世界のミニ国家〜〜卓抜した生き残り戦略
以前私はイタリアの内陸国、サンマリノ共和国を論じたことがありますが、
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20140826#1409048748
:驚異の小国・サンマリノ共和国
今回は、その時アマゾンで検索した参考文献として挙げた「世界の小国 ミニ国家の生き残り戦略」(田中義晧:講談社選書メチエ)を読んでみました。
ここで、「ミニ国家」の定義としては、「人口100万人以下の国家」であると言うことです。だから、かなり広い面積(10.3万km^2)を持つアイスランドも、人口30万人弱ですので「ミニ国家」であるということになります。
それから、ミニ国家の存在地域は、かなり偏りがあって、この本の巻末に挙げられている表を見ると、アジア・・・6(カ国) オセアニア・・・11、カリブ海諸国・・・11、ヨーロッパ・・・11、アフリカ・・・6 このようになっています。また、島嶼国は、オセアニア(ほぼ南太平洋地域)とカリブ海諸国であり、独立してから、あまり年月を経ていません。
人口10万人の国が、世界的な意思決定に介在することがあります。捕鯨か反捕鯨かでもめたIWC、反捕鯨国は、カリブ海諸島嶼国を会議のメンバーに仕立て上げ、日本、ノルウェイ、ロシアなどの捕鯨国を「小さくても」一票は一票、ということで押し切ったとのこと。この「不正」で利益を得たミニ国家も多いでしょう。
また、自前での漁業手段をもたないオセアニアの小国・キリバスは、ソ連に入漁料を売ることで自国を富ませようとしたのですが、アメリカにとっては、自分の庭に泥棒がやってくるようなものなので、ソ連より高く入漁料を買ったと言うお話もあります。アメリカ、ソ連を手玉に取る恰好です。
また、オセアニア、カリブ海島嶼国には、いわゆる「タックス・ヘイブン」(所得税・法人税ゼロ、キャピタル・ゲイン課税ゼロ、源泉徴収税ゼロ、相続税ゼロ、雇用税ゼロ、消費税ゼロなどの恩恵がある)これでは国が立ち行かなくなると思われますが、その財源は企業の登録手数料と輸入関税から得ているそうです。もっとも、このタックス・ヘイブン、最近ではマネーロンダリングの温床として規制されつつあるようですが・・・
世界最小の国家は、バチカン市国です。面積0.44km^2 。人口は聖職者800人あまり。この国は、前世紀終わりにとんでもない「行い」をしました。時の法皇・ヨハネス・パウロ2世は頻繁に彼の出身国であり、当時は共産主義体制のなかにあったポーランドを訪ねました。この地で彼が行った諸活動は、ちょっと後に、ポーランドをふくむ東欧諸国を、「無神論」である「共産主義」から「解放」させたというのですね。宗教の力をまざまざと見せ付けてくれる事例だと思います。
ただ、ミニ国家がいつでもよいパフォーマンスを見せるわけではなく、やはり近くの大陸ないし大きな島との関わり方は時代とともに変化します。世界史上、オセアニアとかカリブ海沿岸の島嶼が一斉に独立したのは、いわゆる「民族自決」と言うスローガンからだったのですが、2002年に独立した「東ティモール」(人口98万人)の場合、まだ国内から独立の適期ではないのに、国連が無理やり独立させて、いま非常に国が荒れているといいます。
また、ツバルというオセアニアにあるミニ国家は、海抜1.5mしかなく、最近の地球温暖化の影響で、移住をせざるを得なくなり、ニュージーランドへの移住許可を申請し、認められたようです。
ヨーロッパのミニ国家「リヒテンシュタイン公国」は、スイスに隣接し、人口3万人[05年]です。かつては現在の国土面積の100倍ほどの領地を持っていましたが、地政学上、重要な位置にあるので、侵略され続け、いまのようになりました。ただ、この国の国民はいかにもドイツ語が公用語だけあって、勤勉です。金融機関も充実しています。その富(国民一人あたりGDP)は、世界中見回しても、比肩できる国は少ないでしょう。
ただ、リヒテンシュタインにとって、悩みの種は、スイスがEUに加盟して、スイス・フランが消えてしまうこと。リヒテンシュタインにとって、スイス・フランこそ、基盤となる通貨なのですから。
以上、書いてきたように、ミニ国家の現在と未来は、安閑にはできないけれど、素晴らしい未来がありえると言えるでしょう。
今日のひと言:人権思想家のモンテスキューとかルソーに、「国は小さいほどよい」などという言葉が見えるそうです。ただ、そういった考え方は、膨張主義のナポレオン・ボナパルトの出現で吹っ飛んじゃったようです。でも、彼らの記述は、老子のいう「小国寡民」と、どこか似ていると思います。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20140627#1403863622
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20151015#1444859057

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今日の料理
@鶏ササミ肉の甘辛焼き
弟作。20分ほど砂糖醤油(+七味唐辛子)に浸した鶏ササミ肉をフライパンで焼き、最後はレンジでチン。
(2015.11.29)
@キクイモ炒め
キクイモはキク科の根野菜。秋が収穫適期です。シャキシャキした歯ごたえがたまらないです。成分にイヌリンを含み、カロリーも低く、糖尿病にも効果があると言われます。ただ、今回の芋にはかび臭があったので、一度茹でこぼしてから、炒めました。仕上げに塩を振ります。
(2015.11.29)
@牛肉・下仁田ネギ・車麩の炒めもの
弟作。三種の食材を油で炒め、マヨネーズを加え、最後にポン酢を加えます。下仁田ネギのクリーミーな味わいは特筆物でした。
(2015.12.01)
今日の詩
@瀕死のタエコ
2015年11月23日、
散歩中のタエコ(犬)が
割り箸を食べた。
口から血を流しながら。
これは一大事と獣医に行こうとしたが
あいにくこの日は
勤労感謝の日でお休み。
翌日獣医のもとに行ったところ、
割り箸も命に関わるが
血液検査をした結果
GPTの数値が正常域17−78なのに対し、
1000以上と振り切れた。
タエコは割り箸と肝機能障害に
立ち向かわなければならなくなった。
散歩も50mが限度とされた。
(さすがにタエコの楽しみを奪うことに
なるので実際にはもっと歩かせている。)
タエコは意識してかしないでか
本人の体におきた肝機能障害を
我々飼い主に伝えようと
割り箸を食べたのかも知れない。
もとはと言えば、父の認知症予防のため
タエコを飼いはじめたのだが
父はあっさり認知症になり
世話を我々兄弟が担うことになったのだ。
タエコを飼いはじめてかれこれ14年に
なろうとしている。人間に直せば70歳。
飼っておいて何だが、
目元涼しい愛しのタエコよ、
私はもしおまえが死んだら、
悲しみより多く
肩の荷が降りたと思う気がする。
(2015.11.29)