虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

中学生に「夜鷹の星」や「走れメロス」を教えるな:簡単すぎる。

この2作品は、むかしもそうでしたが、今でも教科書に載っていることが多いようです。それらを読んだ際、それなりに感銘はありましたが、よく考えてみると、この2作品を教科書に載せることには問題があることが解ります。


夜鷹の星」は、宮沢賢治原作の小説で、筋といえば、「鷹でもないのに「よ・鷹」と名乗るのはダメだぞ」、という本物の鷹に脅され、空高く舞い上がって星になってしまうというお話でした。この作品は、夜鷹の悲しい末路に「同情し」、「鷹って意地悪よね」という具合に落ち着くお話です。でも、難を言えば、それだけの筋立てのお話であって、作品の構成がイマイチなのです。そういった意味では中学生が読むには、簡単すぎるのです。知的に成長過程にある中学生に「夜鷹の星」を読ませるのはむしろマイナスの効果があるように思えます。所詮童話なのです。


走れメロス」は、太宰治の小説で、デカダンな生活を送り、作品もそのような傾向を持っていた彼にしては、珍しく「健康的な」小説です。一見、中島敦のように中国の説話を使ったのかと思わせる内容です。実際は古代ギリシャが舞台であったことは案外意外にも思えます。ただ、この小説も、構造は簡単で、「友人同士の信頼関係は大事だ」と教えるものなのでしょう。まあ、これほど「イジメ」が蔓延している現在、その予防にも効果があると思う教師もいるかも知れませんが、小学校の頃からイジメはあるのですから、中学校でではなく、小学生の頃に学ばせるなら「可」だと思います。


それでは、私がどんな教材を中学校で使うか推薦するとすれば、たとえば「うなぎ」(小川国夫)という短編小説です。この作品は、ウナギを発見した男の子が本人では捕らえることができず、ほかの男の子が捕獲に成功し、当然のように家に持って帰ります。その後、発見者が自宅で「自分がウナギを捕まえた」と話し、その話が捕獲者の家にも伝わり、大人たちはウナギを発見者のもとに持っていきます。ウナギの所有権は発見者のものになります。


この小説では、前半が「子供の世界」のお話であり、後半はその世界に「大人の世界」が介入してくるという筋立てになっています。これは、一つの「事件」を記述した作品であり、世界の使い分けが見事なのです。・・・中学生にもなれば、このくらいの構造の小説くらいは読まなくてはダメだね、と思います。(この作品は、私が某学習塾にいたころに教材になっていたものです。)


他の文学作品でも考えてみると、例えば夏目漱石の「坊ちゃん」は小学生向きだと思います。その理由は、「夜鷹の星」とか「走れメロス」が中学生向きとは言えないということと同じです。「我輩は猫である」は、案外一筋縄ではいかないところがある作品なので、中学生向きだと思います。「こころ」は、高校生向きでOKでしょう。


芥川龍之介の場合、「蜘蛛の糸」は有名ですが、むしろ「道徳」の時間に取り上げるのはどうだろうか、と思います。「羅生門」の場合、鬼気迫る描写がとくに印象的で、「救いのない」お話でもあるので、そんな人生環境を垣間見る意味で、中学生に学ばせても良いでしょう。



今日のひと言:高校生用の教材としては、中島敦の「山月記」、梶井基次郎の「檸檬」などがスタンダードですね。



よだかの星 (日本の童話名作選)

よだかの星 (日本の童話名作選)

新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫 も 10-1)

新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫 も 10-1)

中学校学習指導要領解説 総則編

中学校学習指導要領解説 総則編




今日の料理


@コーンサラダのマヨネーズ和え






コーンサラダ(またの名をマーシュ)は、オミナエシ科のハーブです。小ぶりな植物で、それこそ播種後30〜40日で収穫します。だいたいレタスの風味と言えるでしょうか。ただ小型なので一食分にはたくさん収穫しなければなりません。ナメクジがついていたり、針葉樹の葉が混ざったりするので、サラダにはせずにお浸し・・・マヨネーズ和えにしてみました。

 (2015.05.29)




@ターサイの混ぜご飯



 ↑冬の草姿(wiki より)



ターサイ搨菜)は、中国野菜のひとつで、冬には地面に這いつくばって「ひしゃげて」生えるのですが、このアブラナ科の濃い緑の葉で混ぜご飯にするとどうなるか、やってみました。緑がまぶしいです。

 (2015.05.29)




鶏もも肉の丸焼き+アルファ






弟作。ブロックのまま皮がかりかりになるほどフライパンで焼いた鶏もも肉を切り分けて、マヨネーズ+「ごはんですよ桃屋」で和えたそうです。案外いけます。

 (2015.05.29)




@牛肩ロース薄切りとモヤシのソース炒めフェンネル風味






牛肉を「増量」するためモヤシと炒めた究極の貧乏食。ソースはブルドッグの中濃ソース。これに間引きしたフローレンス・フェンネルを香味成分として加えました。

(2015.05.31)





今日の詩



@知らない道


いつも通る道を
避けて入り込む小道
なぜか新鮮な気がする


この道は心地よいが
この先にはなにがあるのだろう?
希望?絶望?


なにはともあれ
普通の道に出た。
――私の小旅行は終わった。


 (2015.05.30)