虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

読書5%の法則〜残り95%は無駄か?

以前、もっとも、今年のことですが、読書する際、本の言わんとすることは、全体の5%に過ぎないので、そのつもりで読書をするのが良い、という言葉をネット上で目にしました。これってどうなのでしょう?読書論として極論すぎる気もするのですが。


読書作法について書かれた文章も、ネット上でよく目にします。その一例を挙げると

http://blog.livedoor.jp/psyforce/archives/51310916.html

:りょうたの手記帖 読書要点まとめ008


・戦略的に読破する
 →1・本を読む目的の明確化
  →目的が明確化すると重要でないところとそうでないところの見極めがはっきりし、どうでもいいところは読み捨てる事が出来る分速く読める
   カラーバス効果・・・意識する事で意識していなかった時より頻繁に目にするような感覚を受ける
   読書環境は机に限った話ではなく、自分にあった集中出来る場所を選ぶ
   出来るだけ決まった時間に読む、習慣と組み合わせると尚良し、朝の読書はモチベーション向上にもつながる
  2・制限時間を設ける
  →8:2の法則の通り、全体の2割の部分に本の8割の部分が書かれている、0.2*0.8=0.16、16%がその総量


なにやら、サラリーマンの読書術について書かれたように思えるページです。(実際、そうなのでしょうが)
この引用の最後に出てくるのが「8:2の法則」すなわち「パレートの法則」です。wikiから引用してくると


パレートの法則(パレートのほうそく)とは、経済において、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているという説。
80:20の法則、ばらつきの法則などと呼ばれることもあるが、本来は別のものである。


イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート(Vilfredo Federico Damaso Pareto)が発見した冪乗則である。経済以外にも自然現象や社会現象等様々な事例に当て嵌められることが多い。


ただし現代で言われるパレートの法則の多くは、法則と言うよりもいわゆる経験則のたぐいである。自然現象や社会現象は決して平均的ではなく、ばらつきや偏りが存在し、それを集約すると一部が全体に大きな影響を持っていることが多い、というごく当たり前の現象をパレートの法則の名を借りて補強している場合が少なくない。


また主要な一部(80:20の法則で言う20%の部分)だけが重要で、残りは重要ではないという説明がまれに見られるが、それも本来のパレートの論旨とは無関係である。


現代でよくパレートの法則が用いられる事象


@ビジネスにおいて、売上の8割は全顧客の2割が生み出している。よって売上を伸ばすには顧客全員を対象としたサービスを行うよりも、2割の顧客に的を絞ったサービスを行う方が効率的である。


@商品の売上の8割は、全商品銘柄のうちの2割で生み出している。→ロングテール


@売上の8割は、全従業員のうちの2割で生み出している。


@仕事の成果の8割は、費やした時間全体のうちの2割の時間で生み出している。


@故障の8割は、全部品のうち2割に原因がある。


所得税の8割は、課税対象者の2割が担っている。


@プログラムの処理にかかる時間の80%はコード全体の20%の部分が占める。


@全体の20%が優れた設計ならば実用上80%の状況で優れた能力を発揮する。


・・・こんな感じで、なにやら「胡散臭い」「理論」です。幾つかのHP、ブログをネットサーフィンしてみても、今回の表題のような「読書5%論」には行き着きませんでした。確かに読んだのですが・・・


でも、読書をする際、特にその本全体の20%を抑えればおおむね読書の目的は果たせる、という議論なら、wikiの解説を見ればありそうです。


ただ、私は、安易なビジネス書とか安直な人生訓とかの本なら、20%読書論とかさらには5%読書論は成り立つと思いますが、それ以外の読書の場合、本全体が有機的にできているので、このような圧縮した読書法は邪道だと思うのです。一見、その5%という筋から離れた部分が極めて興味深く、また後々有益である場合も多いと思うのです。


2つほど例を挙げます。1つ目は、大学時代に聞いた論議で、生命現象は、おおむねDNAによって制御されているが、それ以外の細胞組織(原形質):ゴルジ体ミトコンドリアなどの影響は無視できるのか、といったことです。この場合、DNAを「5%読書論」で言う中核論理としています。


もう1つは、私が以前南方熊楠(みなかた・くまくす)の民俗学聞き書き帳を読んでいたとき、ほんの短い一節(本筋にはあまり関係ないと見られますが)に、ある老農の言葉として「陶芸は不吉だ。土を減らすから」とあったこと。この短い記述は私に衝撃を与えました。以後、陶芸という技術の反自然性をしっかり頭の中に留めました。



今日のひと言:以上のような理由で、私は読書5%論には組しません。そのような目的に見合った本(ビジネス書人生訓)は山ほどあるでしょうが、特定の情報を引き出してそれで終わり、という読書は、本を冒涜していると思います。




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今日の料理


@マヨ・ケチャソース・ショウガ風味






弟が発案したサラダ・ドレッシング。マヨネーズとケチャップを半々に混ぜ、摩り下ろしショウガを加えました。今回は、素茹のブロッコリーをつけて食べました。なかなかイケます。

 (2014.12.06)




@ラムと高菜炒めクレイジーソルト





我が家では定番のラムスライス肉料理、今回は九州名物高菜(たかな)と合わせてみました。風味付けはクレイジーソルト。プラスネギ少々。美味しくいただきました。

 (2014.12.11)



@カボチャのクリームスープ







http://hirokonishida.hatenablog.com/entry/2014/11/24/012419


から参照しました。原初のメニューとはいくつか相違点はありますが、美味しく頂きました。団子のタレにしても良いかも。

 (2014.12.12)




ヤマトイモの短冊切りゆかり和え






利根川中流域の太田市とか熊谷市は、土質が合うのか、粘りの強いヤマトイモ(大和芋)の、名産地です。粘りは山芋や長芋より強い。今回は短冊切りにして「ゆかり」(乾燥赤シソと塩を混ぜた調味料)で和えたわけです。

 (2014.12.13)





今日の一首


根切り虫
切られた茎の
再発根


追い詰められた
金時草強し






美味しい金時草の挿し穂を見事に切断されましたが、カッターナイフで切るより、自然の切り口のほうが発根しやすいのではないか、と思いやってみたところ、見事発根しました。また南方の野菜なのにこの寒いなか発根するというのには感激しました。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20141129#1417233485  参照

 (2014.12.14)