虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト:色々な事物を取り上げます。

受験英語のバイブル・英単語記憶術と英文解釈教室

 いずれも私が、ん数十年前楽しみながら学習した本ですが、7,8年前私が高校生の家庭教師をしていた時も、この2冊は入手可能でした。それだけの定評があったということですね。


 「英単語記憶術」(光文社:カッパ・ブックス)は故・岩田一男さん作。煩瑣な英単語を分解し、接頭辞・接尾辞などの要素で、英単語を再構成して、語源から読み解くという手法を呈示した本です。岩田さんは、一橋大学教授でした。


 昔、森鴎外が(医学部なので)ドイツ語を勉強していましたが、学友が苦労して単語を覚えていたのに対し、彼は接頭辞接尾辞から単語を暗記し、余った時間は落語の寄席に行って、おもいっきり楽しんでいたという逸話があります。その姿勢に似ているのが、この「英単語記憶術」なのです。一例を挙げましょう。


 「白」で括られる英単語。alb、alp、candなどは、白いという意味を持ちます。album:アルバム。余白が白いから。albumin:蛋白質・卵の白身から。Alps:白い雪をかぶったアルプス山脈。candle:白いろうそく。candidate:候補者(ローマで官職志願者が白い上着で街を歩いたから。)


まあ、こんな感じで、単に英単語のみならず、英語の背後にあるヨーロッパの文化について示唆もしてくれる優れものの本です。「試験に出る英単語」とかより、はるかに優れた受験参考書かと思います。


 次に「英文解釈教室」(研究社)。著者は故・伊藤和夫さん。かれは駿台高等予備校の専任講師でした。英語という言語は、ほかのヨーロッパ言語と比べると一見簡単に見えます。たとえば名詞にドイツ語のような男性名詞・女性名詞・中性名詞などの区別はありませんし、格変化も北欧系の言語から見るとほんの僅かです。でも、ルールの乏しい英語が簡単かというと、決してそうではありません。むしろ、他の言語がこれらのルールを保持しているので、読解の手がかりが多くあります。英語は無法地帯のようなもので、読解は難しいのです。


 では、英文解釈教室では、どういう態度を英文に対して取っているかと言うと、「形を重視する」ということです。たとえば

@1:The house stands・・・

@2:In the house stands・・・

の2つの文があるとき、その違いは文頭に「in」が来ることにあります。もちろん「・・・の中に」という意味を持つのですが、伊藤氏は、意味とは別に、文章構成上の留意点を挙げています。それは、「「in」によって導かれる語句のひとまとまりは、主語には成りえない」という事実です。文章の構成上、「in」を見たら、主語にはなりえないという機能的な読み方をするのが伊藤流・英文解釈術です。


 英文を解釈する際、もっとも重要なのは、主語(S)と動詞(V)をはっきりさせるのが基本だということです。それに際し、まとわりつく修飾語(M)を外していき、S,Vを炙りだすというのが重要なのですね。



今日のひと言:これらの参考書を勉強した結果、受験界のナンバーワン予備校の駿台予備校の模試で、私は英語の成績が理系で1位、全体でも3位の成績を収めたことがあります。(←ちょっと自慢。)


さて、今のようなヒアリング重視の大学入試試験で今回挙げた参考書たちが有効なのか、私にはよく解りませんが、教養書としても十分読まれる価値があると思います。


英単語記憶術―語源による必須6,000語の征服 (カッパ・ブックス)

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英文解釈教室 改訂版

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ビジュアル英文解釈 (Part1) (駿台レクチャーシリーズ)

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