虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

天は円、地は方〜古代中国の宇宙観

中国の文献を見ると、「天円地方」ということばによく出くわします。この言葉はどういう意味なのでしょうか。Wikiでこの言葉を調べると


天円地方(てんえんちほう)とは、天は円く、地は方形であるという古代中国の宇宙観である。中華文化圏の建築物や装飾のモチーフとして用いられる。天が円で表されるゆえんは、星の運行が円運動で表されるためである。


なるほど、天の天体は丸く運行していて、円、それに比して人間がやる行為は、例えば土地に直線的な縄張りをし、やはり直線的な建物を建てると言う意味で、方(矩形=四角形)なのですね。そして、中国人の想像力は、天の神、地の神を祀る場合も、円と方を使い分けます。

Wikiで「天壇」


天壇(てんだん、簡体字: 天坛、拼音: Tiāntán)は中華人民共和国北京市東城区に位置する史跡で、明清代の皇帝が天に対して祭祀(祭天)を行った宗教的な場所(祭壇)である。敷地面積は約273万m²。1998年よりユネスコ世界遺産文化遺産)に登録された。



 (天壇:wikiより)


Wikiで地壇


地壇(ちだん)とは中華人民共和国北京市東城区の安定門外にある史跡で、明清代の皇帝が地の神に対して祭祀を行った宗教的な場所(祭壇)である。
1. 天壇が紫禁城の南東に築かれたのに対して、地壇は紫禁城の北東に築かれており、これは古代中国の天南地北説に符合する。
2. 天壇の主な建築が円形であるのに対して、地壇は方形である。これは『大清会典』の述べる「方(四角)は地を表す」に従っており、中国の天円地方の宇宙観を体現している。
3. 「天は陽、地は陰とみなす」という陰陽思想に従い、天壇の石塊や、階段、柱などはこぞって奇数(陽数)で構成されている。一方地壇は偶数(陰数)で構成されている。例えば方澤壇の階段は8段であり、壇は6方丈である。使用した石版の数も偶数であり、中華文化を反映している。


そういえば、日本には前方後円墳という墳墓がありましたが、この古墳の場合、円と方という字が使われていますから、これも中国古代思想に源を発するように思います。Wiki前方後円墳を引くと


日本(およびそれに影響を受けた朝鮮半島南部)でのみ見られる前方後円墳の起源については、これまでに様々な仮説が唱えられている。最もよく知られているものは、弥生時代の墳墓から独自に発展したものであるという学説である。この説においては従来より存在した円形墳丘墓の周濠を掘り残した陸橋部分(通路部分)が発達し、墓(死の世界)と人間界を繋ぐ陸橋として墳丘と一体化したと考えられる。それに対して円部は軍事・政治を担った男王、方部は祭祀を司った女王の墓に由来するという説もある。

この記述に出て来る一説、「円部は軍事・政治を担った男王、方部は祭祀を司った女王の墓に由来する」という辺りが、なにやら中国ぽいのです。人間にこの「天円地方」説を適用すると、男性=天、女性=地と割り振られます。中国の初代皇帝・蛇身の伏羲(ふっき)とその妻・やはり蛇身の女媧(じょか)は、それぞれコンパス、定規を持っていて、天と地の役割分担が明確に示されているのです。ただ、円は曲線で出来ていて、矩形は直線で出来ていることを考えると、曲線的な姿をしている女性のほうが天、直線的な姿をしている男性のほうが地、と言ってもよいかも知れません。メンタル(精神)的にも、女性の方が複雑です。まあ、天=男性、地=女性とするのが易経を初め、中国の思想の特徴なのですが。伏羲女媧 の画像もwikiより。




天と地の違いを自然と人為の違いで見てみますと、普通に生えている樹木は、切ると円の形をしていて、天のものだと解りますが、その、切り口を横から見ると、これは直線になり、人為の作業であることがわかりますね。自然はあらゆるところに存在し、人間の人為もまた、いろいろな形で発揮されるのですね。



今日のひと言:ギリシャ数学上の難問に、「与えられた円と同じ面積を持つ正方形を定規とコンパスだけで作図せよ」と言うのがありました。この問題の場合、円の半径をr、正方形の一辺をxとすると

   x^2=πr^2 

とする式を解かなければならないのですが、


x=√πr とできます。が・・・

π(円周率)は√πも込みで、(整数係数の)代数方程式の解にならない(超越数である)と証明され、この問題を解くのは不可能であるとされるに至ったのです。
やはり円と方は性質が相当違うのですね。


易経 (中国の思想)

易経 (中国の思想)

定規とコンパスで解け―ギリシャ時代から後世に問われた三大難問

定規とコンパスで解け―ギリシャ時代から後世に問われた三大難問




今日の料理


@アボカド乗せヒモカワうどん




いつものうどんに、ワンポイントでアボカドを配しました。この果物は、ビタミンEをはじめ、各種ビタミン、ミネラルが豊富に含まれ、良質な油脂、豊富なたんぱく質をも併せ持つ、スーパー果物ですね。(だから味わい深いのですね。)

 (2015.12.24)



@鯛頭のスープ




以前買って冷凍保存していた鯛(タイ)の頭を醤油味のスープにしました。これは美味しいです。

 (2015.12.26)



氷頭(ひず)


これは、鮭の頭の鼻先から脳にかけて存在する軟骨状の組織。珍味だと賞味されてきました。ペティナイフで頭から切り取り、レンジでチンしました。(写真なし)残りの部分は、圧力鍋で骨ごと柔らかくして全部食べます。ところで、かつてBSE狂牛病)で問題になった「肉骨粉」を、家畜ではなく、魚類の養殖に使おうという試みがなされているようですが、頭も食べられる鯛とか鮭の場合、無害になるのでしょうか?資本主義の悪い特質がかいま見えます。

 (2015.12.27)






今日の一句


一体の
生き物のごと
群雀


冬のある日、雀(すずめ)たちが群れ飛んでいる様子を見て。

 (2015.12.27)




今日のロシア・フォルマリズム


↑過去ログで取り上げているこの言葉、
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20081122#1337305032
で書いていますが、要するに「言葉を先入観なく読み、先入観を持って読む人をぎょっとさせる」解読法のことです。


@蛇足(だそく)


この成語は普通「ヘビに足を生やしたら、ヘビではない」と絵を描いた人を貶す意味:「余計な行為だ」と言うように解釈されますが、ヘビに手足を描けば「龍」になるわけですから、ヘビがより高位の者になるわけで、目出度いという意味にも解釈できるでしょう。

 (2015.12.28)





2015年のエントリーはこれで終わりです。皆様、良いお年を。新年は1月3日よりエントリーする予定です。