虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「金枝篇」(きんしへん:The Golden bough):難しい人類学

Mistletoe(ミスルトー) という英単語を覚えていますか?この難しい単語が、中学校の英語の授業でmuchとかsoとかの易しい単語と入り混じって出て来るという風景には、面食らったものです。意味は「ヤドリギ」、生木に生えて、その木に寄生する植物です。


(このような木が球状になってほかの木にくっ付きます。画像はwikipediaから。)



この木には、いわく言いがたい霊力があると、前近代人には認識されていたようで、イタリアのネミ湖周辺には次のような伝承があります。:「王、ないし森の司祭は、在任中、自然と一体化し、絶大な権勢を振るうが、もし彼がヤドリギの木の枝で殺されたら、その殺害者は王の位に就く」というものです。


ここで「金枝」とはヤドリギのことであり、この植物に関連するような世界の民話、神話を追って、金枝篇のお話は展開されます。


著者は、サー・ジェームズ・ジョージ・フレーザー。名前から推察できるように、この人はイギリスの爵位を受けているのです。この人は、実に精力的に取材をする人で、私が読んだのは2段組で分厚く、充分大部な書籍でしたが、金枝篇全編はなんと13巻もある「超」大部な本であり、とても手を出そうとも思われません。


それで、私は「図説 金枝篇」(東京書籍株式会社:内田昭一郎訳)を図書館の閉架から借りてみたのですが(とても開架においても読まれるものではないだろうとも思いますが)、これはこれで読みにくい。その最大の理由は世界の民話・神話がこれでもか、これでもか、と例示してあって、ネミ湖の事例とはあまり関係がない逸話まで取り上げられていることです。


民俗学や人類学にはよくありうることだと思いますが、事例を挙げるばかりにこだわって、話の本筋を忘れてしまう悪癖をフレーザー氏も持っているのかと思います。私は以前「読書5%論」について言及しましたが、金枝篇の場合は、言いたいことが全体の1%くらいにも見えますし、100%が言いたいことなのかも知れません。とにかくごちゃごちゃしています。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20141214#1418532673

:読書5%の法則〜残り95%は無駄か?


ヤドリギの神聖さについては、この本の終わりに出てきます。北欧神話の神・バルデルは、神聖な木・オークに寄生するヤドリギの化身であり、冬でも青々としているヤドリギその物を持って、殺されるのですね。自身によって自身を殺す・・・このような心理機序は、未開民族にはよくあるとされます。この点が、ネミ湖における「森の王」と同型・同一なのだ、という結論です。


さて、一応のネミ湖の事例の謎解きは終わりました。それにしても、それだけのことを言うのに、こんな大部の本は必要なのでしょうか?私はこれまで、極めて読みにくいので読書を中断した本が少なくとも2冊あります。一つは、白川静さんの「漢字の語源を全部と言えるくらい呪術に求める」という類いの本、もう一つは柳田国男さんの「遠野物語」。白川さんの場合ははっきり偏向しているので私にとって当然ですが、柳田さんの場合は、おそらくフレーザーさんの「金枝篇」が読みにくいのと同じ理由かと思います。とにかくわき道がたくさんあり、どの記述が本筋なのか解らない点です。



今日のひと言:文化人類学者のクロード・レヴィ=ストロースが数学者アンドレ・ヴェイユのサポートを受けて発表した、アフリカの未開民族の結婚形態の数学(とくに群論)的実像・・・これはテーマも簡潔で、一度読んでみたいと思っています。このくらい記述が絞られていたら、食指が動くというものです。




今日の料理


@ブリのマーマレード、醤油炒め





弟作。塩を振ったブリをフライパンで焼き、取り出したフライパンにマーマレード・醤油を加えて加熱して、先のブリに掛けました。

 (2015.12.04)



@卵敷きご飯




卵掛けご飯は有名ですが、私は一度水を適量張り、レンジでチンしたお茶碗に、卵と醤油を落としてかきまぜ、さらに上からご飯をよそってかき混ぜる方法を取ります。卵に対して加熱する程度が高くなるので、卵全体が固体になります。今回の写真は「黒米:古代米」を混ぜて炊いています。

 (2015.12.04)



@鶏モモ肉の焼き鳥風




弟作。永谷園の商品を使いました。初めに粉をまぶし、フライパンで焼き、最後にタレをかけて30秒ほど加熱します。たしかに焼き鳥風でした。驚き!

 (2015.12.05)



@ターサイ炒めクコ添え



ターサイは中国野菜で、アブラナ科の野菜のなかでもっとも濃い緑色をしています。旬は冬季ですが夏でも栽培可能です。今日は間引いたターサイをゴマ油、カツオ節、醤油で味付けし、彩りにクコの実を加えて炒めました。草姿については

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20150602#1433197935 参照。


 (2015.12.07)


図説 金枝篇

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今日の一句




一日を
凱風快晴
赤城山


この「凱風快晴」という言葉は富士山にもっぱら使われますが、山の規模で言えば最盛期には富士山と同じくらいの標高を誇った赤城山にも相応しいと思いました。一日中、太陽の光を浴びて山容を誇っていました。

 (2015.12.06)