世界の見方が変わる「数学」入門:余りに楽天的では?
私には複数の著作がありますが、10年ほど前に上梓した電子書籍「東大えりいとの生涯学習論」(eブックランド:発行)の書誌情報として以下のように書きました。
(東大えりいとの生涯学習論)
嫌な現実から飛翔できる学問・数学。著者は数学者を目指して東大に進むが、あまりに酷い初授業に落胆し、フランス文学科を目指すも、落ち込んで工学部・都市工学科衛生コースに進む。専門は「水」。当時は「汚いもの(うんこ、おしっこ)」を扱うので人気がなかった所である。そして、粗い現実と闘いながら、「えりいと」とは何かと考えて綴った記録であり、教育書である。著者は塾講師、家庭教師の経験も豊富なのでなにがしかの有益な情報を、読者は得られるであろう。
さて、数学には2つの側面があると思います。ひとつは「現実の問題」は無視する数学、もうひとつは「現実の問題」に積極的に関与する数学。前者はすなわち「純粋数学」、後者は「応用数学」と呼べるでしょう。現実の数学者は、この2つの立場の一方に固執したり、融通無碍に両方に関与したりするのでしょう。「純粋数学」ならエヴァリスト・ガロア(群論の創始者)、「応用数学」なら統計学、天文学、電磁気学などの分野で多くの業績を残したC.F.ガウスなどが代表格でしょう。(ガウスは数学の帝王とも称せられ、純粋数学での諸業績も有名です。)
私は、書誌情報にあるように、「現実」が嫌だったので、大学入学時にはそれらから自由な純粋数学を求めていましたが、その純粋数学に落胆しても、卒論を書く時点で数学は関与してきました。当時の私は「生活クラブ生協」のおばさん(ないしお姉さん)と組んで、東京都・千葉県の水道水に含まれる発がん物質「トリハロメタン」の定点調査をして、それを卒論にまとめる際、加減乗除、統計計算(相関係数)、微積分などの数学を援用しました。生協のお姉さんたちに解りやすい論文を心がけましたが、相関係数、微積分はちょっと高度過ぎたという怨みがありましたね。加減乗除のみで纏められれば良かったのですが。
さて、表題の本ですが、図書館のYA(ヤング・アダルト)コーナーにありました。中高生のようなみずみずしい感性の若者への推薦図書という感じですか、そんな本の一冊です。この本は、取り上げる数学的ツールが独特で、ネーピアが発明した対数(および小数点の威力)に多くの紙面を割いています。さらに、最終章である第4章の「数学ほど役に立つものはない」では、集合論→ブール代数→コンピュータの基本回路の組み立て→ディジタル機器の全盛という流れが記述されます。(ちょっと意外かつ不満だったのは、集合論の創始者:ゲオルク・カントールの名前が出てこなかったこと。この本の論理上では、不必要な数学者だったのでしょうか?)
そして、数学=善といった感じの記述が大変気になりました。数学のなかで事が済めばよかったのに・・・という事例は沢山あります。有名なところでは、「サットンの式」という大気汚染物質の拡散を記述する式を、現実の大気汚染に優先するかのように利用し、結果汚染が拡大したというような結末になったのですね。
数学は中立だけれども、それを利用する際、とんでもない濫用に陥る可能性が皆無ではない、ということを私はこれから学問に励む学生諸氏に強調したいのです。「応用数学」的な研究に励んだ私からのアドバイスです。
今日のひと言:今回取り上げた本は 『14歳の世渡り術 世界の見方が変わる「数学」入門』(桜井進:河出書房新社:本体価格1300円)
- 作者: 桜井進
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2014/11/27
- メディア: 単行本
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- 出版社/メーカー: 大日本図書
- 発売日: 2007/07/01
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- 作者: 吉永良正
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川学芸出版
- 発売日: 2013/04/11
- メディア: Kindle版
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- 作者: H.W.クーン,S.ナサー,落合卓四郎,松島斉
- 出版社/メーカー: シュプリンガー・フェアラーク東京
- 発売日: 2005/10/22
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今日の一品
独得な風味をもつ金時草をなめこと和えました。同時に茹で、冷ましてから梅サワー漬けと醤油で和えたのですね。金時草(キク科)は酢に会うと、風味が光ります。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20091007#1254919782
:金時草はいかがですか?
(2016.09.05)
@ソフト身欠きニシンの煮物フローレンス・フェンネル風味
水分が比較的残っている「ソフト身欠きニシン」をシャトルシェフで煮込み、保温して1時間、
醤油とフローレンス・フェンネルを入れて味付けしました。まずまずの出来。
(2016.09.06)
生野菜を永谷園「お茶漬けの素」で和えたサラダは以前書きましたが、今回はアルファルファ・ミョウガ・スイスチャードを混ぜました。スイスチャードはフダンソウの一種、広い意味ではホウレンソウの仲間と言えるでしょう。色鮮やかなのでサラダ向きなのです。
(2016.09.06)
@鶏モモ肉金山寺味噌乗せオーブン焼き
弟作。肉一切れ一切れに金山寺味噌を乗せ、オーブントースターで180℃10分加熱。また出来上がった肉を青シソで巻いて食べました。(これは私のアイディア。)
(2016.09.08)
今日の詩
@モテる・モテない
私はかつて女性になりたいと思っていた
髪の毛も長髪にしていた
現実に女性に見られたことも一再ならずある
だが電車のドアに映った自分の姿を見た時
「醜い」と思ってバッサリ自分で丸坊主にした
それから私の恋の季節は始まった。
この前職場の同僚の女性から
「森下さん、若い頃はモテたでしょう?」と言われた
私の短髪モードが受けたのだろうか
そう言えば昔ある男性に
「貴方のバリトンの声、女性はしびれるでしょう」
と言われたこともある。
私が女性に恋した時、相手も同時に恋したことが多く
恋愛は好調にスタートしたものだ。
(その後がイケない、だいたい恋愛は破れた)
その原因は女性の側にではなく、
男性である私の側にあるという気がする
一時的にモテても、持続しなければダメだよね。
・・・このあたりにも、数学に憧れた心理が見られる?
(2016.09.09)