちる」という当たり前の事象について、「木から葉が落ちる」という事象と「風が吹く」という事象は、「独立」の現象であり、それぞれが独立に起こり、それがたまたま時を同じくする、という訳です。なんらかの因果関係があるのではない、というのですね。「風が吹くから・木の葉が落ちる」のではない、と。とてもユニークな視点です。もっとも、この言説について再確認したくて、図書館から唐木さんの本を借りてきて読んだところ、この「時節到来」という言葉には出会えませんでした。でも、確かに大学生のころ読んだのです。さらに、「時節到来」という言葉をネットで調べてみると、この言葉にはここで述べてきたような意味はありませんでした。・・・でも、私は「確かに」読んだのです!
このブログで挙げた2つの四字熟語、その真理の捉え方が真逆であるのが面白いところです。キーとなるのは、いずれにも登場する「時」という言葉でしょう。「因果倶時」の場合、ここで登場する「時」は、「人間を縛り付ける」という機能を持っているように思います。「果は、因たる行為をしたら、必ずやって来る、いや、もう来ている」といった具合かと。「時節到来」の場合、「因も果も同じ時のなかで踊るものであって、それはその時を持つ人を自由にする」という感があります。「因果倶時」=「拘束」=「決定論」か、「時節到来」=「自由」=「自由・自在論」か、・・・と言った差異を示すのだと思うのです。
今日のひと言:過去に読んで感銘を受けた書物、また言葉が現在ではなかなか手に入らないという事態はあるのだ、と今回「時節到来」を巡って調べてみて、納得しました。本もなければ、あの時の快哉を保障してくれる手立てもない、あるのは私の記憶だけ。
ちなみに、時節到来の一般的な意味は、
「時節」はよい機会のことで、時節が到来するということから、よい機会がやってくるという意味。
http://yoji.go-kanken.com/yoji/441.html 四字熟語辞典オンライン
・・・となっていて、仏教的な深みのない表現と言えるかも知れません。
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今日の一品
(2016.10.27)
@ハンペンの含め煮
ハンペンをちぎり、ヤマサの昆布だしとオイスターソースを混ぜた液で煮ました。あとクコの実、イタリアンパセリの芽生えを加えました。
(2016.10.28)
@我が家の芋煮会
弟作。新もののサトイモを、ニンジン、昆布と合わせ、砂糖・醤油・七味唐辛子で味付けしました。たっぷり出来ましたが、これぞ我が家の芋煮会。
(2016.10.29)
@豚軟骨の角煮風
弟作。我が家の定番料理。100g50円程度で生協で売っている豚軟骨。これをまず圧力鍋で12分ほど煮て、角煮用のタレに入れてシャトルシェフ(保温調理鍋)で30分ほど煮、外鍋に収め3時間。角煮と同様な美味しさです。
(2016.10.30)
今日の詩
@注射
母の注射と騙され来たる
男の童(おのわらわ)
リラックス、リラックス。
自分への注射だと知って
ここを先途と泣き叫ぶ
「注射だめだよぉ〜〜」
注射後しばらく余韻があったが
再び静かな男の童。
――この怨み、一生物(いっしょうもの)か?
(2016.11.01)