長谷川等伯と俵屋宗達:偉大な絵師たちの共通点と相違点
長谷川等伯(はせがわとうはく:1539−1610)と俵屋宗達(たわらやそうたつ:?−?:生没年不詳)は、どちらも国宝である絵画を複数残し、絵画マスターであることが共通です。その活躍年代からして、等伯が宗達にやや先行し、実年齢でも、等伯が早く生まれているようです。
この2人の大きな共通点として、中国の牧谿 (もっけい)の「たらしこみ」という水墨画の技法を、それぞれ独自にマスターし、縦横に使っていたという点が挙げられます。(後の琳派の一人、中村芳中がよく使った技巧でもあります)
日本画の彩色技法の一。色を塗ってまだ乾かないうちに他の色をたらし,そのにじみによって独特の色彩効果を出すもの。自覚的に用いたのは宗達が初めで,以後,琳派がさかんに用いた。
http://www.weblio.jp/content/%E3%81%9F%E3%82%89%E3%81%97%E3%81%93%E3%81%BF より(たらしこみ:溜込)
ただ、2人の境遇には大きな違いがあります。等伯は、いまの石川県で、絵仏師から始めて、「名声」を求めて京に出てきました。このような出発点を持つ人の常として、競争心が強く、その場、時代の指導者的である個人、団体に強い敵愾心を抱くことが多いのですね。その対象は狩野永徳(1543−1590)をリーダーとする狩野派でした。狩野派も自分らのテリトリーは守りたいですから、激しく等伯と争うのです。また、長谷川の家を確固たる地位に上り詰めさせたいという願望も強く持っていて、その分、その言動は悲愴です。それから、等伯の絵は生真面目で、遊びの精神はあまり感じられません。
一方、宗達(活動期間は推測で1596−1643)の絵は、遊びの精神が横溢していて、自由闊達です。生没年が不詳な人ですから、その人物像を描くのは至難の技ですが、新潮社の『俵屋宗達』(新潮日本美術文庫5)では、この絵師は、新興階級で力を持ちつつあった町衆の出で、その絵も世俗的な手垢に汚されていないものだった言えるようです。宗達は、ふくよかな顔をもつ、おっとりした人だったのではないか、というプロファイリングをこの本の著者・奥平俊六さんは書いています。
等伯に戻り、2点、国宝の絵画を挙げてみます。1:「松林図」。2:「松林図:一部拡大」あまりにも有名な襖絵です。画面では一部のみ描かれた松があり、そんな松が幾本も描かれる水墨画です。この絵だったか、外国人が鑑賞して、「この絵の作者は、絵の具が買えなかったのか?」とマジメな顔をして質問したとのことですが、欧米の人にとって絵画はなにより、画面一杯、絵の具で塗りたくるものであるのですね。
3.「楓図」。この絵の対になるように、有能な長男、長谷川久蔵も「桜図」を描き、これも国宝に認定されています。ただ、この長男は親に先立って逝ってしまい、長谷川家を大いに盛りたてようとしていた等伯にとって、残酷な運命でした。
ただ、残念ながら私には、ただ植物だけ描いた絵の良さはよく解りません。返す返すも残念です。(松林図は、霧という要素が入るので、面白く思います。後の尾形光琳の「杜若図屏風:かきつばたずびょうぶ」との類似点は多いと思います。同じような素材をあるリズムを以ってまとめ上げている点においてです。)
(ここであげた3つの絵は『長谷川等伯 生涯と作品』(黒田泰三:東京美術)から持ってきました。
対して、俵屋宗達の絵については、過去ログで書いていますので、是非ご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070912
:宗達の犬
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20090210#1234237044
:俵屋宗達の視線(非・遠近法)
今日のひと言:「たらしこみ」の実技について、私はソース本の情報は忘れましたが、牧谿が源流であったものを、等伯と宗達が独立に習得したと書いてありましたので、引用したネット上の辞書とは異なり、その説を取ります。ロマンがありますからね。
もっと知りたい長谷川等伯―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
- 作者: 黒田泰三
- 出版社/メーカー: 東京美術
- 発売日: 2010/02/20
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 13回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
- 作者: 歴史の謎研究会
- 出版社/メーカー: 青春出版社
- 発売日: 2018/01/10
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 作者: 安部龍太郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/09/02
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (8件) を見る
もっと知りたい俵屋宗達―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
- 作者: 村重寧
- 出版社/メーカー: 東京美術
- 発売日: 2008/09/25
- メディア: 単行本
- クリック: 17回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
今日の一品
@鯛頭汁
弟作。鯛の頭を骨を解しながら煮て、ワカメ、ブナシメジを入れ、山椒、ネギで臭みをマスキングしました。塩味は醤油。
(2018.04.13)
@フキの煮付け
なんら変哲のないフキ料理。これから何度でも庭から採ってこられますが、今回は薄味。今シーズン最後にキャラブキを作る予定。
(2018.04.15)
@高野豆腐の煮含め・山椒添え
高野豆腐は一度味をしみこませるとなかなか抜けず、以前作ったものが塩辛くなりすぎたので、今回は薄味にして成功。風味添えに山椒の葉を添えました。美味。
(2018.04.16)
カルビ肉のディップ
弟作。カルビ肉はフライパンで炒め、べつにマヨネーズとすりエゴマを合わせたディップを作り、肉にディップをつけて食べます。
(2018.04.18)
今日の詩
行くときは
花のツボミを
口に入れ
鮮烈な風味を
味わった私。
帰るときには
そのお花畑は
ローラーで
綺麗に
押しつぶされていた。
なんて無残!
この花は
カキナだが
食用野菜を
何と思っているのか!
(2018.04.14)
今日のニ句
三者とも
今を盛りの
花模様
川べり、画面中央にギシギシ、その周囲をクレッソン、上にカキナが咲き誇っていました。
(2018.04.15)
初に見る
金時草・華
紅花か
金時草はキク科の美味しい野菜。寒さに弱いので越冬は室内・プランターでさせますが、この春先に開花するのは初めて見ました。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20091007#1254919782
:金時草はいかがですか?
(2018.04.16)