群馬県出身のキリスト者・内村鑑三氏は、以下のような詩を書いています:
上州人は無知でまた無才 剛毅木訥で欺かれ易し
唯だ正直を以って万人に接し 至誠神に依りて 勝利を期す
(群馬県人は無知で才能もなく 口下手でだまされやすい
ただ正直な態度で色々な人に接し、誠意を最大限に行い勝利を得ようとする)
この詩は、ある意味群馬県人の気質をよく表していると思います。群馬県の山河は「荒削り」で、その風光を見て育った群馬県人は、腰を据えて書く小説より、短い詩を得意とするようです。(特に、萩原朔太郎・萩原恭二郎の出身地、前橋では広瀬川・利根川などの荒々しい河川の表情が見られます。)県外出身の詩人・歌人である竹久夢二、若山牧水なども群馬にはひかれて往来していますが、なにはともかく群馬県出身の詩人・歌人・俳人は多くいます。
この稿は「群馬の詩人たち」(上毛新聞社:1800円)を参考に書いていますが、紹介されている詩人・俳人について、
村上鬼城については http://d.hatena.ne.jp/iirei/20110205#1296842267
:冬蜂の死にどころなく歩きけり――村上鬼城
萩原朔太郎については http://d.hatena.ne.jp/iirei/20121130#1354269786
山村暮鳥については http://d.hatena.ne.jp/iirei/20130802#1375411032
で書いていますので、興味のある方はそちらもご覧下さい。この稿ではほかの詩人たちを取り上げます。
@平井晩村(1884−1919)
落葉掻くまで大人びし
いたいけなる子に母はなく
父は庄屋へ米搗きに
留守は隣へことづけて
連れもなければ只ひとり
裏の林で日を暮らす
(前橋公園内詩碑)
家族的には恵まれなかった詩人の悲しい呟きが聞こえてくるようです。鍵っ子といったところでしょうか。ただ、この人、「♪草津よいとこ・・・」の作詞者でもあるんですって。
@吉野秀雄(1902−1931)
甘楽野をまさに
襲はむ夕立は
妙義の峰に
しぶきそめたり
(歌集・晴陰集)
なかなか視覚的に見事な短歌だと思います。本人は生前、名声を追わなかったそうです。
@江口きち(1913−1939)
大いなるこの寂けさや天地の
時刻あやまたず夜は明けにけり
(辞世の歌)
一見、穏やかな境地を詠んだものと思われますが、じつは不倫の末選んだ死を暗示する覚悟の詩(歌)だったそうです。武尊山(ほたかさん)を愛し、女啄木とも呼ばれたそうです。
今日のひと言:このブログで取り上げたのは、3人のみ、さらに2人は歌人・・・私こそ短気な群馬県気質を持っているのでは・・・と考えました。
で、やっぱり萩原朔太郎については触れないわけにはいきませんので、ちょっと。この本では、彼について、「日本のボードレール」であるとの賛辞を捧げていますが、私は過大評価だと思います。それまで文語体だった詩を口語体にしたのは、確かに彼の功績ですが、そのような運動は、坪内逍遥とか二葉亭四迷などが小説の世界において「言文一致運動」で既に展開していて、それを詩の世界に移植したということなのだろう、と思います。
それに、「象徴詩」という一大金字塔の基礎を打ち立てたボードレールの世界的な功績に比し、朔太郎の仕事は小さく見えてしまうのです。私の場合、高校の教科書に出てきた「大渡橋」の情けない姿が記憶のコアになっていて、容易に変えられないのです。また、「殺人事件」という詩は、象徴詩を読みなれた観点からは、とてもボードレールに及ばないように見えます。もっとも、両者がデカダン(破滅的)な生活を送ったというのは、共通項ですが。(これはあくまで私の感想・嗜好に過ぎません。朔太郎が好きなnarumasa_2929さん、ごめんね。もっとも、「竹」とか「腐った蛤」などは好きですが。)
フランス象徴詩について:
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20071027
:ボードレールがフランス象徴詩の祖――世界一のフランス象徴詩
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20071022
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今日の料理
@チーズ柚子チキン
弟作。ブロック状に切った鶏もも肉に切れ目を入れ、「とろけるスライスチーズ」と柚子を挟み込み、片栗粉をまぶしてオリーブオイルで炒めます。柚子の香りと苦さが相まって、まずまず。
(2014.11.14)
@牛肩ロース薄切りのしゃぶしゃぶ風
牛肉の薄切りを購入した場合は、お湯に潜らせて脂身をカットし、ポン酢で食することが多いです。あっさりしています。
(2014.11.16)
@オカノリの柚子トッピング
オカノリはこれまでも取りあげていますが、今回は昆布だしを掛け、柚子の皮をトッピングしました。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20121120#1353406088
(2014.11.17)
今日の二句
あら尊と(とうと)
朝日に映える
赤城山
赤城山は、私の心の山(深田久弥)、朝日に照らされる姿が美しかったです。ただ、犬の散歩のとき目にした様子がまさしく尊かったのですが、散歩のあと、10分くらいで写真を撮りに行った際は、すでに雲に覆われていました。シャッター・チャンスは撮りたいその時がその時なのですね。
(2014.11.16)
漆黒の
鴉啄ばむ
神の火か
鴉(カラス)が、落ちていた柿の赤い実をついばむのを見て。「神の火:ディオスピュロス・カキ」とは、ラテン語の学名で、柿のことを指します。
(2014.11.17)
今日の「怒」
安倍晋三がまさかの衆議院解散というカードを切りました。アベノミクスに破綻が見えつつある今になって、実に姑息な行為だと思います。大体、消費税増税を2015年10月には行わず、1年半の猶予を持ち2017年春にすると言っていますが、これは有権者への目くらましです。中国の諺・「朝三暮四」のように、見掛けの優遇を謳っているにすぎません。主人が猿に餌を朝3個、夕4個あげると言うと、猿たちが怒ったので、では朝4個、夕3個にするというと猿たちは喜んだというのです。見かけの増量にすぎず、猿たちは丸め込まれてしまったのです。・・・ここで「猿」とは日本国民のことです。直近の増税は見送ったとはいえ、「上げること」に変わりはないのです。
(2014.11.19)